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教えて大西さん、シビックフォース代表理事を辞任した理由④ピースウィンズ向け融資に利益相反疑い~「複数回否決繰り返す」と元理事・神保慶大教授証言

1、ピースウィンズ、2017年度に債務超過

 認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が2018年1月期(2017年度)末、債務超過に陥っていたことを知る人は多くありません。ホームページ等で会計報告は公表されていますが、株式の投資家と違ってNPOの活動に寄付をする人は決算書を読んだりすることは稀なようです。

 PWJは2019年1月期(2018年度)末の決算で、公益社団法人Civic Force(シビックフォース、東京都渋谷区、根木佳織代表理事)の資金、3億円を巧妙な操作をして借り入れていました。この2つの法人が一般向けに公開した事業報告を読んでもその事実は隠されているのです。

 その資金操作の理由を探るうえで、2018年1月期が債務超過だったという事実は非常に重要です。そこで、当時、シビックフォースの非常勤理事の1人だった慶応義塾大学の神保謙教授の説明をご紹介する前に当時のPWJの財務状況を整理しておきます。

2、大西健丞氏連帯保証7億円

(1)2018年1月期の経常増減額は1億3696万円の赤字、助成金返還等の経常外費用1億7145万円等の支払い要因も加わり、当期正味財産増減額は2億8017万円の赤字でした(前期繰越正味財産から差し引いて、次期繰越正味財産額は4991万円の赤字でした。つまり債務超過です)

 (2)財務諸表注記から「事業別経常増減額」をみると、最大の赤字は地域創生部門(農業、観光、医療、福祉等)で2億4034万円の赤字、逆に黒字は犬保護(ピースワンコ)部門で3億220万円の黒字でした。

 (3)期末借入残高は7億6380万円(期首3億8710万円)へと倍増しました。「役員及びその近親者との取引の内容」の欄をみると、その全額について大西健丞代表理事が連帯保証していました。

 (4)借入先として、金融機関以外に、投資家村上世彰氏関連のC&Iホールディングス3億3千万円、ふるさと納税仲介サイト運営会社のトラストバンク3千万円、トラストバンク創業者須永珠代氏1千万円という顔ぶれも登場しました。

 そして、翌年度がどうなったか、一般に公表されているPWJの会計報告から紹介します。

 (1)前期損益修正益4億839万円を計上しました。2015年に独芸術家ゲルハルト。リヒター氏から寄贈された美術作品を4億5千万円と評価しました。これにより債務超過を一掃し、次期繰越正味財産額は3億3486万円となりました。

 (2)事業別経常増減額は相変わらず地域創生部門は1億4557万円の赤字が続き、保護犬部門は1億4465万円の黒字でした。

 (3)期末借入残高は11億6952万円(期首7億6380万円)に増えました。「役員及びその近親者との取引の内容」の欄から、大西健丞代表理事による連帯保証の記載が消えました。

 (4)借入先の一覧から金融機関以外の債権者の名称が消えて「その他」として表記され、内訳が不明になりました。金融機関からの融資額は減っています。

 以上が2018年1月期、2019年1月期のPWJ決算で注目しておくべき情報です。

3、リヒター作品鑑定で4億円修正益

 債務超過だったという事実をみれば、PWJの財務状況が非常に悪く、資金繰りがピンチであることはお分かりいただけるでしょう。

 PWJには、安定した財源を生み出す不動産等の優良資産があるわけではありません。収入は、ほぼ寄付金と国や国際機関の人道援助関連の助成金ですから、債務超過から立ち直るのは容易なことではありません。

 2018年1月期、PWJが債務超過に陥った際、ふるさと納税の寄付募集に利用している「ふるさとチョイス」の運営会社や、投資家村上世彰氏の関係企業からお金を借りたこと月刊誌FACTA(2018年12月号「火の車」大西NGOに村上マネー)に報道されました。

 PWJを救ったのは、愛媛県上島町の無人島・豊島(とよしま)で一般にも季節を限定して公開している現代アート作家、リヒターのガラス作品でした。2015年にPWJに寄贈された作品です。鑑定により作品から突如生まれた利益がなければ、PWJは2期連続債務超過となり、NPOとしての活動が続けられなくなる事態に直面していたかもしれません。(冒頭の写真参照)

 2018年1月期の債務超過が確定した後、金融機関は新規融資に慎重になったもようで、同年2月から2019年1月末までの2018年度(2019年1月期)中は残高を減らしています。その穴を埋めたのはいったい誰なのかを知りたくても、PWJは金融機関以外の借入先リストの公表を止めてしまったので、一般向け事業報告を読んでも突き止めることはできません。

4、公益法人の資金3億円を貸し付けに

 寄付を集めて社会貢献活動をするNPOが、「ふるさとチョイス」運営会社のように利害関係のある会社、投資家・村上世彰が関係する会社などから借金していることが知られると不都合だから「その他」として隠したのだと筆者は思っていました。

 しかし、実はそれだけではなかったのです。

 PWJは2019年1月期末時点で、大西健丞が代表理事を兼務していた公益社団法事シビックフォースからも3億円を借りていました。この事実は、認定NPOとして税制上の優遇措置を受けているPWJの所轄官庁である広島県に対する情報公開請求で初めて明らかになったものです。(写真参照)

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 すでに公になってしまっている村上世彰氏や「ふるさとチョイス」の須永珠代氏らからの借り入れをいまさら隠しても意味はほとんどありません。金融機関以外の借入先を「その他」に一括して内訳を非公表にしたのは、この公益社団法人からの借り入れを隠すためだったのではないでしょうか?

 債務超過の2017年度に続く2018年度、つまりPWJの事業年度で2018年2月から2019年1月の間は、資金繰りが厳しさを増した時期です。収入面で稼ぎ柱である保護犬(ピースワンコ)事業で狂犬病予防法違反が発覚し、広島県警の家宅捜索を受け、支援者が遠ざかっていったからです。

 PWJは2018年1月19日から2019年3月10日までピースワンコ事業のため6億円を目標に「ふるさと納税」の寄付を募りましたが、実績は4億966万円(達成率68%)でした。

 リヒターの美術品に4億円の価値があろうと、無人島での観光・芸術事業のために展示している芸術作品を売って換金するのは困難です。そこでその美術品を担保にしたのかどうか、そこはわかりませんが、お金を借りて様々な経費の支払いに充てなければなりません。

 債務超過転落に加えて、狂犬病予防法違反での県警捜査もあって、銀行は追加融資には非常に慎重になったものと思われます。そしてまた、2018年1月期に助けてくれた投資家・村上世彰氏や「ふるさとチョイス」須永珠代氏からも、その年は希望通りの額を貸してもらえなかったのかもしれません。PWJは資金繰りのため、大西健丞氏が代表理事を兼務しているシビックフォースのお金を借りることにしたのです。

 つまり、借り手は大西健丞氏、貸し手も大西健丞氏という利害相反による弊害が予想される危険な資金取引を始めてしまったのです。

 おカネを貸す側のシビックフォースは公益社団法人です。いくら代表者が同じだからといって、足りないお金を用立ててあげるような安易な資金取引は慎むべきです。まして、相手先が債務超過からの再建途上であったり、法令違反の疑いで警察から捜査を受けていたりする場合、貸し倒れのリスクは通常よりも高いとみておかなければなりません。

5、同一代表者による貸し借り是正求める

 シビックフォース理事会は、そのようなリスクをどう考えていたのでしょう?シビックフォースの新旧代表理事や事務局、つまり大西健丞氏や根木佳織氏に質問を送っても回答はありません。今年9月に退任するまでPWJの非常勤理事だった神保謙慶大教授からも事務局に回答を促していただきましたが、それでも根木氏らは沈黙したままです。

 そこで私は再度、神保教授に状況を伝え、融資決定に関わったシビックフォース元理事の立場から回答していただけるようお願いしました。

 質問は以下の3点です。

1、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)に3億円を貸し付けることに、どんな公益目的があったのですか?なぜ法人会計にその利息収入が計上されているのですか。ちなみに利息収入は公益部門会計ではなく法人部門の会計に計上しています)

 2、シビックフォースの期末のみ融資を回収したのは貸し付けを隠蔽することが目的だったのではありませんか?期末に貸し出しをゼロにしたのはなぜですか ?

 3、PWJ向け融資は相手方代表者もしくはその代理人から連帯保証をとるなり、担保を求めるなり、貸し倒れ予防策を講じましたか?大西健丞氏による利益相反行為に関して理事会は問題点を議論しましたか。


 神保教授は次のように説明してくれました。

 「認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンは、熊本地震、西日本豪雨災害、北海道胆振東部地震等の災害時に、シビックフォース連携して緊急支援を実施してきたパートナー団体です。2018年末以降、同団体に対する貸付金に関する議題が審議されたことは事実です」

 2019年1月末の決算期が迫ってきた時期に議題に上がるということは、やはりPWJの資金繰り支援ということが第一の目的だったのでしょう。理事会ではどんな議論がなされたのでしょうか。議事録が手元になるので正確性を期すことは難しいという前提のもとですが、神保氏の回答は続きます。

「まず第一に、シビックフォースとピースウインズ・ジャパンはパートナー団体であるが、当理事会はシビックフォースの運営に責任を負います。シビックフォースの原資を保全し当団体の活動に役立てることは理事会の責務であり、慎重な判断を必要とするということでした」

 「第二に、貸主と借主の代表理事が同一であることに対し、当理事会は強い問題意識を提起し、是正を求めました。シビックフォースの代表理事はその後退任することとなり、理事会としては契約上の利益相反を生じさせないことに尽力いたしました」

 「第三に、シビックフォースの財務リスクが生じないようにするために、明確な返済計画の明示と担保の設定を求めました」

 「以上を明確化するために、当理事会では貸付金に関する議題は理事の賛成が得られず、複数回の否決を繰り返すことになりました。これらの問題提起と重ねての審議を経て、以上の条件を満たした結果、その後の理事会で議決されたと理解しております」

 理事会では、利益相反と貸し倒れリスクの回避について対策が万全ではないとして、複数回否決されたようです。しかし、結果的に2019年1月期末にシビックフォースからPWJに対して3億円の融資は実行されています。

6、大西氏の連帯保証が消えたナゾ

 神保氏は「貸主と借主の代表理事が同一」という点の是正を求めたとしていますが、大西健丞氏がシビックフォース代表理事を退任したのは2020年8月です。少なくとも1年半以上、その状態を是正できなかったことになります。

 そして、「明確な返済計画の明示と担保の設定」という条件が満たされたとするなら、それはいったい、いつ、どのような内容になったのでしょう?大西健丞氏によるPWJ借入金の連帯保証(2018年1月期末7億6380万円)が2019年1月期から消えていることとあわせて、より詳しい説明を求めたい点です。

 大西健丞氏の連帯保証はどうして会計報告から消えてしまったのでしょう?金融機関以外の借入先を「その他」で隠したように、情報開示の範囲を狭めただけなのでしょうか?

 それともシビックフォースからの借り入れを機に、個人による連帯保証をなしにしたり、リヒター作品を担保にして解消したりしたのでしょうか?

 シビックフォースの代表理事と事務局長を兼務している根木佳織氏からは問い合わせに対する回答はありません。

 大西健丞氏や根木佳織氏のかたくななまでに説明を忌避する態度は、一般から集めた浄財をリスクにさらすことなく大切に使っていくべき公益法人のあり方にふさわしくないと私は思います。

 内閣府には、公益目的の事業に使うべき資金をPWJの資金繰りに流用して、リスクにさらしていないか、不可解な資金取引について、シビックフォースから報告徴収して欲しいと思います。

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