気仙沼に放置された3台のトレーラーハウス~ずさんな公益社団法人Civic Forceの財産管理

東日本震災時に20台輸入

 東日本大震災から10年目。もう当時の被災地の惨状をみて全国から集まった寄付金のありがたみも忘れ去られようとしているのでしょうか。宮城県気仙沼市に提携先の復興支援団体が所有するトレーラーハウスが3台、放置されたままであることがわかりました。

 大事に使えば新型コロナ対策や九州などの豪雨被害でも活躍できるというのにもったいない。残念なことです。
 
 気仙沼市役所によると、トレーラーは公益社団法人Civic Force(シビックフォース、東京都渋谷区、大西健丞理事長)の所有です。この団体のホームページ情報によると、2011年6月にアメリカから輸入した20台を気仙沼市と南三陸町に持ち込んでいます。

 Civic Forceと気仙沼市は災害時支援協力協定を2012年に締結していて、「緊急物資の提供や避難所における被災者支援、避難所の環境整備などの緊急対応で協力するほか、復旧・復興活動や平常時から備蓄物資の準備、派遣人員計画の準備、防災訓練の実施など、いざというときに協力しあえる体制づくりを進めていく」ということです。

「忙しい」と調査渋る危機管理課

 気仙沼市本吉町の海岸近くの空き地に、「Civic Forceが寄付金で購入したトレーラーハウスが放置されて、いつの間にか、サーファーらのたまり場になっているらしい」という情報が筆者に寄せられたのは6月のことでした。

 7月はじめ、Civic Forceのパートナー自治体である気仙沼市に知らせたところ、市の危機管理課の担当者は「コロナ対応で忙しいから調べる必要があるとは思いません」とけんもほろろの対応でした。

 しかし、このトレーラーハウスが新型コロナ対策で引っ張りだこで、まさにCivic ForceやCivic Forceと連携して活動する団体がトレーラーハウスを医療機関に貸与しているのを市役所の職員はご存じないようです。危機管理課という名が泣きます。

Civic Forceに撤去求める

 7月5日に気仙沼市役所やCivic Forceにあらためて問い合わせを送ったところ、気仙沼市秘書広報課からは9日付で回答がありました。

 市が調査をしたところ、本吉町の海岸近くに1台、そしてなんと赤岩地区のヘリポートとしてCivic Forceと関係の深いヘリコプター運航会社に無償で貸していた市有地にも2台放置されていたそうです。

 広報の説明では、市と公益社団法人Civic Force、NPO法人オールラウンドヘリコプターは2013年6月にヘリコプター活用に関する協定を締結し、市有地を行政財産の目的外に使用する許可を1年ごとに更新していました。

 市は協議のうえ2020年3月25日に解約しました。ヘリポートとしての目的外利用許可の期限も切れています。

 災害対応や救急医療目的のヘリコプター事業への需要は乏しく、2015年には事業を休止しているようです。トレーラーハウスが放置された期間も相当長かったのではないでしょうか。

 現場には、ヘリコプター発着場プレート(約100平方メートル)、格納庫、トレーラーハウス2台が残されたままとなっていて、市役所はその撤去予定をCivic Forceなどに問い合わせています。17日昼時点では、まだCivic Force側からは返答がないようです。

 現地調査に参加した人の証言によると、ドアが開いていたトレーラーハウスの中に入ったところ、腐食して床が抜けそうな箇所もあったそうです。震災復旧支援のために寄せられた寄付金でCivic Forceが購入した財産なのにずいぶん雑な扱いです。

元職員が事業用に借用

 もう1台は本吉地区の海岸に近い民間所有の空き地に長い間おかれたままになっています。私が取材した限りでは、このトレーラーはCivic ForceやCivic Forceと連携するNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ,広島県神石高原町、大西健丞代表理事)で働いていた元スタッフがデザイン会社の事務所、倉庫等として利用するため個人的に借りたものでした。

 事業を中止して県外に転居したため、利用者不在の状態になっていました。市が関係者に問い合わせたところ、8月にはCivic Force関係者が撤去するとの説明を受けたということです。

 サーファーのたまり場になっていたかどうかは市の回答を読む限りはわかりませんが、地元の関係者によると、トレーラーハウスの利用を希望する漁業関係者もいるということです。

 このほか、市の所有地にはトレーラーハウスが1台、コンテナが1台置かれていますが、いずれも書類、イベント資材などの保管庫として活用はされているそうです。それにしても買えば、1台300万円はするというトレーラーハウス。もう少し、大事に管理して欲しいものです。

 気仙沼は震災・津波被害から10年目を迎えていますが、まだ復旧途上の現場があちらこちらにあり、「トレーラーハウスが数台転がっていても、関係者以外誰も気が付かない」(水産会社社長)という声もあります。寄付金が殺到した時期はとうに過ぎて、集金目当ての被災地支援活動は姿を消していて、NPOや支援団体が現地の残した資材、機材はトレーラーハウスだけではないそうです。

財産は実質PWJが管理?

 ところで、このCivic Forceという団体、内閣府が所轄庁となる公益社団法人ですが、経常支出は人件費や役員報酬のほかは業務委託費が多く占め、ふだんは大西健丞代表理事や女性事務局長も本部事務所にいないことが多いようです。

 4億円ほど残っている財産を取り崩している状態ですが、そのわずかばかりの財産も大半は、大西健丞氏が代表理事を務めているNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)に貸し付けています。

Civic Force資産をPWJが借用

 形式上は大西健丞氏はCivic Forceの常勤(週3日以上勤務)の役員なのですが、実質は自宅のある広島県神石高原町のPWJが主な職場であると思われます。事業内容も成り立ちもことなるのに、Civic Forceの資産を実質PWJの管理下に置こうとしているのかもしれません。

 PWJの決算期末には3億円(2019年1月期)、2億5千万円(2020年1月期)の残高が確認できますが、Civic Force決算期(2019年8月期)にはいったん貸金を回収して銀行預金に戻すという奇妙な貸し出しです。

 地域創生事業ばかりか、緊急援助事業も赤字になって資金繰りが厳しいPWJの財布であるかのようにCivic Forceの財産が利用されるのは利益相反を犯す恐れもあり危険で、避けるべき取引だと思います。

 そんな取引をする理由について、Civic ForceもPWJも一切の説明を拒んでいます。公益法人やNPOを名乗るなら資金の使い方についてもっと説明責任を果たして欲しいですね。

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