ピースウィンズ・ジャパン「現代アートセンター計画」への疑念広がる~愛媛県上島町①資金不足で着工延期、議員の現地調査にも難色示す
1、資金の5割を確保?
「着工できていない理由を教えてください」
愛媛県上島町役場の職員が電話で問い質しました。2020年12月4日のことです。
相手は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)の幹部です。
PWJが上島町の無人島、豊島(とよしま)の旧町有地を買い取って建設を計画中の現代アートセンターの工事の開始時期についてのやり取りです。
「資金調達ができていません」
上島町役場が保存している電話応答メモには、PWJの幹部がそのように説明したと記録されています。
「現状で予定の何割が調達できているのですか?」
町職員は続けて質問します。
「約5割です」
PWJが今年2月、建設予定地の土地払い下げを受けるために町役場に提出した要望書に添付された計画書では、投資額はおよそ2億円とされ、民間からの寄付でその資金を集めると書かれていました。町職員は金額を聞き出したかったようですが、「そんな雰囲気ではなかった」という感想を書き残しています。PWJにとって触れられたくない話題なので、幹部は不機嫌になったのでしょうか。
2、春ごろに着工?
2人のやり取りはさらに続きます。
町職員「8月末までに1期工事の解体+地階改修工事の詳細設計作成とありますが、その進捗状況は?」
PWJ幹部「出来ています」
町職員「10月末で2期工事の本体新築工事の基本設計作成とありますが、その進捗状況は?」
PWJ幹部「出来ています」
ひとつずつ確認しなければならない関係というのも、双方ともにつらいだろうと思います。しかし、それがピースウィンズ・ジャパンの実情なのでしょう。
町職員「12月から解体工事を実施する予定となっています。いつ頃から実施する見込みですか?」
PWJ幹部「(2021年)3月か4月頃を見込んでいます」
その日はいったん、そこでやり取りは終わりましたが、12月8日に町役場は再度、PWJに念押しのための電話を入れました。
3、開始時期、約束できず
町職員「着工時期は3月前後の見込みということでした。もし、3月になっても現状と変わりがないと、議会にも説明がつきません。あらためて着工がいつになるか明確な回答をお願いします」
再確認を求められると、PWJの対応はガラリ変わっていきました。
PWJ幹部「現状では明確な回答、お約束はできない状態です。資金調達において確実な見通しがありません」
町職員「議会説明においても一部指摘を受けています。議会から疑義等を受けることを懸念しています」
PWJ幹部「開始時期については、原状としてお約束はできません」
実際、2020年12月15日開催の町議会本会議一般質問で事業計画を疑問視する声が出ました。進捗状況を確認しようと、議員たちが無人島の豊島(とよしま)の建設予定地を12月下旬に訪問する計画を立てたところ、PWJが難色を示したため、訪問は延期となっています。
5、着工まで視察延期を
「もうすぐ着工するからその時に来てほしい、という説明だった」(訪問に参加を予定していた町議会議員)ということです。いったん町有地を売ってしまうと、現地調査も自由にできなくなってしまうことに不安を覚えた議員さんもいるようです。
豊島の現代美術センター建設を巡っては、ほかにも問題があります。事業パートナーとして計画書に明記されている北九州市のCCA(現代美術センター)北九州との関係です。年間数千万円規模で運営資金を援助してきた北九州市役所はやCCA北九州の運営責任者は、CCA北九州が事業パートナーになっていることを知らなかったのです。(続)
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