そこが知りたい!ピースウィンズ・ジャパン「内輪の人々」とのお金の流れ⑧財務諸表注記から忽然と消えたPWJ大西健丞氏の「借入金連帯保証」
国際援助活動から保護犬事業、地域創生事業など次々と手を広げてしまったNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)は、新規事業が必ずしも順調ではないこともあって借入金が膨張を続けています。
2019年1月期末時点の借入金残高は11億6952万円。前の期(7億6380万円)より5割も増えています。
金融機関などお金を法人に貸す人たちは、債務返済を確実にするため担保も取りますが、代表者の連帯保証を求めるのが通例です。NPOであるPWJの場合も例外ではありませんでした。少なくとも2017年度までは。
PWJが毎年公表している事業報告書の財務諸表注記のうち「役員及びその近親者との取引の内容」欄をみると、2017年度決算(2018年1月期末)時点で、PWJの当時の借入金7億6380万円は全額、代表理事大西健丞氏が連帯保証していることがわかります。
連帯保証対象債務は、広島銀行、中国銀行、日本政策投資銀行といった金融機関からの借入金だけではありません。
大西氏にとってパトロンのような存在である投資家・村上世彰氏のC&Iホールディングス、ふるさと納税サイトのふるさとチョイスを運営する会社トラストバンク、そしてトラストバンク社長である須永珠代氏からのものを含め借入金すべてが大西氏の連帯保証の対象になっていました。
ところが、2018年度決算(2019年1月期)の財務諸表注記では、この連帯保証の記載が見当たりません。
広島銀行や中国銀行、日本政策投資銀行も残高に変動はありますが、相変わらず債権者として名前が残っています。
第三者にとっても重要な情報ですから、もし、連帯保証情報を意図的に記載から除外したとすれば問題だと思います。それとも単純なミスによる記載漏れでしょうか?あるいは、大西氏に代わる有力な保証人が登場したか、換金性を含めて申し分のない担保が見つかったのでしょうか?
2018年度分から大西氏による連帯保証の記載が消えたことについて、PWJに問い合わせましたが、回答はありません。
大西氏が資産家であれば別ですが、PWJの役員としての給料は広島県の開示資料から推測しても1千数百万円ですから7億円、11億円という負債の肩代わりをするのは実質的には無理です。
もし、債権者がそのように割り切って、連帯保証を免除したのなら、昨今の金融取引慣行の見直しの方向にも合致するので、評価すべきことです。しかし、これからの融資に適用するならまだしも、金融機関がすでに実行済みの融資への連帯保証を外すことはなかなか考えにくいことです。
2019年1月期の決算で新しく資産として計上されたものとしては、PWJがドイツ人現代アーティストのゲルハルト・リヒターから寄贈を受けた作品(「14枚のガラス」)があります。
リヒター作品は4億5千万円という鑑定評価を受け、PWJはバランスシート上、債務超過から脱出できました。
善意で寄贈された作品が銀行や企業、あるいは個人からの借り入れの担保になっているとは考えたくありません。しかし、仮にそうなっていたとしても、同年度中の借入金の増加分をカバーする程度の金額です。全体の信用力を大きく高めるほどのものではありません。
連帯保証の記載が消えた謎はなかなか解けません。
そもそも、銀行や投資家村上世彰氏ら債権者たちは、PWJへの貸付金をどのようにして確実に回収しようと考えているのでしょうか。
この点がとても心配なのは、一般公益社団法人Civic Force(東京都渋谷区、大西健丞代表理事)からさえもPWJは3億円ものお金を借りて決算をやり繰りしていることを知ったからです。
Civic側の決算資料(2019年8月期)にはPWJへの貸付をうかがわせるような項目はありません。PWJの2019年1月期の決算を乗り切るためだけに一時的にお金を流用したのでしょうか?
最近、大西氏はPWJのピースワンコ事業への寄付を募るメッセージを発出したそうです。
「事業資金が減り、私は個人としての返済の保証をしながら、常識では非営利団体が行わないような借り入れもして、必死に頑張ってきました」
そのような一文もあります。
しかし、大西氏やPWJが発するメッセージはあいまいです。真実から微妙にずれたり、実態をぼかして誤認させたりする恐れがある文章もあります。
大西氏個人としての返済の保証は続いているのでしょうか?ならばなぜPWJ決算書類からその事実の記載を消したのでしょう。
どうして借入金が11億円にも膨らんでしまったのでしょうか?
ピースワンコ部門は大幅な黒字超過なのに、なぜ、お金を借りるのでしょうか?
そして、なぜ現金預金が8億1318万円(2019年1月期)もありながら、それを取り崩さないのでしょうか?
姉妹団体である瀬戸内アートプラットフォームやアジアパシフィックアライアンス・ジャパンは債務超過状態で、PWJは貸したお金をいったいどうやって回収するつもりなのでしょうか?
PWJと大西健丞氏は「犬の殺処分ゼロ」を訴求力の高い商品として扱っています。
そろそろ涙や同情に訴えることをいったん中止してはいかがでしょう。
大西さん、もう頑張らなくていいですよ。PWJが行き詰まったら神石高原町はどうなってしまうでしょうか?住民やワンコたちは、金銭的な責任を負うあなた以上に大きなリスクにさらされているのです。
お金を集める前に、もう少し真摯に説明責任を果たす必要があると思います。