「不公平配分は5年累計1200トン」はえ縄漁業者代表が是正求める~太平洋クロマグロの漁獲枠の配分に監視が必要⑪
26日午後、水産政策審議会資源管理分科会くろまぐろ部会が開催され、漁業者らが水産庁による配分のあり方に厳しい注文を付けました。
口火を切ったのは全国近海かつお・まぐろ漁業協会理事(気仙沼漁協組合長)の斎藤徹夫委員です。
2018年に国が太平洋クロマグロの管理を漁獲可能量(TAC)に移行した際、近海はえ縄漁船など「かつお・まぐろ漁業」は中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の実績基準(2002-04年平均漁獲量)で配分すれば、年間754トンの配分を受けてしかるべきところわずか167トンの配分にとどめられていたことに言及して、「不公平な配分は5年間続いて1200トンほどの漁獲可能量が奪われたと、とらえざるを得ない」と述べ、2025年からの増枠でこうした不公平を解消するよう求めました。
また、新たな配分案に採用を検討している基礎比率についても「不公平がまだ是正されていない2021年の漁獲可能量が含まれていて、これでは到底受け入れられない」と見直しを迫りました。配分の考え方はいったん決まると何年も踏襲され、不合理な点を残せば被害甚大だからです。
静岡県定置漁業協会会長の日吉直人特別委員も「10年前に管理が始まったとき、水産庁からは(獲れすぎたものは)放流してくれ、(マグロが)死んでもいいから逃がせと言われて、すべての定置網が協力してきた。それにも関わらずこうした放流の実績が配分の考え方で考慮されていない」など述べて、水産庁が用意した「くろまぐろ漁獲可能量の配分の考え方について」の案を批判しました。
日吉委員は1990年代に太平洋西部でまき網漁業がクロマグロ小型魚の漁獲量を急増させたことが資源悪化の原因だとするWCPFCでの議論を踏まえ、「2015年に資源管理が始まったまだ10年ちょっとしかたっていない。そんな段階で少しだけ資源が回復したからといって、どうして漁獲インパクト(資源への影響)が大きかった漁業に果実を提供するのか?」と大中型まき網漁業への増枠配分を抑えるよう求めました。
これに対し、水産庁の反応は非常に慎重なものでした。くろまぐろ部会の事務局を務める赤塚佑史朗資源管理推進室長は「増枠は努力した関係者すべて分かち合うことが大事だ」などと述べ、大中型まき網漁業への増枠を考えていることを示唆しました。
しかし、日吉氏らによる大中型まき網漁業批判は止まりません。2015年の規制開始当初に水産庁が決めたクロマグロ小型魚の配分、基準値8015トンから4007トンへと半減させる日本の小型魚の漁獲枠をまき網に2000トン配分し、その他の漁業はまとめて2007トンしか配分されなかった問題についても「まったく根拠のない配分で、当時から受け入れがたいものだった。納得できないことがずっと続いている」と過去の配分に関する疑問点にも言及しました。
くろまぐろ部会は9月24日から合計3回開催し、来年から小型魚で10%、大型魚で50%増枠される太平洋クロマグロの漁獲量をどのように配分するかを話し合ってきました。部会での議論は26日が最後で、12月11日に水産政策審議会資源管理分科会に具体的な数量配分案を示す予定です。