土谷和之さんの死を悼む

1、二足の草鞋

 若い友人、土谷和之さんが25日未明、亡くなりました。43歳でした。人生の折り返し点に来たばかりなのに、病魔に襲われ、急逝してしまったのです。早すぎる死が残念でなりません。

 三菱総研で交通システムなど社会インフラの制度設計を考える研究員として活躍していました。一方で、カンボジアでの社会的投資を行う合同会社ARUNの立ち上げやNPOの運営にかかわり、これからもNPOの成長を引っ張っていく論客、リーダーとして期待されていました。

 26日の通夜、27日の告別式にはNPOの関係者も全国各地から集まり、彼の死を悼みました。コロナ感染も警戒しながらのお別れですが、会社の同僚らを含めて弔問者の数は2日間で延べ300人を超えていたのではないでしょうか。人徳というほかありません。

 私が土谷さんに初めて会ったのは、国内でも新型コロナ感染拡大が心配になり始めた頃です。場所は、内幸町にある公益社団法人日本記者クラブのラウンジでした。ずいぶん長い時間、NPOについて、ピースワンコについて、意見を交わしました。もの静かで頭脳明晰、芯の強い青年だと思いました。

 2度目にあったのは、残念なことに「ステージ4」のすい臓がんが発見された直後でした。事実を淡々と受け止め、セカンド・オピニオンを聞く準備を進めている彼の冷静さ、精神力の強さに驚きました。

 友人と呼ぶにはあまりに短い付き合いです。しかし、ずいぶん以前から知り合いだったような気持ちでした。

2、NPOの変質懸念

 2018年11月のある日、彼はFacebookにこんなことを「雑感」として書いています。狂犬病予防法違反、動物愛護管理法違反の疑いが次々浮かんできたピースワンコの情報公開に対する消極姿勢を憂うような投稿を続けていたころです。

 「2003年ごろ、僕が非営利セクターの門を叩いたころは、問題に対処療法を与えるのではなく、問題を生み出す社会経済構造を変えることこそが重要だと教わった。あれから15年。非営利セクターの活動は広がったのかもしれない。ただ、その活動が社会経済構造を良い方向に変えることを意図したものか、それとも逆に社会経済構造に依存し、そこから生まれる問題に対処療法を与え続けることでしか存続できないものなのか、『目利き』がより重要になったと思う」

 学生時代からCSRやNPOに興味を持って、活動をしてきた彼は、ピースワンコとその運営母体であるNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)の活動をみて、NPOが大きな壁にぶつかっていることを感じとっていたのではないでしょうか?

 「ふるさと納税」の寄付をあてにして、あやふやな計画のまま次々と事業を立ち上げて、途中で頓挫させたり、法令違反に問われたりするPWJの実情を調べてきた私には、その気持ちが痛いほど理解できました。

3、「怒りに震える」

 「毎回、楽しみに読んでいます」

 私が去年の夏からnoteに書き続けているピースワンコの運営団体PWJに関する一連の分析記事を愛読してくれていました。

 記事の多くはFacebookにも転載していますが、古くからの友人たちは「最近はおかしなNPOの話題ばかりだな」とあきれ、スルーします。「ピースワンコを批判すると、名誉棄損で訴えられるから気をつけろ」と忠告してくれる人もいました。

 ピースワンコを分析するときも情報公開請求などを通じて、客観的なデータや行政内部でのやり取りを確認しながら書くように努力してきました。確認できないウワサ話はいくら知っていても無価値だからです。

 そのためか、記事は地味で退屈な内容になっていると自分でも思います。興味のない人がスルーしていくのは当然です。

 しかし、土谷さんはその退屈な私の記事を共感しながら読んでくれる数少ない読者であり、かつては自身でピースワンコを徹底分析し、運営団体のPWJから名誉棄損で訴えられた当人でもあったのです。

 PWJ/ピースワンコに訴えられた裁判について、私が詳しい情報提供を求めても、土谷さんは多くを語ろうとしませんでした。「週刊新潮」に求められて提供したコメントが名誉棄損に当たるという訴えのようですが、ことはそう単純ではないのでしょう。

 カンボジアを対象にした社会的投資会社ARUNや関連のNPOを立ち上げるなど、彼はずいぶん長い間、個人の立場でNGOやNPOの活動にかかわっていました。

 取材を受けるかどうか悩んだ末、彼は「週刊新潮」に元NPO法人代表という立場でコメントしています。それにもかかわらず、PWJ側から三菱総研に連絡が来たことがあり、社内で事情説明を求められて当惑したことがあるそうです。

 サラリーマン経験者として、それがかなり強いストレスになることは容易に想像できます。土谷さんはつまらない騒動に「会社を巻き込みたくない」という気持ちを持っていたようです。

 冷静に振る舞っているようでいて、抑えきれない怒りも心の中に抱えていたことでしょう。PWJ側のやり方について「怒りに震えている」というメッセージが返ってきたこともあります。

 裁判に煩わされなければ、健康状態にももっと注意を振り向けることができたはずです。

 彼はまた、行政介入を受けないかわりに説明責任を自発的に果たしていくことが期待されているNPOが、疑問に答えようともせず、訴訟を起こすこと自体、残念に思っていたようです。

 「週刊新潮」の記事や土谷さんのコメントを読んでみて、名誉棄損というのは言葉尻をとらえた言いがかりだと私は思いました。訴訟は恫喝、口封じを狙ったものなのかもしれません。

 もし、PWJ/ピースワンコが論客・土谷和之さんの口封じを目的として裁判を起こしているとしたら、その選択は大きな間違いです。裁判の結果、信用を失うのは疑問に真正面から答えようとしないPWJ/ピースワンコの方ではないでしょうか。

 もちろん、訴えた側のPWJ/ピースワンコにも勝算はあると考えているのでしょう。それは彼らの勝手です。しかし、メディアの世界で40年近く働いてきたプロとして、私は土谷さんの投稿がPW/ピースワンコの名誉を不当に貶めるようなことはしていないと思います。

 私は裁判所がPWJ側の言い分を退けるに違いないと予想します。そして、その裁判所の判決を見ないまま、土谷さんがこの世を去ったことが残念で、悔しくてなりません。

4、本質を突く質問

 葬儀が終わった後、すでに「追悼アカウント」になってしまっている彼のFacebookの投稿を読み直してみました。

 私が去年の夏から行政文書の開示請求と現場訪問、関係者への聞き取りなどを積み重ねて、ようやく明らかにできたと思っていたことの多くは、実は頭脳明晰な土谷さんの手ですでに問題点として指摘されていて、いまさらながら驚いています。

 しかも、2018年秋の時点で、公開された資料を使い、わずか3~4カ月の間に分析しているのです。こちらがジャーナリストを名乗るのが恥ずかしくなってしまうくらいの手際よさです。彼を訴えたPWJ/ピースワンコや大西健丞代表理事は、本質をズバリとつく鋭い質問を投げかける土谷さんの存在を苦々しく思っていたのでしょう。

 土谷さんのそうした鋭い分析、意見をいくつか抜粋してご紹介します。

【指摘1】どこに消えた?800頭のワンコたち

 「ピースワンコ事業の透明性を担保するためにも、この不明の約600頭が、どのような状況にあるか、ぜひ統計的なデータで公開することを、ご検討いただけないでしょうか。というのも、これらのデータが公開されていないことが、貴団体の施設の状況等について、多くの懸念や疑念を引き起こしている面があると考えるからです」(2018年9月24日)

 彼は自分が西日本豪雨などの支援活動にあたるPWJに寄付をした支援者でもあります。それを明らかにしたうえで、PWJのホームページのメッセージ欄からピースワンコに関する質問を送った、とFacebookに投稿しました。

 ピースワンコ・ホームページのトップにある情報によると、2012年~2018年7月末までの活動で「総保護数4235 頭」「譲渡・返還数1110 頭」とあるのに、雑誌記事では収容頭数が2500頭近くと伝えられていて、計算上は600頭以上が「不明」になる、と指摘したのです。

 「預かりボランティアによる一時的な預かり」「引き出し当初から罹患していた病気やケガ等による不可抗力的な死亡」「貴団体の保護施設内での犬どうしの殺傷事故」「脱走」などが可能性として考えられるとし、その内訳を示すデータの公開を求めたのです。

 しかし、PWJ/ピースワンコはその質問に答えようとしません。

 「9月24日付で私がピースウィンズ理事会宛にご送付した質問について、2ヶ月近く経過しますが未だ回答はありません。明日、11月18日にピースワンコは幕張メッセで大規模な譲渡会を開催されるようです。譲渡を進めることは重要なことですが、情報の公開も同様に重要なことと思います」(2018年11月17日)

 土谷さんは時間の経過とともに「不明」の数字が膨らんでいることを憂慮します。

 「ピースワンコのウェブサイトによれば、今年10月末時点までの総保護頭数4675頭。譲渡・返還数1196頭。またピースワンコから最近支援者向けに来たメール(ツイッターにアップされている方がいました)によれば、10月末現在で保護している頭数は2662頭。となると、統計上行方不明な犬の頭数は、4675-1196-2662=817頭(2018年10月末現在) 私が2ヶ月前ほど質問した際は約600頭(7月末時点)と推計されましたので、そこから3ヶ月で約200頭も行方不明な犬が増えていることになります」(2018年11月18日)

 「ピースワンコの保護頭数に関する情報が更新されました。11月末時点で今までの総保護数4805頭、譲渡返還数1258頭。11月末時点で保護している頭数は正確には公開されていませんが、10月末時点の2662頭から仮に50頭増えているとすると2712頭。所在不明な頭数は4805-1258-2712=835頭。相変わらず800頭程度は所在不明なままのようです」(2018年12月6日)

 これが、動物愛護関係者たちがことあるごとに指摘している「消えたワンコ」問題です。いまだに広島県からもPWJ/ピースワンコからはきちんとした説明がなされていません。それどころか累計引き取り数などは公開されなくんなっているようです。情報公開の後退です。

 私は昨年夏、情報公開請求して神石高原町から受け取った狂犬病予防法に基づくPWJ・ピースワンコの犬の死亡届一覧を入手しました。2013年10月から始まり、2019年7月3日までの分が記録された届出を見ると累計は349頭でした。

 シェルターの中でそれだけの犬が死んでいたのですから、それはそれでショッキングなでデータでしたが、統計上消えたワンコの数はそれをはるかに上回っているのです。県外のシェルターや譲渡センターに移送されたものもあるとはいえ、シェルターから逃げ出した犬もかなりいることが推定できます。地元に住む人たちはたまったものではないでしょう。

 ピースワンコでは動物愛護センターから保護犬を引き取った後、不妊・去勢手術をしない例もかなりあるとされ、ピースワンコの管理がずさんなために、保護された野良犬が逃げ出してまた繁殖を繰り返すというお粗末な事態をもたらしているかもしれないのです。

 これは犬の飼養管理状態を知るうえではとても重要な情報です。監督者である広島県は立ち入り調査によって犬たちの行方を確認し、PWJ/ピースワンコにも情報を公開するよう促す責任があるはずです。私は広島県庁を訪ねて、食品生活衛生課の幹部たちに適切な調査を行うよう要望したこともあります。

【指摘2】使いみちがわかりにくい会計報告

 「NPO法人の会計上、『(2)その他経費』内の『その他経費』に費用を計上してはいけないわけではありません。ただ、経常費用計の約8億円のうち約3.4億円、すなわち40%以上が使途不明という状況は、認定NPO法人として望ましいものとは言えないと思われます。以下にある会計の『重要性の原則』の考え方からしても、看過できない水準と言えるでしょう」(2018年11月18日)
 
 役員としてNPOの経営にも関わったことがある土谷さんは、PWJ/ピースワンコの収支報告があまりにおおざっぱで、お金の使いみちがわかりにくくなっていることに苦言を呈します。PWJの事業別収支のうち保護犬(ピースワンコ)部門の経常費用約8億円のうち人件費が1億7千万円、その他経費が6億3千万円で、その「その他経費」の内訳の最大項目が、またまた「その他経費」という形記載され、その金額が3億4千万円もあることに呆れたのです。

 この指摘は、のちに発売された週刊新潮の記事(2018年12月13日号)の中では「総額8億円の経常費用のうち3.4億円は、“その他の経費”内の“その他の経費”とされている。つまり使途不明金で、監査を受けたとして堂々と出してます。ふるさと納税を使いながら年に3億円以上が使途不明とは、認定NPOとして常識的にあり得ない規模です」というコメントとなります。

 PWJ/ピースワンコは「使途不明金」という表現に敏感に反応しました。反。不正会計などと結びつけて使われることが多い言葉だからでしょう。12月5日付の声明で「3.4億円が使途不明金だとしていますが、当団体はすべての支出について適正に管理・記録し、公認会計士による監査を受けております」としたうえで、3億4千万円について啓発普及・広報費約1億9500万円、施設修繕費等約3600万円などと補足説明をしています。

 土谷さんもピースワンコの声明を読んで、「会計上の使途不明金は領収書などが見つからず経常(注:「計上」の変換ミスか)するものですよね ここでは外部から見て使途不明という意味でコメントしました 確かに『使い道は外から見えないお金』などと書いて頂いた方が用語の使い方としては良かったかもしれませんね」(2018年12月9日の自身の投稿へのコメント)と振り返っています。

 週刊新潮の記事の中の「つまり使途不明金」というのは編集部サイドで考えた表現だったのでしょう。その気になれば、新潮社に責任を転嫁することもできたかもしれませんが、彼はそのまま裁判に立ち向かっています。

 素直に彼のコメントを読めば、何に使ったか示されていないお金の割合が多すぎ、「ふるさと納税」交付金も受け取って活動するNPO の情報公開のあり方としては好ましくない、ということを指摘しているのであって、「使途不明金」ということばは単に内訳が表示されていない費用という程度の意味で使われていることは明らかです。

 もちろん、PWJ/ピースワンコのように「使途不明金」という言葉尻をとらえて、名誉を棄損されたと訴えることも可能でしょう。誰にでも裁判を起こす権利はあります。しかし、それは言いがかりに等しいものであって、目的は問題の本質を覆い隠すことにあるのではないかと私は思っています。

 PWJ/ピースワンコに寄付する支援者のためにもこんな嫌がらせのような訴訟は即刻取り下げて、寄付金や「ふるさと納税」の使いみちを詳しく、丁寧に説明したほうがよいと思います。

【指摘3】旧村上ファンドなど異例の借入先

 土谷さんの分析は資金の借入先にも及びました。

 「2017年度の会計報告を見ると、その2銀行に加えて、以下の組織及び個人から借り入れていることがわかります。また、期末残高も約7.6億円と倍増しています。

(株)トラストバンク 短期借入 3,000万円
須永珠代       短期借入 1,000万円
(株)C&I holdings   短期借入 1億3,000万円
           長期借入 2億円
(株)日本政策金融公庫 長期借入 2,000万円
西武信用金庫      長期借入 1,000万円

 このうち、トラストバンクはふるさと納税総合サイト『ふるさとチョイス』企画・運営をしている企業、須永珠代さんはトラストバンクの代表取締役、(株)C&I holdings は旧村上ファンドの村上世彰さんの長女・絢さんがCEOを務めるファンドということで、こうした組織・個人がNPOへの融資を実施することは非常に異例なことのように思います」(2018年11月25日)

 PWJは同年度に債務超過に転落するくらい財務内容が悪化していましたから、銀行からのお金の借り入れが難しくなっていたのでしょう。村上世彰氏のグループ企業や「ふるさとチョイス」運営会社からの借り入れなど、PWJとしては触れてほしくない話題だったに違いありません。
 
 私が情報公開資料を分析したところ、PWJは前期(2020年1月期)末時点で、大西健丞代表理事の常勤先である公益社団法人Civic Force(東京都渋谷区、大西健丞代表理事)からも2億5千万円を借りていることもわかっています。

 公益法人のお金は特定の目的に使うための財産です。PWJがいったいどんな事情で借用し、何に使っているのか、きちんとした説明が求められるところです。

 PWJの借入金の残高は15億円を超えています。ピースワンコ部門の経常収支は毎年度、億単位の黒字を計上していますから、借入金の膨張はピースワンコ以外の赤字部門のファイナンスが原因だと推定できます。

 いったい、どうしてここまで膨れ上がってしまったのでしょう。そして、その返済資金はどうやって確保するのでしょう。PWJの収入の大半は国や援助機関からの助成金や寄付金です。まさか、借金返済のために寄付を募るわけにもいかないでしょう。

 赤字を生むずさんな事業をリストラし、積もり積もった借金の山を解消していく計画を立てるべき時期を迎えているのではないでしょうか?大西健丞代表理事はじめPWJの役員たちは責任をもってリストラ計画を立てて、会員や支援者に説明すべきです。

【指摘4】書類送検後も堂々宣伝、寄付集め

 「ピースワンコを運営するピースウィンズ、狂犬病予防法違反等で書類送検です。今後の推移を見守りたいですが、多くの方の懸念が顕在化しているように思えます。認定NPO法人のガバナンス上も、適切な対応が求められるのではないでしょうか」(2018年11月20日)

 税の優遇措置が認められる認定NPOの資格は5年ごとに更新しなければなりません。法令違反をしないことが要件の一つに入っていますから、2017年に狂犬病予防法で義務付けられた犬の登録や予防接種を大量に怠ったピースワンコは2018年1月から、広島県庁とも相談しながら秘密裡に、つまり世間には内緒で、違反状態を解消する作業に取りかかっていました。

 しかし、広島県警が2018年6月に狂犬病予防法違反の疑いで捜査を始めて、違反行為がばれてしまいます。そして県警がその容疑事実を固めて書類送検したのが11月でした。

 「ピースワンコ主催のprodogスクール。今期は昨日開校したようです。しかし、高度な専門知識を伝授する前に、基本中の基本である狂犬病予防法の遵守を優先するべきではないでしょうか」(2018年11月20日)

 痛烈な皮肉です。しかし、広島県は7月初めの知事記者会見で、法令違反の状態は解消できている、としてピースワンコに太鼓判を押しましたから、PWJ/ピースワンコは書類送検されようがお構いなしに事業を進めます。

 土谷さんの疑念は、書類送検にも関わらずピースワンコの広告を掲載する朝日新聞にも向けられます。
 
 「本日12月2日(日)朝日新聞朝刊31面(社会面)に、ピースワンコのふるさと納税による寄付募集のカラー広告が掲載されています。全5段(ヨコ38㎝タテ17cm)、すなわち紙面の1/3を使った大きな広告です。新聞広告の代理店のサイトを見ると、朝日新聞全国版の全5段広告は1回掲載で約1500万円かかるようです。東京本社版のみとしても約900万円。これはモノクロ価格なので、カラーの場合はより高いかもしれません」(2018年12月2日)

 朝日新聞といい、2019年にピースワンコ賛美の記事を1面ほかの大きな紙面を使って大々的に掲載した東京新聞といい、警察から法令違反の疑いで書類送検された団体に対して甘すぎるのではないでしょうか?

 「ふるさと納税や寄付等で集めた11億円のうち2割近くが広告宣伝費という状況には、やはり違和感を覚えます。また、情報公開という面からも、広報宣伝費1.9億円やその他費用0.5億円などのより詳細も公開されることが望ましいでしょう」(2018年12月5日)

 私の古巣、日経グループの雑誌でも大西健丞代表理事らが好意的に取り上げらたりした時期もあります。紙媒体の広告収入に拍車がかかる中で、インターネット広告中心のPWJグループの広告を獲得する狙いがあってのことだったりしないか心配になることがあります。

【指摘5】1日何人が犬の世話をしているのか?

 従業員は100人いますよ、といわれると、普通はフルタイムのスタッフが毎日勤務していると想像するかもしれませんが、土谷さんはそうした思い込みを排します。

「ピースワンコについて、もう1つ気になるのは、飼育スタッフが何人いらっしゃるのか、ということ。約2,700頭もの犬(しかも野犬が多いようです)を丁寧にケアするためには、相当数のスタッフが必要ではないかと思います。9月14日にピースワンコが発表した声明では、『世話をするスタッフも100人以上います。』とあります。ただ100人が、常勤なのか、それともボランティアのような非常勤を含むのか、わかりません」(2018年11月19日)

 この気持ちは本当によく理解できます。PWJ/ピースワンコの説明はあやふやなものが少なくなく、「世話するスタッフ」の定義を含めて一つずつ事実関係を入念にチェックしなければ、勘違いさせられてしまうことがあります。(詳しくはシリーズ、ファクト・チェック 大西健丞さん、その話、本当ですか?をお読みください)

 土谷さんはピースワンコ従業員の状況を調べるため、ピースウィンズ・ジャパンがハローワークで保護犬スタッフを募集しているページをチェックし、次のように書きます。

 「企業全体:150人 うち就業場所:37人 うち女性:24人 うちパート:13人」とあり、これだけをみると常勤(パート含む)の飼育スタッフは40名以下くらいしかいないように思えます」

 2020年6月28日時点でハローワークのページを開くと、「企業全体:198人 うち就業場所:63人 うち女性:42人、パート:9人」とあります。

 ピースワンコには大きくわけて、神石高原町には2つ、岡山県の高梁市に1つのシェルターがありますが、それぞれにどのくらいの従業員がいるのかは不明です。

 清掃などは外注しているとされていて、100人以上という中には含まれているものと思われますが、PWJ/ピースワンコが公開するのは自分たちが広報したい数字ばかりで、外部からの問い合わせに対して回答することはほとんどないようです。

 PWJ/ピースワンコは、あいまいな説明でぼかしておきながら、批判する人が少しでも言葉の使い方やデータを間違えると、鬼の首を取ったように攻撃するようです。土谷さんには大きなストレスとなったことでしょう。それで健康を害したことに気づくのが遅れたかもしれないと思うと、本当に気の毒です。

   ◆     ◆     ◆   

 つい最近のことですが、岡山県高梁市にあるピースワンコ西山犬舎に岡山県動物愛護センターが抜き打ちで立ち入り調査をしたところ、およそ680頭の収容犬に対し、スタッフ数は外注の清掃業者を含めて十数人と判明したもようです。

 岡山県では最低でも30頭に対して1人のスタッフを配置するよう動物取扱業者らに目安を示していて、ピースワンコに対しては収容する犬の数を減らし、人も増やすよう指導したようです。

 運営資金を寄付する人たちの期待に応えるためにも、PWJ/ピースワンコは広島県や岡山県から指導されなくとも、どんな体制で3千頭近い収容犬を世話をしているか、自発的に情報公開して欲しいものだと思います。

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