ピースウィンズ・ジャパンの広報を担当した元・契約コンサルタントとのQ&A

■東京新聞「訂正」記事について

にっぽんルポの記事訂正について
 東京新聞が今年2月、1本の記事で3か所も内容を訂正した「にっぽんルポ~広島・犬シェルター 小さな命 全て救う」(2019年5月18日付夕刊及びWeb版)は、そこで紹介しているNPOピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が契約している広報コンサルタント会社、ソーシャルピーアール・パートナーズ(SPP)社の若林直子社長から同新聞の幹部に依頼があって取材が進められたということです。

 記事が掲載され、SPPの若林社長とPWJの大西代表は大いに喜び、PWJのホームページでその記事を紹介し続けています。しかし、当事者であれば当然気付いてよさそうな重大な間違いがあるのにPWJ側はずっと放置していました。それを広報のプロと自負される若林氏はどう考えているのでしょうか?尋ねてみました。

日経在勤中のSPP設立について
また、若林氏はPWJが2016年に「日経ソーシャルイニシアティブ大賞」を受賞した当時、日経の同大賞事務局で働くスタッフでもありました。ご本人がかつて投稿されたSNSなどを読んでいると、事務局在勤中に大賞を担当する執行役員酒井綱一郎氏からの助言を受けてSPP社を設立し、2016年7月に日経での業務が終了した直後、2016年8月からPWJをクライアントとして受け入れたようでもありました。

 日経の大賞事務局在職中に個人会社を作った経緯、目的は何だったのでしょうか?大賞事務局での仕事と個人会社のクライアント探しが一緒くたになる恐れ、つまり公私混同、利益相反などが生じる恐れもあるので、念のためこれも尋ねてみました。

 日経本社からも回答をもらいました。これまでの疑問が解けたところもあれば、報道機関としての公正さを保つために工夫したほうがよいと思えるところもありました。

現在はPWJ広報担当せず
 なお、若林氏は現時点ではPWJの広報はもう手がけていないということです。回答の作成、送付にあたって弁護士にもチェックしてもらっていて、取り上げ方によっては、対応を弁護士とも相談されるとのことですので、誠実にご回答いただいた若林の見解ができるだけ正確に伝わるように、当方も明確な間違い箇所を除いて原則として返信いただいた全文を紹介させていただくこととします。

■SPP若林氏への質問状

ソーシャルピーアール・パートナーズ 若林直子さま

 経済ジャーナリスト(元日本経済新聞)の樫原と申します。日経ソーシャルイニシアチブ大賞(2016年)受賞団体のNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)について調査報道を手掛けています。

 昨年、日経グループ企業役員の酒井綱一郎氏をSPP社顧問として迎えているのは事実かと問い合わせたことがあります。今回は酒井氏に招かれて2012ー2016年に日経ソーシャルイニシアチブ大賞事務局スタッフとして働いていた時期に設立されたSPP社についての問い合わせです。

 若林さまのSNS投稿によると、若林さんはSPP社を当時の日経の職場上司である酒井氏に勧められて日経ソーシャルイニシアチブ大賞事務局在勤中の2015年に設立しています。

 顧客の多くは日経大賞応募企業で、中でも2015、16年と連続応募し 2016年に大賞を受賞したPWJとは2016年8月から広報業務を請け負っていらっしゃるようです。

 そのような情報を読者から寄せられたSNSスクリーンショット等で知りました。

 日経大賞事務局在勤中から応募NPOをクライアントを(注:「として」の誤り)獲得するための営業活動をしていたのでしょうか?

 質問は以下の通りです。大変ぶしつけか思いますが、3月4日までにご回答いただければ幸いです。

 ①日経ソーシャルイニシアチブ大賞事務局員としての業務を終了されたのはいつですか?

②ソーシャルピーアール・パートナーズ社の設立は2015年で間違いありませんか?

 ③SPP社設立の事実や事業目的は日本経済新聞社もしくは大賞事務局の上司、同僚に伝えていましたか?

 ④SPP社がPWJから広報業務の依頼を受けたのはその業務をスタートする何ヶ月前くらいでしょうか?また、現在もPWJの広報を担当していますか?

 ⑤2019年5月の東京新聞夕刊記事「にっぽんルポ」は、若林さんが東京新聞社会部の知人に依頼して取材してもらったとのことですが、その際、同新聞の取材記者、部長ら編集責任者ら関係者に対し金銭の負担、飲食、交通手段の提供等の便宜を供与しましたか?

 ⑥にっぽんルポの記事には多数の間違いがありました、貴殿は気付いていましたか?

以下が間違いについて解説したメモです。ご参考まで

https://note.com/kashiharahiroshi/n/n8b82650975b4

以上です。ご多忙のところ誠に恐縮ですが、3月4日までにご回答いただければ幸いです。

■SPP若林氏からの回答

樫原さま 以下、ご返事させていただきます。

ソーシャルピーアール・パートナーズ 若林直子さま
 経済ジャーナリスト(元日本経済新聞)の樫原と申します。日経ソーシャルイニシアチブ大賞(2016年)受賞団体のNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)について調査報道を手掛けています。
 昨年、日経グループ企業役員の酒井綱一郎氏をSPP社顧問として迎えているのは事実かと問い合わせたことがあります。今回は酒井氏に招かれて2012ー2016年に日経ソーシャルイニシアチブ大賞事務局スタッフとして働いていた時期に設立されたSPP社についての問い合わせです。
 若林さまのSNS投稿によると、若林さんはSPP社を当時の日経の職場上司である酒井氏に勧められて日経ソーシャルイニシアチブ大賞事務局在勤中の2015年に設立しています。
 顧客の多くは日経大賞応募企業で、中でも2015、16年と連続応募し 2016年に大賞を受賞したPWJとは2016年8月から広報業務を請け負っていらっしゃるようです。

 ご質問の前に書かれいてる内容に事実誤認があるので、そちらからご説明いたしますね。クライアントとの契約時期については、改めて契約書を確認し、弁護士にもチェックしてもらいました。(念のため弁護士もccに入れさせていただきます)

 1.PWJが大賞を受賞したのは、2016年6月、私がPWJの広報業務を請け負ったのは、2016年11月からです。メールのやりとり、契約書も残っていますが、2016年10月後半に大西氏からお電話があり、PWJの広報をお願いできないだろうか、と言われ、事業責任者にお会いし、内容をお聞きし、その後請け負っております。こちらから「営業活動をした」というのは100%誤りです。
 2.「事務局在勤中から応募NPOに対しての営業活動をしていた」なんていうことはあり得ませんし、今のクライアントすべて、私から営業活動をした、ということは一切ありません。
 3.「顧客の多くは日経大賞応募企業」というのも全く事実と違いますし、SNSを見ていらっしゃるのであれば、そんなことはないということがお分かりかと思いますが・・・。ちなみに、応募企業で、日経との契約終了後にクライアントになったのはPWJ含めて3つ。
いずれも日経との契約終了後3か月以上経ってからです。繰り返しますが、私からの「営業活動」はひとつもありません。

 そのような情報を読者から寄せられたSNSスクリーンショット等で知りました。

 日経大賞事務局在勤中から応募NPOをクライアントを(注:「として」の誤り)獲得するための営業活動をしていたのでしょうか?

→するわけがありません。100%否定します。そのような事実と異なる話をしている方がいるとしたら、訴訟も考えます。

 質問は以下の通りです。大変ぶしつけか思いますが、3月4日までにご回答いただければ幸いです。

 ①日経ソーシャルイニシアチブ大賞事務局員としての業務を終了されたのはいつですか?

2016年7月です。

 ②ソーシャルピーアール・パートナーズ社の設立は2015年で間違いありませんか?

 間違いありません。2015年7月に設立しました。

 ③SPP社設立の事実や事業目的は日本経済新聞社もしくは大賞事務局の上司、同僚に伝えていましたか?

伝えていました。

 ④SPP社がPWJから広報業務の依頼を受けたのはその業務をスタートする何ヶ月前くらいでしょうか?また、現在もPWJの広報を担当していますか?

業務の受けたのは、先ほども書かせていただいた通り、「何か月前」ではなく、何か月も後です。広報の担当はしておりません。

 ⑤2019年5月の東京新聞夕刊記事「にっぽんルポ」は、若林さんが東京新聞社会部の知人に依頼して取材してもらったとのことですが、その際、同新聞の取材記者、部長ら編集責任者ら関係者に対し金銭の負担、飲食、交通手段の提供等の便宜を供与しましたか?

 まさか、そんなことするわけがありません。それは先方に確認していただいても100%否定されると思います。梶原さん(注:「樫原」の誤りでしょうか?)も新聞社に長年勤めていらしたのであればわかると思いますが、金銭の負担をするということはあり得ないことです。樫原さんは、そういった負担をしていただいたことがあるのでしょうか。。。考えてもみないことです。

 ⑥にっぽんルポの記事には多数の間違いがありました、貴殿は気付いていましたか?以下が間違いについて解説したメモです。ご参考まで
https://note.com/kashiharahiroshi/n/n8b82650975b4

 気づいていませんでした。いつも取材同席、同行をする際には、内容に間違いがある場合は必ずクライアントに「これは事実と違いませんか?間違いがあれば、記者に訂正してください」ということを伝えます。
ただ、ご存知のことかとは思いますが、メディアをクライアントにはつなぎますが、すべての取材に同席をするわけではありませんし、東京新聞さんのこの取材の際は、
 ご紹介をしただけで、あとは現場の広報の方が同席をしてくださっていて、私は同席をしていませんでした。

 それから、梶原(注:「樫原」の誤りでしょうか?)さんの記事を拝読しましたが、私がPWJにとって都合のよい記事を書いてもらうように頼んだ、ということも一切ないです。
  梶原
(注:「樫原」の誤りでしょうか?)さんには言うまでもないと思いますが、編集記事に口だしができるわけはなく、取材した内容をどう書くかはメディアの判断です。
  この時も「いい内容であろうが、悪いこと書かれていようがそれが外から見た事実なのであれば(事実誤認は別として)、謙虚に受け止めて、改善すべき点は改善していけばいいと思います」と広報担当の方にも伝えていました。

  以上です。すべて誠実にお答えしたつもりなのですが、それでも何かご質問や疑問等がありましたら、弁護士同席でお会いできればと思います。また、記事内容に関して、誤解を生じるような箇所がある場合も対応を弁護士と相談します。今後のやりとりは、私ではなく弁護士経由でお願いたします。       **                                                    **若林

■日本経済新聞社からの回答

 日経ソーシャルイニシアティブ大賞は2013年から2016年まで4回開催されました。大賞事務局在勤中に派遣スタッフが個人会社を作る行為を会社は知っていたのか、認めていたのかを尋ねました。

 大賞事務局員としての若林氏との契約上の関係は「当初、若林氏は当社と委託契約を締結した企業から派遣されていましたが、その後、若林氏が設立したソーシャルピーアール・パートナーズ(SPP)との契約に移行しました」ということです。

 若林氏が会社を設立した経緯については「把握していません」ということですが、「日経ソーシャルイニシアティブ大賞を企画するにあたり専門家である若林氏に事務局を手伝ってもらいました」ということですから、同氏の専門性を評価して個人会社との契約に途中で切り替えたのでしょうか。

 それにしても「派遣スタッフ」との契約を「スタッフ個人の会社」との契約に切り替えるのは珍しいケースだと思います。上司の執行役員・酒井綱一郎氏(当時)の助言があればこその契約変更でしょう。SPPのホームページには、昨年私が若林氏と日経広報室に問い合わせるまで酒井氏が「顧問」として紹介されていました。ホームページはリニューアルということで現時点でまだ閉鎖した状態が続いているようです。

 大賞応募企業をクライアントとして勧誘したり、応募書類情報などを私的に利用するような公私混同や利益相反に類する行為を日経は禁止しているかという質問には直接答えず「そのような行為があったとは把握していません」との回答でした。

 当然守るべき規律として契約等で確認をしていないのかもしれません。しかし、もっとハッキリ禁止した方が良いと思います。

 日経は報道機関でありながら、数多くのコンテストやイベントを主催していて、その影響力を利用しようと近づいて来る人は少なくありません。誘惑も多い職場です。あらぬ誤解を招かないよう明文化された厳格なルールを示しておいた方がよいと思います。




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