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教えて大西さん、愛媛・無人島の芸術事業④目標に届かぬ「ふるさと納税」クラウドファンディング~事業の赤字補てんが慢性化

「使途不明ではない」と大西健丞氏

 さて、ふるさと納税の使いみちをめぐって「使途不明」とまで愛媛県上島町の役場職員から指摘された認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)はどのように答えたのでしょうか。

 上島町役場が質問文書(依頼文書)を送ったのが2019年10月15日、大西氏からの回答はちょうど一カ月後の同年11月15日でした。その内容をまとめた2019年12月11日付の上島町商工観光課メモからご紹介します。質問は前回と同じもの(再掲載)です。

サマーキャンプに使った

問1 来年度設立予定のインターナショナルスクールが凍結。GCF(ガバメントクラウドファンディング)により納付したふるさと納税の使いみちが使途不明。

答1 インターナショナルスクールについて、常設型は当面凍結。資金調達の見通しがつけば進める。GCF(ガバメントクラウドファンディング)によるふるさと納税の使途は、サマーキャンプの実施や設立準備金等に使用しているため、使途不明には当たらない。

2020年に旧コミュニティセンターを改修

問2 地域コミュニティ活動の発展に寄与するとした、SAP(NPO法人瀬戸内アートプラットフォーム)による豊島現代アートセンターの具体的な動きが見えない。

答2 SAPによるアート関連事業について、2019年は改修の計画期間で、設計はほぼ固まった。2020年にコミュニティセンター及び周辺の町有地を購入したうえで、建物の改修工事に取り掛かる計画。

PWJ本部は移転できない

問3 町内に主たる事務所を置くNPOに準じるものとしての取り扱いに疑義が生じており、今後の活動計画及び本町の従たる事務所を主たる事務所とする予定について説明を願う。

答3 主たる事務所の移転可能性について、PWJは神石高原町で事業展開しており、移転は不可能。SAPは上島町で事業展開しているため、移転は可能。ただし、移転の場合は各種事務手続きにより、2020年5月以降になる。

 1カ月かけて町役場とPWJの間で行われたやり取りは以上のような内容だったということです。

寄付集めは「目標未達」の連続

 PWJは上島町の看板を使って、ふるさと納税でどんな寄付(ガバメントクラウドファンディング=GCF)」と募っていたのか、いくつか実例をみてみましょう。

①  離島にも、被災地にも医師を~翼のある病院船プロジェクト 2017年11月2日から2018年4月30日(180日間)のクラウドファンディングは、目標5000万円に対し143人293万8056円(目標比5.8%)

②  国内外の被災地の子どもたちに学ぶ機会を! 2017年11月30日から2018年2月28日(91日間)のクラウドファンディングは、目標3000万円に対し39人から147万5千円(目標比4.9%)
  この事業は、給付型奨学金を出し、上島町でのサマースクールや国内のインターナショナルスクールで学ぶ機会を提供し、2020年には高等学校「PWJグローバルシチズン・スクール(仮称)」を上島町などに新設する。ソーシャルイノベーターを育成するという触れ込みでした。

③  離島や被災地の子どもたちが社会課題の解決を学ぶ「サマーキャンプ」を実施したい! 2018年11月30日から2019年1月31日(63日間)のクラウドファンディングは目標100万円に対し20日から53万円(目標比53%)
前年度とほぼ同じですが、「目標金額を上回るご寄附をいただいた場合は」と条件を付けて、2020年の開校を目指す、紛争や災害などで被災した子どもたちと山間部や離島に暮らす子どもたちの通うピースウィンズ・グローバルシチズン・スクール(国際高等学校)の設立準備資金に充てると説明しました。事業の実質延期です。

④  急患搬送に1時間以上かかる離島や山間部で、ヘリコプターを使った搬送システムを実現したい!2018年12月18日から2019年3月17日(90日間)のクラウドファンディングは目標300万円に対し29人から160万9千円(53.6%)
医師・看護師などの医療チームと、ヘリコプターや船という移動手段を組み合わせることにより、上島町をはじめとする離島や山間部の「医療過疎」の解消を図るとともに、大規模災害などの緊急時の医療支援にも貢献できる新しいモデルを作るという触れ込みです。

国際高等学校を本当に作るのか?

 いずれも目標額を大きく下回っています。国際高等学校(写真、ピースワラベのHPから)を作るなんて、これではとても無理でしょう。町役場が疑念を抱くのは当然です。

 PWJもそれを自覚しているようです。寄付の呼びかけにあたっては、2018年度からすでに逃げ道を作っていました。寄付が予定以上に集まった場合に開校の「準備資金」に充てると説明しているのです。目標未達が続くうちは、開校準備資金の積み立ては始まらないわけですね。

 それにしても、このような中途半端なお金の集まり方では、計画した事業はまともにできないでしょう。医療過疎の解消も300万円程度の資金で可能になるとはにわかに信じがたいところですが、その目標も半分程度しか達成できていません。PWJは計画に満たない資金をどのように使ったのか、事業ごとに詳しく説明する責任があると思います。

 PWJは似たような名目で本部のある神石高原町でもふるさと納税のクラウドファンディングを実施しています。

 例えば、これです。

子ども達が社会課題の解決を学ぶ「サマーキャンプ」を実施したい! 2019年12月13日から2020年3月31日(110日間)のクラウドファンディングは目標300万円に対し20人から63万5千円(目標比21.1%)

 寄付は1万円からで「5万円」で国内の被災地から参加する子ども1人の旅費を支援でき、「10万円」で子ども1人がキャンプに参加でき、「50万円」で海外の難民キャンプから参加する子ども1人の旅費を支援できるということです。

 ここでは目標を上回る寄付があった場合も「2021年のサマーキャンプ開催費に充てさせていただきます」とあり、上島町や神石高原町に作ろうとした国際高等学校への積み立ての文言が消えています。

事業の赤字はPWJが補てん

 神石高原町では2019年度から「ふるさと納税」のクラウドファンディングには、町役場の課長5人による事前審査を始めていて、そこに前年度の活動実績なども報告されることになっています。

 サマーキャンプはピースワラベ(子ども教育)事業と呼ばれていますが、神石高原町に出したPWJの2019事業年度(2020年1月末までの1年間)の報告をみると、921万円の事業費に対し、財源として集めた寄付金は総額45万8569円(上島町分を含む)でうち神石高原町ふるさと納税寄付は2万円しかありませんでした。

 2019年夏、1週間のサマーキャンプに参加したのは、韓国、香港、シリア、ザンビア、日本の5か国から12-18歳のこども28人でした。

 事業費の大半、714万円あまりをPWJが自己負担しました。つまり、ピースワラベ事業の赤字を補てんしたわけです。補てん資金は、交付金や寄付金の15%を上限にPWJが一般管理費として徴収する資金がもとになっていることでしょう。

 次々と立ちあげる事業の多くは赤字で、その補填のため財産は目減りし、借入金は増え続けています。借金漬けのパトロンなんて、冗談にもなりませんね。

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