ピースウィンズ・ジャパンの認定更新難航~申請から9カ月、広島県が異例の長期審査
1、 昨年秋から9カ月続く審査
認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)の認定資格更新のための審査が異例の長期間に及んでいます。
認定は5年間有効です。PWJ認定の有効期限は2019年12月18日でした。審査中に期限が到来しても、暫定的に認定資格は継続されるとはいえ、宙ぶらりんの状態です。仮に更新却下という結果になれば、寄付集めの計画が狂い、事業が暗礁に乗り上げてしまうリスクがあります。
更新は期限の半年から3カ月前までに申請するようになっていて、PWJも昨年9月までに所轄官庁である広島県に申請したはずです。長引いても半年以内に終了するもののようですが、PWJの場合は9カ月も続いています。
いったい、これは何を物語っているのでしょう?
「認定」は、NPOやNPOに寄付する人が税制上の優遇措置を受けるのに必要です。2020年4月現在、認定NPOの数は1159あり、10年前と比べれば5倍以上増えていますが、全国で51216というNPO数からすれば一握りに過ぎません。
所轄官庁の審査をパスしたいわばエリート団体の証です。倒産リスクが高まる「債務超過」に転落したり、狂犬病予防法違反などで書類送検されたりしたこともあるPWJのような団体の認定は慎重に行うべきです。広島県が長い時間をかけて審査しているのは歓迎すべきことかもしれません。
2、法令違反あれば認定取り消しも
NPO法人制度は法人運営の自主性を尊重し、「情報開示を通じて、市民の選択、監視、あるいはそれに基づく法人の自浄作用による改善発展を前提とした制度」(内閣府)であるため、行政の関与は最小限です。
しかし、前提である情報開示や法人の役員・会員らによる自浄作用が期待できないような場合はどうでしょう。NPOに寄せられた浄財がどのように使われているか、所轄官庁が役員・会員、支援者らに代わって組織運営や活動の実情を詳しくチェックするほかありません。
内閣府が公表している認定の基準は以下の通りです。
・パブリック・サポート・テスト(PST)に適合すること(特例認定は除きます。)
・事業活動において、共益的な活動の占める割合が、50%未満であること
・運営組織及び経理が適切であること
・事業活動の内容が適切であること
・情報公開を適切に行っていること
・事業報告書等を所轄庁に提出していること
・法令違反、不正の行為、公益に反する事実がないこと
・設立の日から1年を超える期間が経過していること
上記の基準を満たしていても、暴力団、又は、暴力団若しくは暴力団の構成員等の統制下にある法人など、欠格事由に該当するNPO法人は認定・特例認定を受けることができません。
PWJは収支規模が46億円(2019年度)と大きく、事業も緊急人道支援から地域創生、保護犬活動(ピースワンコ)など多岐にわたっています。活動の全体像を把握するだけでも大変な作業です。2017年度に債務超過に転落して、それ以降、厳しい資金繰りが続いています。
2018年度に狂犬病予防法や動物愛護管理法に違反した疑いで広島県警の捜査を受けて、書類送検されたりしました。法令違反はいずれも不起訴処分となりましたが、動物愛護管理法違反は検察審査会への不服申し立てが受理され、いまも審査が続いています。このことも認定更新の審査に影響を及ぼしているに違いありません。
3、身内の団体・個人の間の資金循環
情報公開という点において、PWJは「落第」ではないかと筆者は思っています。寄付集めの宣伝には非常に積極的で、巨費を投じるのですが、情報公開には慎重です。むしろ不都合な情報は隠蔽しがちな体質といってもいいかも知れません。
例えば、大西健丞氏が代表理事を務めている公益社団法人Civic Force(東京都渋谷区)から、PWJは2期連続で期末に3億円(2019年1月期)、2億5千万円(2020年1月期)を借り入れています。しかし、Civic Forceの名称を一般に公開する活動報告には記載していません。
PWJは債務超過に転落して以降、銀行からの新規融資獲得が難航して、大西氏の知人企業や個人からの借り入れを急増させていますが、当初は公開していたそうした債権者の名前も非公開に変更しています。
東京に本部のある公益法人Civic Forceとの間では、短期間に借り入れ、返済、借り入れを繰り返し、Civic Forceの貸借対照表(2019年8月期)に残さない不自然な資金操作をしています。
公益法人の資金をこっそり流用して、PWJの不足資金を埋め合わせようとしているのでしょうか?
筆者はそうした資金操作の意図や手続きを知りたくて、PWJとCivic Forceの代表理事を兼務する大西健丞氏に幾度も質問を送りましたが、回答はありません。
NPOに対する指導指針は、都道府県によりわずかながら違いがありますが、東京都の場合、「NPO法の運用方針」で、外部からの疑問に積極的に答えていくようNPOに公開で「市民への説明要請」を行うことを明記し、手順も決めています。
4、代表理事の給料は高すぎないか?
代表理事ら役員や幹部職員によるお手盛りのような報酬、行き過ぎた便宜供与がないかの検証も広島県には期待したいところです。
いくつもの団体や会社で役員を務めている大西健丞代表理事は、PWJから年間1440万円(2018年度)~1600万円(2017年度)程度の給与を受け取っています。NPO役員としての報酬は「ゼロ」ですが、一般の職員と同じように働いたことに対する見返りとしての給料は受け取っているのです。
高給批判もあるJICAのような国の援助機関の常勤理事でさえ報酬は年間1千数百万円です。大西氏は東京都渋谷区にある公益社団法人Civic Forceで「常勤」の代表理事として働いていることになっていますから、PWJでの仕事は「非常勤」だとみてよいでしょう。JICA理事並みの給料を受け取るのにふさわしい仕事をこなしているのでしょうか?
PWJは、太西氏が代表者を務める他のNPOに多額の貸し付けを行ってきています。瀬戸内アートプラットフォーム(6月1日付で愛媛県上島町に本部移転)、アジアパシフィックアライアンス・ジャパン(APADジャパン、佐賀市)にお金を貸したり、寄付したりしているのです。
両団体とも債務超過、もしくはいつ債務超過になってもおかしくない脆弱な財務内容です。そんな先に貸し付けを行う場合、PWJは回収を確実にするための代表者連帯保証や担保を取り付けているでしょうか?身内での安易な資金の貸し借りは、焦げ付きのもと。
大西氏が10数年前に個人会社で起業して、経営に失敗した愛媛県宇和島町の宿泊施設(ヴィラ風の音もしくは豊島ゲストハウス)を買い戻すため、PWJが瀬戸内アートプラットフォームに6千万円を貸し付けて、ふるさと納税の交付金をあてにして経営再建を図ろうとしたケースもあります。
クルーザーやヘリコプターに乗って離島を訪れ、寄付金を使ってまるで過疎地のパトロンのように振る舞う大西健丞代表理事がどこまで公私のケジメをつけているのか疑問です。所轄官庁の広島県にはよく調べてみて欲しいと思います。