金融紙編集長処分~日経は報道機関にふさわしい人材を育てているのか?
週刊文春記事で知る古巣の醜聞
週刊文春最新号に日経新聞‘‘金融専門メディア”編集長が「二代連続処分」~という記事が掲載されていました。新聞の論説委員と専門紙「日経フィナンシャル」の編集長を兼務するXという記者が今年8月23日、就業規則第77条1項11号に基づきけん責処分を受けたというのです。
週刊文春の取材では、取材先との会食中に店主と揉めてトラブルになり、店主から日経本社にクレームが入ったとか。就業規則の条文にある「他人に暴行、脅迫を加え、または迷惑をかけたとき」に該当するとして処分されたようです。
ああ、X記者か。私にはピンとくるものがありました。私も以前、このX記者に深夜0時過ぎ、電話で数十分間、わめきたてられたことがあるのです。文春記事は「酒席での失態」という位置づけのようですが、私は違うと思います。
農中「2兆円増資」情報を葬り去る
2008年12月頃でした。リーマン破綻後の金融商品価格の暴落で日本の金融機関は大きな痛手を被っていました。農業協同組合(JA)グループの余裕資金を国際運用する農林中央金庫のキズはひときわ大きく、自己資本を引き上げるため2兆円規模の増資を計画していました。
JA系統組織の関係者から私に「JAグループは住専問題よりも今回の事態を深刻にとらえていて、農中の2兆円増資に協力する」という情報提供がありました。私は1981年以来、金融市場や農業取材を通じて農中やJA組織の最高幹部に知り合いが多く、農中の経営や人事に関する機微な情報がどこからともなくもたらされてきていたのです。
リーマン危機時、私は地方部という部署で地域再生、農漁業の活性化などの取材に取り組んでいて、金融は担当外でした。そこで私の古巣でもある経済部の金融取材グループ、いわゆる「日銀クラブ」に所属し、農中を担当するK記者に2兆円増資にまつわる情報をすべて伝えることにしました。
国際投資の失敗で農中が破綻するというタチの悪い噂も流れている状況で、国会審議でも資本注入の可能性などが審議されていたので、そうした懸念を払しょくする2兆円増資のニュースを伝える意義は大きかったはずです。
あなたが責任を取ってくれるのか?
若いK君も農中の上野博史理事長への夜回り取材などで裏付けを進めますが、いつまでたっても記事にはなりません。事実であることの証拠はそろっているのに、どうしたのだろうと思っていると、日銀クラブのキャップだったX記者から深夜、私に電話があり、こんなことを言うのです。
「2兆円増資と記事を書いて、もし実現しなかったら農中はどうなりますか?金融は大混乱する。あなたは責任をとれるんですか?」
X記者は口早に一方的にまくしたてました。金融機関の経営問題の取材で重圧を感じ、神経をすり減らしていたのでしょうか、かなり興奮状態にあるようでした。
確かに2兆円の増資は日本の金融機関としては史上最大規模でした。株式会社であるメガバンクが増資に失敗すれば経営破綻する恐れもあるでしょう。しかし、株式会社ではない農中は株式市場から資金調達をするわけではありません。
失敗しない協同組織の増資の仕組み
私はK記者に記事を書かせなかったキャップのX記者に言いました。
「農中は特別な法律に基づき協同組合組織からの出資によって設立された金融機関だから、増資といっても傘下の農協がため込んだ剰余金を資本に繰り入れるだけだ。JAなど系統組織には5兆円前後の剰余金がたまっているから、そのお金の何割かを右から左に付け替えるだけで農中の増資は完了してしまう。増資の失敗はあり得ない」
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