教えて大西さん、愛媛・無人島の芸術事業②CCA北九州を「事業パートナー」だと紹介したのはいったいどうして?
公的な研究・学習機関
北九州市のホームページでは、CCA北九州についてこんな概要説明がなされています。
「現代美術センターCCA北九州は、グローバルな視点から運営される現代美術の公的な研究、学習機関です」
北九州市では、鉄鋼不況(鉄冷え)に沈む製鉄所の町を活気づけようと1987年に国際鉄鋼彫刻シンポジウムが開催され、好評だったことを契機に、現代アートに関する行事が開かれるようになりました。
末吉興一市長(当時)の呼びかけで1996年に常設の現代美術の学習・研究機関(任意団体)として発足し、2005年以降、若松区ひびきの学術研究都市を拠点としています。北九州市からの助成金はピーク時8182万円(1997年度)ありました。
現在はその半分程度(3800万円)に減っています。市長交代の影響もあるのかもしれませんが、いまのところ、CCA北九州事業の終期に取り決めはないということです。
CCA北九州は美術評論家の中村信夫氏を実質的な責任者(ディレクター)として運営され、マリーナ・アブラモヴィッチ、杉本博司ら現代アートの著名人ら10数人にインターナショナルコミッティのメンバーに就任してもらっています。一定の評価は得ている運営団体です。
1万点以上を収集・公開
CCA北九州の重要な活動のひとつは現代美術に関する本格的な専門ライブラリーの運営で、「世界の展覧会のカタログやアートに関する図書、アート・ビデオやCDソフトなど、1万点以上を収集・公開」しているそうです。
また、世界の第一線で活躍する現代アートの作家や人文、社会、科学の専門家らを講師として招き、国内外の若手アーティストらを育成する事業も行っています。招へいされた作家らは、CCA滞在中に作品の制作や研究活動に専念し、新作をCCAのギャラリーで発表することもできます。
そんな組織(任意団体)が愛媛県上島町の無人島、豊島(とよしま)でNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が進める芸術拠点づくりに事業パートナーとして参画するとあれば、離島振興に頭を悩ませていた町役場の町長さんらもさぞかし喜んだことでしょう。
PWJへの協力は「個人」で?
しかし、実態は北九市役所が説明するように、「現在北九州市ではそのような話は把握しておりませんし、CCA北九州の方でも現在予定はないとのことです」ということなのです。
この点について重ねて確認を求めたところ、11月9日には以下のような回答が来ました。
問 念のためですが、愛媛県上島町の議会で今年6月にNPO法人への無人島の町有地売却が議決された際に、NPO側が町役場に説明した事業計画書に、事業パートナーとしてCCA北九州が明記されております。町役場の商工観光課がNPO法人に確認したところ、CCA側からすでにコレクションの一部を預かっているとのことでした。CCA北九州ではなく、ディレクター個人の所蔵品でしょうか?
答 市としてはそのような話は把握しておりません。CCA北九州としても組織としてそのような話は把握していないと聞いております。ディレクター個人の所蔵品ではないでしょうか。
問 CCA北九州が所蔵、展示している現代アート関連の資料の所有はどのような形になっているのでしょうか?
答 CCA北九州が所蔵している現代アート関連の資料は、CCA北九州が所有していますが、その中にはディレクター個人の資料もあると聞いております。
CCA北九州として愛媛県の離島事業に協力することを約束した事実はないものの、中村ディレクターが個人で、個人のコレクションを提供して協力しているのでしょうか?
助成金で購入の資料の扱いは?
ただ、北九州市からの助成金でCCA北九州が現代美術に関する図書や資料を購入することもあるようです。それらは「助成金を利用して購入したものに関して、自由に処分することはできません」(北九州市文化企画課)ということなので、いずれにしても、PWJが計画するような豊島現代アートセンター(仮称)を運営するには、北九州市への説明や同意も欠かせないはずです。
実は、この問題が浮上したころ、私は地元の知り合いからの情報提供を受けて、北九州市役所とCCA北九州双方に問い合わせを行って、noteにも「愛媛の無人島に現代アートセンター、パートナーも知らぬ事業計画を町役場・議会に提出」と題して、その内容を紹介したことがあります。今年6月のことです。
ディレクターの中村信夫氏にも電話で話を聞くことができました。彼が言うには、個人的にPWJの大西健丞氏と知り合いで、誘われて島を訪ねたこともあるということでした。
再録ですが、「大西氏とは昔からの仲良しで、私もいずれリタイアするときが来るから、豊島のような場所に施設ができるならこれまで個人で集めた所蔵品などを無償で提供してもいいという話は何年か前からしているのは確かです」ということです。
背景として、CCA北九州の後見人ともいえる末吉市長が2007年に市長を退任したこと、自身も引退を視野に入れるような年齢になってきたこと等があるようでした。
CCA北九州は関知せず
しかし、具体的な計画について相談したことはなく、大西氏のPWJが愛媛県上島町に提出した豊島現代アートセンターの建設計画の内容やCCA北九州が事業パートナーとして紹介されていることを中村氏は知りませんでした。
長年にわたって個人で収集してきた所蔵品もあるので、個人所有のものなら大切に扱ってくれる場所があれば寄付してもよいというようなこともおっしゃっていましたから、中村氏個人の協力なら得られる見込みはあるのでしょう。
しかし、それ、つまり中村氏個人の協力をもって、CCA北九州のことを事業パートナーとして計画書に書き込むのは単に「軽率」とか「勇み足」というだけではすまないことのように私は思います。
計画のもっともらしさ、信用を高めるために、先方に説明もせず、当然のこととして合意も得られていないものを意図的に書き込んだ可能性もあるのではないかと私は疑っています。これは虚偽報告、ウソの説明だと見るべきだと私は思いますが、みなさんはこのようなやり方をどのように感じますか?
私は、北九州市の理解と上島町の理解に齟齬があると、先々トラブルになるのではないかと心配していました。そこで北九州市文化企画課からCCA北九州の現状を含めて北九州市が豊島事業に関与していないことを愛媛県上島町にも伝えてもらいました。
その時は「上島町・商工観光課にCCA北九州市について説明しましたが、認識に齟齬はありませんでした」と北九州市から連絡があったので、上島町側で議会への説明の修正などが行われるのかと期待していました。
ところが、上島町側はこれまで、PWJへの確認や議会への説明の訂正を含めて適切な対応をとっていないような印象を受けます。
次回もこの問題を続けて取り上げます。
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