教えて大西さん、ピースワンコのこと②エリート医系技官・田中剛さんにお願いした理由とその中身
■頭越しの直訴メール
「お世話になっております、ピースウィンズ・ジャパンの■■です。6月には局長ともども神石高原町のシェルターまで足を運んでいただき、ありがとうございました」
そんな書き出しの電子メールを、ピースワンコのある職員が広島県庁の医療・がん対策部長(現・健康福祉局長)の田中剛さんに電子メールを送ったのは、2017年12月29日(金)午前9時22分20秒のことでした。2年半余り前ですね。
電子メールは、狂犬病予防法違反で何者かがピースワンコを告発する動きがあることを打ち明け、登録や予防接種の事務を担当する地元の神石高原町の役場と相談しながらなるべく早く対応するとしたうえで、「できれば年明けに一度お時間をいただき、上記のことを含めた連携の方策などについてお話が出来たらと考えています」という内容です。
狂犬病予防法違反を打ち明けたうえで、「連携」とは面白いですね。連携、プラットフォーム好きの援助業界、そして、そこにどっぷり染まって育ったNGOのピースウィンズ・ジャパン(PWJ)らしいアプローチです。ODA(政府開発援助)政策を取材したころの記憶がよみがえって、私は思わず笑ってしまいました。
発信者はあなたの側近幹部の彼ですか?文面からすると田中さんとは6月に県幹部がピースワンコ施設を視察した時にあっただけの薄い関係のようです。ふだん、彼の相手をする県職員は出先機関の県動物愛護センター担当者ですから、ずいぶんと頭越しに直訴したものです。
それは大西さんの指示ですか?厚生労働省出身のエリート医官である田中氏もまた、援助関係の官庁と関係が深いあなたのお友達の1人なのでしょうか?
■先に現場で「電話による指導」
私がこのメールを知ったのは1年余り前ですが、ずっと気になっています。あなたもご存じのように、メール発信の3日前、2017年12月26日にピースワンコは広島県動物愛護センターの担当者から電話で口頭指導を受けていたからです。
内容は「狂犬病予防法に基づく登録及び注射を徹底すること」「狂犬病予防法に基づく鑑札及び注射済票を装着すること」の2点です。つまり、狂犬病予防法違反が認められるので早急に是正せよというもので、実質的には命令です。
その年の6月、健康福祉局長以下、部長時代の田中氏を含む県庁幹部一行が神石高原町のピースワンコ施設を訪問して以来、県の動物愛護センターはピースワンコの犬舎(シェルター)を立ち入り調査していなかったのですから、唐突で、しかも電話という異例の方式による指導でした。
愛護センター職員が立ち入り調査で発見し、指導したものを頭越しにねじ伏せようとしたのでしょうか。それとも、告発の動きを愛護センター職員に打ち明けたうえで、うるさそうな課長や愛護センター指導課長より話の分かる田中部長を仲間に引き入れて、狂犬病予防法違反の告発を封じる工作をしようと考えたのでしょうか。
ピースワンコの職員が電子メールで相談する先が、なぜ、課長や動物愛護センター所長らではなく、現場とは遠いところにいるエリート部長だったのでしょう。その理由を説明してもらえませんか。
■県は告発せず「助言」
このメールを受けて、田中部長は部下の食品生活衛生課長らに検討を指示し、翌年2018年1月9日には食品生活衛生課がPWJに電話をかけて「田中部長へのメールの内容について確認したい」と問い合わせをしています。効果絶大でしたね。
神石高原町の開示データから類推すると、決して少なくない数の保護犬たちが登録もされず、予防注射も打たれないままであったことを考えれば、ピースワンコの幹部が抑え込もうとした告発者の方がまっとうな考え方をしていると私は思います。現に広島県警は大西さんを含めてPWJ幹部や本部を狂犬病予防法違反の容疑で捜査し、書類送検しました。
ピースワンコは狂犬病予防法違反容疑で広島県警の捜査を受けた直後、2018年6月25日に「過年度において、一部の保護犬の狂犬病予防注射が一時的に追いつかない状況が生じていた」とする声明を発表しています。本当に「一部」や「一時的」に過ぎなかったのでしょうか?追いつかなかった状況について、もう少し詳しく、正確に説明してください。
広島県は状況を詳しく調べたうえで、警察に告発することもできたはずですが、民間の獣医を動員して早急に注射を打つようピースワンコに助言するだけでした。
県が「告発なんかしなくていいよ」と判断した経過をいま調べなおしているところです。
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