大間マグロの謎を解く②ヤミ漁獲の疑い、青森県は任意調査を9月に開始
2021年9月14日午前11時、青森県むつ市の県農林水産部むつ水産事務所で「クロマグロ漁獲報告に係る任意調査」に関する打ち合わせが開かれました。
出席者は県庁でクロマグロ資源管理問題を担当する水産振興課の竹谷裕平・栽培・資源管理グループ主幹、同課所属の漁業取締船「はやかぜ」の小野晶広・2等航海士、むつ水産事務所の相坂幸二・水産課長、同じく高橋宏和・普及課主査の4人でした。
打ち合わせは正午に終了し、午後2時から調査対象のもとを訪れ、聞き取りが行われました。
情報公開請求により入手した青森県の行政文書には調査対象の名称は黒く塗りつぶされています。そのため断定はできませんが、むつ支所からクルマで一時間程度離れた下北半島の先端にある大間漁業協同組合だと思われます。
そう考える理由は、今年2月に亡くなった坂三男・前組合長が「静岡に大間のマグロが大量に出た。水産庁から指摘を受けて青森県から漁獲の未報告がないか調べるように言われた」という趣旨のことを筆者に明らかにしていたからです。
調査開始の直前、静岡市中央卸売市場では連日、大量の大間産クロマグロが入荷していました。9月2日には2.7トン、3日は2.9トン、4日は4.6トンという具合で、打ち合わせ前日の13日には6.8トン、当日の14日にも2.9トンが取引されていたことが同市場のデータでは「青森県産」として表記されていますが、同市場の卸売会社によると、全量が大間から入荷したものでした。
そしてこれは最近判明したことですが、静岡市中央卸売市場には8月にも30トン前後の大間産クロマグロが入荷していました。産地の出荷業者から販売を委託された三共水産(静岡市)が競りで買い手を見つけることは困難と判断し、相対で売り込みました。マグロは競りでしか売ってはならないと勘違いしていた三共水産は、マグロ販売を隠すために「その他鮮魚」として市場開設者の静岡市に取引を報告していました。
その結果、市場統計では8月の青森県産のマグロ取引はわずか0.7トンとなっていました。しかし、三共水産による虚偽の報告がその原因で、実際には30トン前後の取引があったのです。
公平で透明性の高い商取引が行われるべき中央卸売市場であってはならないごまかしだったのです。
「いったい、なぜ大間産マグロがそんなに大量に静岡市場に出回るのだろう」
マグロの流通を扱う人なら不思議に思うことでしょう。