教えて大西健丞さん!公益法人Civic Forceから虎の子3億円を借りたワケ

 
 保護犬活動「ピースワンコ」を運営するNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)のことを調べていて、なかなか解明できないナゾが1つあります。

1、 貸し手・借り手とも代表は大西健丞氏

 公益社団法人Civic Force(以下シビックフォース、東京都渋谷区、大西健丞代表理事)から借りた3億円(2018年度末=2019年1月期末)です。いったい何のために使ったのでしょう?

 2009年に発足したこの公益法人は東日本大震災の際にたくさん集めた寄付金などを使って、NPOや企業、行政と連携して災害時の被災地支援活動に取り組むことになっています。PWJはそのパートナー団体の1つではあるものの、それは被災地支援活動を通じた関係でした。

 新聞記者時代の私のキャリアの前半は金融記者でもあるのですが、専門家の目から見て実に不思議な貸借取引です。

 第一に、貸す側、借りる側いずれも代表者が大西健丞氏であることです。ふつうは貸し手、借り手の代表者は別です。そうしなければ、貸し倒れリスクの評価などが適切に行われない恐れがあるからです。

利益相反生じる恐れ

 利益相反関係が生じてしまうためふつうは避けるべき取引です。例えば、法人間でも個人間でも貸したおカネを確実に回収するため担保を設定したり、連帯保証を求めたりすることがありますが、同じ人物が代表者であるとその辺があやふやになりかねません。

 公益法人のお金が貸し倒れになってしまっては大変です。大西健丞さんが代表を務めるシビックフォースは3億円をPWJに貸すにあたって、PWJやその代表者である大西健丞さんから担保や保証を取り付けたのでしょうか?

2、特定資産の大半をPWJに貸し付け

 第二に、貸し手であるシビックフォースが公益社団法人であることです。東日本大震災が発生した際に巨額の寄付が集まり、それが活動資金になっています。公益目的の事業を行うため税制上の優遇措置も受けます。財産の使いみちにはおのずと制約があります。

 シビックフォースの決算書によると、東日本大震災が発生した2011年度(2011年8月期)には震災支援関係で約11億円の寄付が集まり、その後も集まる寄付とあわせ今日に至るまでの活動資金になっています。

4億円の資産のうち3億円を貸す

 しかし、最新時点の資産は4億円弱(2019年8月期末)しか残っていません。しかも、その資産のほとんど(約3億5千万円)は災害支援引当資産という特定資産になっています。使いみちがはっきりしていて、目的外に流用することは制限されているはずです。

 シビックフォースはその中から3億円という大金をPWJに貸したのです。いったいどんな事情があったのでしょう?

3、期末の貸借対照表に記載されず

 第三に、貸し借りの記録はPWJが2019年4月25日に認定NPO所管官庁である広島県に提出した報告書類に記載(写真上)されていました。筆者が情報公開請求した行政文書です。しかし、PWJ、シビックフォースがホームページなどで一般に公開している貸借対照表など決算関係書類(写真下)には記載されておらず、その事実を知る人は限られています。

 開示文書によると、PWJの2019年1月期末借入金総額11億6952万円のうち「その他」として内訳が示されていないものが4億4千万円ありますが、それを除くと最大の債権者(貸し手)がシビックフォースです。実質的にメーンバンクの役割を果たしている広島銀行の2億8659万円を上回るおカネをPWJに貸していました。

 わずか1行の表記で済むのに、一般向けに公表する資料から隠さなければならない特別な事情でもあるのでしょうか?

貸出記載なしでも利息収入は1千倍以上

 もっと不思議な点は、シビックフォースの決算書類に融資の事実自体が記載されていないところです。資産のうち最大の項目は災害支援引当資産3億5288万円(2019年8月期末)、奨学金引当資産3億1231万円(2018年8月期末)であったりしますが、いずれも現金預金中心で貸し付けではありません。

 PWJの決算は1月です。おそらく決算期のずれを利用して、シビックフォースの決算期末までに回収する短期貸し付けを実施したのでしょう。シビックフォースの収支報告をみると、受取利息が2018年8月期の3938円から2019年8月期は460万4877円へと1千倍以上膨らんでいて、3億円を年1.5%以上の金利で貸し付けていたのではないかと類推できます。

4、質問に答えないCivic Force、PWJ 

以上の疑問点を解明するため私は数か月前から大西健丞氏に質問を送っていますが、残念なことにPWJからもシビックフォースからも回答はありません。

法令違反がありそうなら必要な対応

 シビックフォースの公益認定を所管するであろう内閣府公益認定等委員会、PWJの公益認定を所管する広島県にも問い合わせました。広島県庁でNPOを所管する県民活動課からは「会計処理に関して、法令等に違反する疑いがあると認められる相当な理由があるときは、必要な対応を行ってまいります」との回答が届いています。

 同県は現在、5年に1度の認定更新審査を行っている最中のようですが、この際、NPO法の趣旨に沿って団体自ら積極的に情報を公開するようPWJを指導して欲しいと思います。法令違反があれば論外ですが、法令に違反しないまでも寄付金の使われ方に疑念が生じないようNPOも公益法人も説明責任を果たすべきだと思います。

5、パートナーに気仙沼市など被災地

 内閣府が所管するシビックフォースのホームページをみると、パートナーとして、行政機関では愛知県、三重県、宮城県気仙沼市、静岡県袋井市が名を連ねています。大震災の支援活動には、アクサ生命保険、アスクル、ローソンなど大手企業も大口の寄付をして援助しています。

 集まった寄付金は本来の目的に沿って大切に使ってほしいと思います。万が一にも貸し倒れの危険があるような運用は避けるべきです。シビックフォースは公益社団法人であって、代表者である大西健丞氏やPWJが意のままに利用できる団体ではないはずです。

 2017年度(2018年1月期)にPWJは債務超過に陥り、団体存亡の危機に見舞われました。その原因は何だったのか?そして債務超過を解消した2018年度に突如登場したシビックフォースからの3億円借り入れの目的は何だったのか?

 大西健丞代表理事やPWJいままで外部に向けてそうした事実や原因などを詳しく説明していないようです。

 その一方では、大西氏もPWJも保護犬活動ピースワンコの資金繰りが厳しく、借り入れに頼ら座を得ない状況だとして「ふるさと納税」などの寄付を募っています。

ピースワンコ部門の収支は黒字、稼ぎ柱

 その説明は本当なのでしょうか?財務諸表上はピースワンコ部門の収支は毎年度大幅な黒字を計上し、PWJの稼ぎ柱となっているはずです。災害支援活動を本来の任務とするシビックフォースからもお金を借りなければならないほど、ピースワンコがPWJの財産を食いつぶしているとは思えないのです。

 3億円を借りたPWJ、3億円を貸したシビックフォース、2つの団体の責任者として、大西健丞氏は支援者・支援団体のみならず、支援を受けることになっている被災地住民、そしてまた広く国民に対しても、しっかりと説明していく義務があると思います。

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