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広島県動物愛護センター④年間コスト試算18億円?カネ次第で達成可能な「殺処分ゼロ」より大事なこと

 前回紹介した2018年1月29日付「論点メモ」の話題を続けます。

 事実上の殺処分ゼロが実現したことで、広島県は新しい目標をたてようとしています。論点メモには以下の2つが掲げられています。

 ① 直近目標:2023年度(平成35年度)まで「事実上殺処分がない状態」を安定的に継続すること
 ② 中期目標:2033年度(平成45年度)までに「殺処分対象の犬猫がいない状態」を実現・継続すること

 現行の動物愛護管理推進計画の数値目標は、犬猫殺処分頭数を2006年度対比で2017年度50%減、2023年度75%減とするという内容です。

 この計画は大幅に前倒しで達成されていますので、それに代わるのが上記2つの目標というわけです。

 県の動物愛護管理推進協議会などの場で、2017年7月以降、幾度か関係者の意見も聞いて大筋了解されています。しかし、現時点ではまだ計画の中に盛り込まれていない非公式の目安のような扱いです。

 2013年9月に改正動物愛護管理法が施行され、都道府県が「殺処分が亡くなることを目指し、収容した犬猫の返還譲渡に努めなければならない」とする規定が追加されたことで、熊本市など一部の取り組みだった「殺処分ゼロ」への取り組みが全国へと瞬く間に広がっていきました。

 「事実上殺処分のない状態」は広島県でも2016年度に実現していますが、県が新しく中期的な目標として立てようとしている「殺処分対象の犬猫がいない状態」は、それとはまったく別物、次元が異なるくらい難易度の高いものです。

 その説明のため、「論点メモ」から少し離れ、別の文書を紹介します。

 会議の出席者は目にしたはずですが、筆者が情報公開制度を利用して県から入手した広島県動物愛護推進員等意見交換会の資料です。日付は2016年12月1日、広島県三原市にある県動物愛護センターで開催されました。

「(殺処分対象の犬猫の全頭引き取りは)根本的な解決になっておらず、当センターにとっては殺処分と同じ」

 その年の4月から犬を対象にNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、神石高原町、大西健丞代表理事)、8月からは猫を対象にNPO法人犬猫みなしご救援隊(広島市、中谷百里代表)が、殺処分対象として残された犬猫を全頭引き取る事業を始めました。

 しかし、野良犬・野良猫が減らない限り、捕獲しては収容、譲渡の繰り返しです。広島のようにNPOが引き取っても、終わりがなかなか見えてこないのです。

 炭酸ガスや薬物による殺処分とはことなるものの、譲渡が難しく、長い間、収容施設(シェルター)の囲いの中でだけ生かされ、死を待つ暮らしは動物にとってどんなものなのでしょう?

 意見交換会での説明は、少なくとも捕獲・収容に追われる動物愛護センターの立場からみれば、問題の解決からは程遠いという意味を込めての発言だったのでしょう。野良犬、野良猫を可能な限り減らし、新しい中期目標がいうように殺処分の対象として収容される犬猫自体をなくすことが、まさに動物愛護センターが目指すところなのです。

 広島県の動物愛護業務強化検討会報告(2014年9月)は、野良犬や野良猫の殺処分を止めて、終生飼養した場合のコストは年間18億円にもなる、という試算を示したこともあります。

 犬1頭の飼育に年間7万8千円、猫1頭で5万円程度の経費がかかる前提で、計算すると、収容した犬猫のうち年間3千頭が終生飼養に回るとして、経費はおよそ1億8千万円かかります。

 収容後10年程度生きると仮定すれば、10年後には単純計算してその10倍の18億円が必要になるというわけです。

 現在、犬だけで3千頭前後を収容しているとみられるPWJは年間10億円前後の費用を投じているようですから、大規模、集団で飼えばコストは県の試算ほどにはかからないのかもしれません。

しかし、年間1億円余りの予算で運営している県動物愛護センターの実情からすれば、とてつもなく大きな額の予算を確保しなければ実現しようのないプロジェクトです。

 県費を使う場合は、その効率を考えれば、野良犬・野良猫の終生飼養に使うより、繁殖のもとを断つため野良犬・野良猫自体を減らすことを優先すべきという議論も出てくることでしょう。

 この問題はさらに続けて紹介します。

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