資金繰りピンチ!認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン④「夢」の代償は赤字と負債の山

7、投資家村上世彰氏が尻ぬぐい

 PWJの財務諸表の注記のひとつ「借入金の増減内訳」をみると、PWJは2019年度中(2019年2月1日から2020年1月31日まで)に短期資金4億4千万円を借りて、5億8千万円を返済しています。

 借入先は「その他」扱いで団体名・個人名は伏せられていますが、2019年1月末時点で借りていた3億円をいったん返し、2020年1月末時点に残る2億5千万円を新たに借りたCivic Forceとの貸し借りなどがこの「その他」に入っているのでしょう。

 PWJはCivic Forceの貸借対照表をきれいに見せるため、Civic Forceの決算期(2019年8月期)末には3億円をいったん返済しているわけですが、返済するお金が足りない場合は、おそらくC&Iホールディングズなど旧村上ファンド系投資会社が一時的に資金を立て替えたりしたはずです。

 大西氏は投資家・村上世彰氏の助けなしにNPOの活動を続けられないくらい、どっぷりと世話になっているようです。

 PWJが債務超過に陥った後の2018年秋、大西氏とのかかわりを問う月刊情報誌FACTA(FACTA2018年12月号)の取材に応じて、村上世彰氏は「(2017年度は)足りない分を貸しただけ」と回答、18年度も赤字だったら「いくらでも貸しますよ」と述べています。

 Civic Force自体、村上氏の援助を受けてスタートしています。FACTA記事から村上氏の説明をそのまま引用すれば「村上財団などを通じた支援は、シビックフォースなども含めて2ケタ(億円)にはなりますから」という状況だったのです。

 Civic ForceによるPWJへの貸し付けも、一時返済の仕組みも含めて大西氏側と村上氏側が相談したうえで実行したものなのではないでしょうか。

 愛媛県上島町の豊島で15年近く前に大西氏が会社を作って妹と一緒に開発し、経営に失敗した高級リゾート「ヴィラ風の音」は、いったん人の手に渡ったあと、大西氏が代表を務めるNPO法人瀬戸内アートプラットフォームがPWJから資金を借りて買い戻し、そして2019年2月からは旧村上ファンド系の株式会社ATRAの所有になっています。

 大西兄妹が建設した「ヴィラ風の音」に資金を提供した企業のトップは「大西さんは夢を語るだけ」と振り返ります。大西氏が構想し、失敗したずさんな事業を投資家・村上世彰氏とその長女・絢氏の親子が尻ぬぐいしているわけです。

8、事業費の1割が役員報酬

 手元に公益社団法人Civic Forceの2020年度収支予算書があります。昨年9月から今年8月までの予算です。

 2019年度決算では、PWJへの3億円貸し付けの見返りとおもわれる利息収入約460万円が突如計上されていましたが、期末の貸借対照表に残高は記載せずPWJ向け融資を秘密にしたはずが、利息までは消せません。頭隠して尻隠さず、です。

 その利息収入は2020年度予算では「利息収入ゼロ」と書いてあります。1月末時点で2億5千万円を融資している利息ゼロとはならないはずです。

 Civic Forceは予算で想定していないPWJ向け融資をこっそり繰り返しているか、予定はしているのに収支予算書では記載しないでいることになります。いずれの場合も好ましいことではありません。

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 ところで、Civic Forceの予算は、わずか4億円弱となった資産を取り崩して年間7389万円の公益目的の事業を実施する計画ですが、事業のほとんどは業務委託(5304万円)です。そして驚いたことに、役員報酬は756万円で事業費の1割以上を占めます。給料手当648万円よりも多いのです。

 役員の報酬は公益目的事業会計とは別に法人会計にも別途143万円が計上されています。東日本大震災発生時に巨額の寄付金が集まり、被災地の若者への奨学金事業なども行っていましたが、資産の減少とともに役割も終えつつあるようでした。

 活動が細り、活動の実態も連携するNPOなどに移る中、役員報酬だけは金額を維持しているCivic Forceの姿には哀れさすら感じます。

 大西健丞氏は広島県神石高原町に住んで、その町に本部を置くPWJの代表理事をつとめ、その報酬(給与)として年間1440万~1600万円程度を受け取っていました。独立行政法人国際協力機構(JICA)の役員級の報酬です。

 彼はCivic Forceでも内閣府の分類では「常勤」の代表理事として週3日以上働いていることになっていますので、Civic Forceからも役員報酬を受け取っていることでしょう。

 Civic Forceを常勤とすれば、PWJ代表理事としては非常勤ということになりますが、受け取る報酬が勤務の実態に見合ったものかどうか、情報公開と検証が必要になるかもしれません。(続く)

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