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岡山県開示文書で読むピースワンコの諸問題②600頭の世話、最大8人(清掃除く)のみ〜黒字の寄付金収入はどこへ消える?

1、スタッフ退職のウワサ駆け巡る

 「スタッフが一斉に退職したらしい」
 
 岡山県高梁市にあるピースワンコ西山犬舎をめぐって、そんな噂が出回ったのは2020年6月のことです。

 噂の真偽を確かめるため、岡山県動物愛護センターは2020年6月23日に実施したピースワンコ西山犬舎への立ち入り検査を実施しました。

 噂は事実ではありませんでした。しかし、認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が運営するピースワンコ西山犬舎では、過密と判断される飼養環境が確認され、シェルターを検査した県職員はこれ以上、飼養頭数を増やさないよう指導しました。

 県が開示した行政文書にはその時の様子も詳細に記されています。

2、犬房1つに5~10頭同居
 

 ピースワンコ西山犬舎は、市有地のキャンプ場にある「ロッジ犬舎」と民有地にある「堆肥場跡地犬舎」の2か所に分散しています。

ロッジ犬舎は犬80頭に対し、職員数は最大4人(常時2~3人)でした。

 1犬房あたり1~2頭を飼養していて、首輪にリードを繋げっぱなしにした犬も数頭いました。「散歩に連れ出す際に首元を触らせないのでそのままにしている」と説明があったそうです。悪臭なし、犬の状態も良好で、室内も適温に保たれていて、愛護センターは「この犬舎については頭数に見合った職員数」と認定しました。

問題は堆肥場跡地犬舎でした。こちらには犬600頭が収容されていましたが、世話をする職員数は最大8人(常時5人)だったそうです。

3、過密解消が急務

 1犬房あたり飼養頭数は5~10頭でした。「取り扱いが難しい野犬を群れ単位で収容していたりするため一部の犬房で過密状態」と判断しました。

 ピースワンコの説明では、収容している犬は全頭登録を済ませ、狂犬病予防接種も済ませているという深刻でしたが、法定義務である犬の鑑札などの装着がされていませんでした。

 その点は「犬の気性等から装着が難しいとのことで、装着義務不履行の状態ではあるが、まずは登録・注射接種してもらうことが優先事項なので、その点については対応されている」とみて、収容頭数の削減やスタッフ増員の必要性に絞って指導したようです。

 「過密状態」と判断された堆肥場跡地犬舎では、常勤のスタッフ以外に午前中に委託業者が来て掃除しているものの、県動物愛護センターが調査した時点では「ドッグランに糞が多く転がっている状態の犬房が見受けられた」としています。

4、「数値規制適合せず」と危惧

 職員の勤務時間は午前8時から途中に休憩3時間をはさんで午後9時までということで、給餌は1日2回、清掃は隣の広島県庄原市東城地区から委託業者が来て午前中に1回清掃しているということです。

「この度の法改正で、頭数あたりの人員、確保するスペース等について数値的な基準が示されることにもなっており、第二種動物取扱業者もそれに準拠するかたちになると思うが、おそらく現状はその基準に適合しない」

「それを見据えたうえで、センターとしては、これ以上頭数を増やさず、今飼養管理している犬を上限として頭数を減らしていく方向で飼養環境を整えていく(人員を増やす、空いている犬房に移動させる等)のが先決であると考えていることを職員に伝え、■■にもその旨伝えてもらうよう指導した」(■部分は非開示情報)

 岡山県動物愛護センターは「スタッフ1人あたり犬の飼養頭数30頭以内」という目安を設けて動物取扱業者の監督、指導にあたっています。スタッフ数についての目安となる数値を具体的に掲げているのは全国でもおそらく岡山県だけでしょう。

5、現場の環境改善に投資を

 2021年6月に導入する環境省の数値規制案では、ピースワンコのような譲渡団体(第二種動物取扱業)の場合は、従業員1人あたり犬20頭が上限となり、現在の岡山県の指導基準よりも厳しくなります。

 ピースワンコ運営母体であるPWJは、こうした規制を受け入れる準備はできているのでしょうか?

 PWJのピースワンコ事業には「ふるさと納税」などを通じて多額の寄付金が集まっていて、PWJが公表する収支報告をみても毎年黒字を計上しています。2019年度の場合は2億5千万円もの黒字です。

 こうしたお金を犬の世話をするスタッフやトレーナーの確保にしっかり使っていればよかったのですが、ハローワーク求人情報などを見る限り、犬舎の業務に従事するスタッフの賃金は他の職場より安く、正規雇用も少ないようです。

 保護犬事業のもうけは一般管理費として吸い上げられて赤字だらけのPWJの他部門の投資に使われているようです。犬部門スタッフの待遇改善には、赤字放漫経営ともいうべきPWJの経営を立て直すことも急務のようです。

 それにしても、どうして広島県で保護された犬たちが岡山県にこれほどたくさん連れてこられているのでしょうか?

 次回は西山犬舎建設当初の状況を振り返ってみます。(続く)


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