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教えて大西さん、ピースワンコのこと⑤「引き取り数に上限」と報告に明記〜殺処分ゼロより大切になったものは?

1、神石高原町審査会に説明

 「月々の自治体からの犬の引取り数に上限を設ける」「頭数を一定以下に保つ」ーーピースワンコの2020年度寄付金活用計画書にはそのようにハッキリ書かれていました。

 NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が、「ふるさと納税」からNPOに交付金を出す町役場の2020年度事業審査会に提出した文書です。情報公開請求によってこの文書を入手しました。

 2019年度の寄付金活用報告書をみても事業内容として同じようなことが書かれています。

2、全頭引き取りを放棄

 広島県食品生活衛生課がピースワンコの宣伝の仕方を見直すようPWJに伝えていた理由がよくわかるような気がします。2019年度からすでに「殺処分対象の犬を全頭引き取る」という看板を投げ捨てていたワケです。従来との違いをもっとはっきり説明した方がいいと私も思います。

 広島県から広告宣伝のあり方への疑念を聞かされたのは、確か元朝日新聞記者で国内事業部部長としてあなたを補佐する大幹部の國田博史さんだと広島県の幹部職員から聞いています。

 大西さん、あなたは國田さんから広島県が伝えた疑念またはあたたかいアドバイスについて報告を受けていましたか?

 そして広告宣伝表現の内容を修正して、もっとわかりやすく正確にストレートに現在の運営方針を公表しようと思いませんでしたか?

3、巧妙な文章、誤認を誘発?

 

例えば期間を延長して目標(5億円)を上回る5億3113万円を集めた2019年度の「ふるさと納税」の募集サイトには「全頭引き取り」が終わったことを伝える文言はありません。シェルターの収容頭数を増やさない考えであることも触れられていないようです。
サイトを訪ねると、写真(上)のように殺処分対象の犬を全頭引き取って、広島県での犬殺処分ゼロを実現しているピースワンコという2016年度のイメージそのまま今日に至っていると勘違いしている人は結構多いと思います。

 そしてまた、「いまも殺処分対象の犬を全頭引き取っている」という印象を残しつつ、そのように明記することは避けているようです。嘘つき呼ばわりされないよう実に巧妙、意図的に文章が練られている感じがします。

 

 またインターネット広告業者gooddoのサイト(写真)ピースワンコは「全頭引き取り」という表現を慎重に避けつつ、「保護頭数および譲渡頭数を着実に伸ばしてきました。しかし、少しでも気を緩めたり、施設の拡充が遅れたりすれば、再び殺処分機の稼働を許してしまいます」と寄付を求めています。

 この文章からはピースワンコが引き取る頭数を制限していることなど、まったくわかりませんよね。

4、真実を正確にわかりやすく

 私は、PWJが町役場に事業計画のように「引き取る犬の数に上限を設けて、収容頭数を増やさない」と単純でわかりやすくピースワンコの方針を説明すべきだと思います。現状では、殺処分対象の犬を全頭引き取ると「勘違い」したり「誤認」したりする人が大勢いるのではないかと心配になります。

 日経にいた頃、記事でも広告でも誤認を誘発しそうな表現は厳に慎むよう教育を受けました。PWJ幹部國田氏が勤務していた朝日新聞でも同じだろうと思います。

 大西さん、あなたは昨年末、支援者に宛てて「大変厳しい状況が続いております」と訴える手紙を書きましたね。ふるさと納税サイトでも「収支のバランスは厳しく、借入金でなんとか運営資金を確保しているのが実情です」と説明しています。

5、犬事業収支は黒字、繰越金も

 でも決算書を見る限り、ピースワンコ事業は黒字続きで、かなりの額の貯金が溜まっていていいくらいです。

 もう一度、決算書の中身を見てみましょう。

 町役場の審査会に提出された2019年度ピースワンコ事業収支決算書によると、収支規模12億883万円で、支出の項目を見ると、「指定寄付金等のうち15%を上限にした一般管理費」として1億8134万円を取り除いた上でなおかつ次年度繰越金が7243万円ありました。

 ここでいう一般管理費の使いみちは定かではありませんが、いわばPWJが事業とは直接関係のない用途に使える枠とでも言えばいいのでしょうか、ピースワンコ運営団体であるPWJの稼ぎとして自由に使えるお金になっているはずです。

6、苦しいのは他部門

 つまり、ピースワンコ事業は赤字事業が多いPWJの財政を助ける孝行息子なのです。支援者に送った手紙がいう「大変厳しい状況」とはピースワンコのことなのか、PWJの赤字事業のことなのか、どちらでしょう?

 私は「苦しい」のは赤字部門を整理できないPWJのことなのに、「ピースワンコが苦しい」と間違った印象を与えているのではないかと危惧しています。大西さん、決算書をもとにわかりやすく説明していただけないものでしょうか?

 参考に記せば、2019年度支出のおもな内訳は、一般管理費や繰越金を別として、人件費は3億2206万円、広告宣伝費は1億7693万円、使用料・賃借料(家賃や会場費等)は1億4677万円、直接事業費(犬の医療費・養育費)は1億6634万円などとなっています。

7、周辺環境への配慮不可欠

 広告宣伝や賃料の大きさを考えると、移ろいやすい寄付金をあてにした事業の継続性が心配になります。広島県の作戦上、ピースワンコはこれまで譲渡不適格な犬の引き取り先になっていて、シェルターです最長10年以上も買い続けなければなりません。本来ならもっと自己資金をためて行うべきリスクの高い事業なのです。

 PWJは事業計画などでシェルター収容頭数を一定以下に保つことで「犬にとって望ましい環境を維持し、飼育スタッフの心身の健康にも配慮する。また、廃棄物の処理や排水など、周辺環境への影響も考えたシェルター運営に努め、周辺住民とのトラブルが起きないようにする」と説明しています。

 心がけよりも結果を詳しく伝えて欲しいと思います。

8、スタッフ不足改善必要

 岡山県動物愛護センターから最近も西山犬舎(岡山県高梁市)の過密な犬の飼養状態やスタッフ不足の解消を指導されたばかりです。

 糞尿処理の不徹底が町議会でも問題になった神石高原町スコラ犬舎の排水処理、浄化槽整備問題は解決しているのでしょうか?

 一般には理解しがたいくらいに数多くの前提条件付きの「殺処分ゼロ」にこだわるより、犬の適正飼養を優先するなら評価する声も出てくることでしょう。

 しかし、現実はどうでしょう?

 頭数を抑えることで収支の黒字を確実にして、一般管理費を他の部門に使っていこうとしているようにも見えます。本部上納金とでもいえばいいのでしょうか、この一般管理費をいつどんな事業に使おうと思っているのか詳しく知りたいところです。

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