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教えて大西さん、ピースワンコのこと㉑鑑札全頭装着まで業務を停止しましょう

1、高梁市部長から書面回答

 岡山県高梁市役所の赤木和久・市民生活部長からNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が同市内に置いているシェルター(ピースワンコ西山犬舎)の状況について先週末(28日午後)、書面で説明がありました。26日の市議会で森上昌生市議が指摘した「鑑札」の未装着問題等についてです。

 高梁市西部の旧備中町西山地区のレジャー施設跡地などにあるピースワンコ西山犬舎には合計700頭近い保護犬(6月下旬時点でおよそ680頭)が収容されています。

 市議会質疑応答を踏まえて私が再確認を求めたのは以下の2点です。

 確認事項① 25、26人という人数はどのような根拠に基づく情報でしょうか。

 回答 今回の答弁にあたり、ピースワンコジャパンの担当の方から西山犬舎に携わっているスタッフの人数として聞き取りしたものです。

 確認事項② 狂犬病予防法で義務付けられた鑑札を装着していないという問題は事実ですか。何割ぐらいが個体識別できる状態なのでしょうか。

 回答 ピースワンコジャパンの担当の方からの聞き取りによると、犬房1部屋に複数頭で管理しており、紛失や誤飲等のリスクもあるため、やむを得ずファイリングで管理し、装着はしていませんが、全頭にマイクロチップを装着し、カルテにより個体識別ができるようにしていると聞いています

2、大幅スタッフ増が必要に

 スタッフ数は現時点において法定の数値基準はありませんが、岡山県動物愛護センターが独自に運用する目安は1人あたり30頭(小型犬)で、6月に同センターが立ち入り調査した際は、十数人だったようです。

 23人以上のスタッフがいなければ、目安を満たせませんから、岡山県動物愛護センターはPWJに収容頭数の削減、スタッフ増員を指導したもようです。

「25、26人」なら県の目安を満たす水準ですが、口頭の説明によるもので裏付けとなる資料を確認しているわけではありません。新型コロナ禍の中、スタッフ数を10人前後増やすのは大変なことですが、本当に増員できているのか、PWJには根拠を示して説明をしてもらいたいと思います。

 来年6月に環境省がペット店など動物取扱業者の飼養状態を判定するための数値規制を導入すると、現時点での案によると、ピースワンコのような譲渡団体にも1人あたり15頭までという要件が適用されるため、スタッフ数は40人以上に増やさねばならなくなります。

3、全頭にマイクロチップを装着

 2016年に広島県の殺処分対象の犬を全頭引き取ると宣言したPWJは狂犬病予防法違反などたびたび問題を起こしたため、2019年1月からは「適正飼養」を優先して、動物愛護センターから引き取る犬の頭数に上限を設けて、全頭引き取りを断念しています。

 全頭引き取りを放棄したことは、一般の支援者にはまだ十分周知されておらず、広島県は寄付金を集めるにあたって広報のあり方を見直すようPWJを指導しています。

 新しく数値規制が導入されると、スタッフを大量増員しなければ、総数3千頭近い収容犬を維持することはできなくなります。「ふるさと納税」から交付金をもらうため神石高原町に提出した事業計画などによると、PWJ/ピースワンコは収容頭数をできれば減らしたいと考えているようです。高梁市の西山犬舎も岡山県が指導するように収容頭数削減が今後の1つの焦点になりそうです。

 狂犬病予防法第4条で義務付けられた鑑札の装着(3項「犬の所有者は、前項の鑑札をその犬に着けておかなければならない」)は、譲渡団体ならきちんと対応すべきものです。

4、身勝手な理由で法令軽視

 ピースワンコは高梁市に対し「全頭にマイクロチップを装着し、カルテにより個体識別ができるようにしている」と説明したようですが、マイクロチップの情報を読み出すには専用のリーダーが必要となり、誰でも情報を読み取れる鑑札とは異なります。鑑札の代わりとして扱うよう求める意見もありますが、法的な対応はなされていません。

 つまり、狂犬病予防法によれば、マイクロチップ等で個体情報を確認することが可能であっても鑑札装着義務を免れることはできないことは明白で、厚生労働省も鑑札を必ず装着させるよう呼び掛けています。

 ピースワンコは、「犬房1部屋に複数頭で管理しており、紛失や誤飲等のリスクもあるため、やむを得ずファイリングで管理している」と弁明しているようですが、法令違反状態を一刻も早く解消する必要があるでしょう。

 収容している保護犬を散歩させるためには首輪も必要でしょう。紛失や誤飲のリスクはどの飼い主にも共通で、ピースワンコだけその義務を履行しなくていい理由にはなりません。この団体にはよくあることですが、自己中心的で、身勝手な理屈だと思います。

 ふるさと納税による寄付集めに絶大な効果がある「殺処分ゼロ」の実現に固執するあまり、譲渡適性を欠く犬まで強引に引き出してきたため、首輪を取り付けるのも難しい犬たちを大量に抱えているのでしょうか。

 しかし、法令順守もできない形での譲渡活動は持続可能とは言いがたいでしょう。現に広島県は譲渡適性のない犬の引き渡しを今年2月から中止し、PWJもその方針を黙って受け入れています。

5、従業員向けに研修実施を

 

広島県動物愛護センターは、2017年12月末、神石高原町にあるピースワンコのシェルターを立ち入り調査して、狂犬病予防接種や鑑札の装着を徹底するよう指導しました。翌2018年には広島県警から大西健丞代表理事らの自宅やPWJ事務所なども家宅捜索を受け、狂犬病予防法で書類送検されています。

 広島県が動物愛護センターからの犬の引き渡しを一時中止したため、大西健丞代表は急遽再発防止策をまとめて県知事に提出し、引き渡しを再開してもらった経緯もあります。

 マイクロチップは鑑札の代わりになりえない現状を筆者が伝えたところ、高梁市の赤木部長は「しかるべく対応していきたい」とおっしゃいました。近々、PWJ/ピースワンコに何らかの申し入れを行うことでしょう。

 鑑札の装着は、基本中の基本であることは、動物愛護のプロフェッショナルたちの常識なのですが、PWJ/ピースワンコの幹部・従業員たちのコンプライアンス意識はきわめて低いようです。一度、動物愛護専門家や保健所、警察の幹部を招いて、従業員向けの研修を開いてはいかがでしょう?

 地元の神石高原町から犬保護事業などの委託も受けているはずですが、鑑札の全頭装着が完了するまで、犬の譲渡や保護にかかわる業務を停止することも考えて欲しいですね。

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