役員等に特別の利益を与えないこと~NPO法人ピースウィンズ・ジャパンの認定審査資料を読む③
■認定審査のためのチェックシート
内閣府が定めた「認定基準等チェック表」は様々な基準に適合するかどうかを一つずつ確認していくためのシートです。役員等に対する不当な利益提供の有無をチェックするのは「第4表」で、イ~ニまで4つの基準の2番目、「ロ」には以下のようなことが書かれてあります。
役員等には社員、職員、寄付者やその配偶者や三親等以内の親族なども入ります。前回紹介した大西健丞代表理事夫人の大西純子氏個人やその会社との関りは「役務の提供」に関する取引でした。
同じ「役務の提供」の欄には、PWJの非常勤理事の2人、すなわち桑名恵氏と渋谷健司氏との取引があります。
■理事に「提言」を外注、「海外業務」を委託
桑名氏は認定更新申請書類によると、2011年8月にPWJ理事となり、2016年2月に近畿大学国際学部准教授に就任するなど国際援助分野の研究者です。2016年4月から2018年1月までの間に294万円を「海外事業業務委託費」としてPWJが支払っています。
渋谷氏は2014年4月に理事に就任していて、2019年4月からは世界保健機関(WHO)事務局長アドバイザーを務める公衆衛生の研究者です。元東京大学教授、現在は英キングス・カレッジの教授で、新型コロナ問題について日本のメディアにも時々登場していますが、PWJは2018年3月から2019年4月までの1年余りの間に602万円ものお金を支払っています。
支払いの名目は「ヘルス政策提言事業外注費」です。渋谷氏個人に対する支払いです。一般のサラリーマンの年収くらいのまとまった金額ですが、どのような政策提言だったのか問い合わせても渋谷氏やPWJからの回答はありません。
■身内優先にならぬよう複数候補で比較を
桑名氏、渋谷氏ともに「理事」という役職に対する報酬は「ゼロ」です。このような業務委託や外注を引き受ける際の見返り(金額)が公正かどうかはPWJの理事会でも議論をしていることと思いますが、桑名氏や渋谷氏以外にもそうした業務を請け負うことができる専門家がいなかったのでしょうか?
大西健丞代表理事夫人の大西純子氏が経営する会社が、大西氏が理事長を務める別のNPOが所有するゲストハウスの管理を2016年7月から2017年4月までの間引き受け、その施設維持管理の費用として500万円を受け取っていたことを知った時にも感じたことですが、事業の発注が身内優先にならないよう複数の候補を競わせる方式を導入することが好ましいと思います。
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