広島県の犬猫保護活動を大きく変えてほしい~尾道・島嶼部にスペイクリニック
殺処分予備軍をゼロに
私の郷里・広島県尾道市で動物保護活動をしているNPO法人西日本アニマルアシスト(NAA、箱崎千鶴理事長)がTNR専門動物病院(スペイクリニック)開業のためのクラウドファンディングを実施していて、最近、私も寄付しました。対象は野良猫が中心ですが、大量の「殺処分予備軍」を生み出す前に一般家庭で飼う犬や猫も不妊去勢手術を徹底して欲しいと願うばかりです。
尾道市は対岸の向島、さらにその南の因島など島嶼部も抱えていています。島嶼部は温暖で食べ物も豊富で、野良犬や野良猫にとっては天国のような場所のようです。広島県動物愛護センターに収容される犬猫の多くは、この地域で捕獲、保護されています。
一般の動物病院もありますが、感染症のキャリアになっている可能性が高い野良の犬猫の診療や手術は敬遠され、その結果、野良犬、野良猫の繁殖に捕獲、保護が追い付かないという状態が続いていたのです。
この2年近く、認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)の動物愛護活動などを集中的に分析してみて、広島県の動物愛護のいびつな姿を思い知らされました。
全頭引き取りは一時しのぎ
広島県では2016年度からPWJの犬保護事業部門であるピースワンコによる県内の動物愛護センターで殺処分対象になった犬の「全頭引き取り」、犬猫みなしご救援隊(広島市)による猫の「全頭引き取り」によって、「殺処分ゼロ」が実現したことになっています。
しかし、この「殺処分ゼロ」がシェルターへの隔離に留まる限り、それは引き取るピースワンコや救援隊の収容環境にも大きな重圧となります。ピースワンコは全頭引き取り開始の2年後の2018年には狂犬病予防法違反等で県警の捜査を受けたほど、引き取った犬の受け入れ態勢が十分には整っていませんでした。
予防接種や登録の遅れを解消したことこともあって、ピースワンコがアナウンスしたように最終的には不起訴処分となりました。しかし、この事件を契機にあまり知られていませんが、ピースワンコは2019年度からは毎月の引き取り頭数に上限を設定するよう軌道修正しています。最近は引き取りより譲渡活動に力を入れ、収容頭数を大きく減らすことを模索しているようです。
殺処分ゼロのため動物愛護センターに収容されている犬猫をまとめて引き取ることは、一時しのぎの出口対策として一定の効果はあったかもしれません。しかし、野良犬・野良猫が繁殖、つまり殺処分予備軍の再生産を繰り返すという問題への解決にはなりません。野良の犬猫が多い地域で、いつでも手ごろな料金で不妊去勢手術を行えるクリニックの登場が待ち望まれていたわけです。
寄付先を選ぶための目安は?
ところで、犬猫保護のための寄付金集め、クラウドファンディングを実施する団体や個人が激増中です。今回のNAAのクラウドファンディングはready forで行われていますが、犬猫の保護活動に関係した寄付集めだけでも相当数のプロジェクトが進行中で、なかには「こんなことで寄付を募っていいんだろうか」と思えるようなプロジェクトもあったりします。
プロジェクトの内容など最小限の情報は寄付者にも伝わる仕組みになっていますが、果たしてその通りに事業が進むのだろうか、それをどうやって検証するのだろうか、疑問点は次から次へと浮かんできます。NAAの場合はNPO法人なので、収支など活動報告はインターネット上でも公開されていて、その内容を読むことはできますが、財務諸表だけで動物愛護活動の内容を知ることができるわけではありません。
私は昨年夏、理事長さんの考え方を聞いて、施設を見学させてもらったことがあり、NAAの場合は多分、計画通りに集まったお金を使ってくれるだろうと確信しました。しかし、見知らぬ団体や個人の場合はどのように判断すればいいのか、その手掛かりとなるものが必要です。
・施設を公開しているかどうか(見学を受け入れているかどうか)
・連絡先を公開し、相談窓口を設けているかどうか
・収容頭数、スタッフ数を公開しているかどうか
・譲渡にあたって不妊・去勢を徹底しているかどうか
・収容中の死亡動物をどのように扱っているか
数え上げればきりがありませんし、欧米の保護収容施設(シェルター)の基準をもとにすればもっともっと厳しい要件が課されるはずです。寄付をしてみて、寄付するときにどんなところをチェックしておくべきか、そんな基準や目安が必要だと思いました。これから専門家の意見も聞いて、寄付する前にチェックすべき項目リストなど作ってみたいと思います。
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