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ファクト・チェック③大西健丞さん、その話、本当ですか?
▶︎ 「殺処分ゼロ」をあきらめないために、重ねてご支援をお願い申し上げます
そんな書き出しの手紙が筆者の手元に電子メールで回覧されてきたのは12月後半のことでした。NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、神石高原町)の大西健丞代表理事が、保護犬事業(ピースワンコ)の支援者たちに送ったもののようです。
■支援者への手紙
▶私は昨年(注、2018年)末もプロジェクトの危機を訴え、ご支援のお願いを申し上げました。今年(注、2019年)も皆さまにこのようなお手紙を差し上げるのは心苦しいことです。しかし、現実には大変厳しい状況が続いております
どのように厳しいのか、手紙自体には収支状況などの説明はありません。理屈よりも情に訴えて寄付を募る、いわば泣き落とし戦術です。
泣き落としによくあるパターンは、自分たちは正しいことに取り組んでいるのに無理解な世間から迫害、攻撃を受けている、この逆境を乗り越えるためにあなたの力を少しでもいいから貸して欲しい、という訴え方です。
大西氏はかつて、アフガニスタン復興支援国際会議への出席問題で外務省や鈴木宗男代議士(当時)と対立した時にもこわもての政治家に虐められるNGOの若者という構図を利用して、世論を味方につけました。
ワンパターンですが、すべては計算づくでしょう。
▶昨年来、私たちは不本意な批判や報道にさらされ、それを信じて私たちの活動から遠ざかる方もいらっしゃいました。事業資金が減り、私は個人として返済の保証をしながら、常識では非営利団体が行わないような借り入れもして、必死に頑張ってきました
こうした報道批判もお決まりのパターンです。
PWJはファンドレイザーと呼ばれる専門家や広報コンサルタントからも知恵を借りて、いかに多くの寄付を集めるかを熱心に研究しています。「訴求力」の強いキーワードや立ち位置を巧妙に操っているのです。
そして、ボーナスで懐具合が豊かになり、ふだんより寄付が集まりやすい12月に集中してこうしたキャンペーンを繰り広げるのです。会社なら販売促進月間ですね。寄付集めにかける費用はかなりの額です。
それにしても、PWJが抱える負債への「個人保証」の問題まで持ち出すとは、資金繰りによほど切羽詰まった事情でもあるのでしょうか?今回はその点を含めて検証します。
「大変厳しい状況」とはどんな状態なのでしょう?
まず思い浮かぶのはPWJが2017年度決算(2018年1月期)で債務超過に陥った事実です。日本最大級のNPOとはいえ、その決算内容をいちいち報道する新聞やテレビはありませんから、ふだんPWJに関心を持っていても気づかない人が多かったようです。
■2017年度は債務超過だった
債務超過は企業や団体の存亡にかかわる深刻な問題です。よほど大胆なリストラ計画でもまとまらない限り、一般の金融機関は融資を渋ります。借入金が増え続けているPWJの経営はたちどころに行き詰ってしまうのです。
大西氏が「常識では非営利団体が行わない」という借入金は、2018年度末(2019年1月末)現在で11億6952万円あります。
その危機を救ったのが2017年度は投資家の村上世彰氏の傘下にある企業、2018年度にはさらに大西健丞氏が代表理事を務めている公益社団法人Civic Force(東京・渋谷)も3億円を融資したことがわかっています。
後者、Civic Forceは公益法人であり、お金の使いみちは厳しく制限されていて、いくらトップが同一人物(大西健丞氏)であっても簡単には融資できないはずです。
貸し倒れ防止のために貸し手が抵当権などを設定する際には、借り手も同じ人物が代表理事を務めていては「利益相反」が生じるため、コンプライアンス上は避けるべき取引なのです。
そして、収入といえば寄付金や助成金ばかりというNPOが、これだけのお金をいったいどうやって返していくのかという問題も抱えています。
大西氏は手紙の中で「私は個人として返済の保証をしながら」とPWJ借入金の返済を個人として保証したことを明らかにしています。
保証はしても、大西氏に返済能力が実際にあるかどうかは疑問です。連帯保証額は2017年度決算で7億6380万円にものぼっていたからです。
■連帯保証は消えたのか?
2018年度決算ではどうでしょう?そう思って調べてみたのですが、公表資料からは大西氏の連帯保証に関する情報は消えていました。
手紙には書いたものの、借入金の連帯保証は当人にとって大きなストレスとなりますから、なんらかの方法ですでに保証責任を免れていたのでしょうか?大西氏に説明して欲しいですね。
PWJのディスクロージャーの仕方は頻繁に変わります。単に記載から漏れただけなのか、それとも保証責任を免れたのか、いまの時点では不明です。
繰り返しになりますが、大西氏やPWJの説明は、肝心な点について話題をそらしたり、ぼかしたりすることが多いのです。寄付を考えている方々にも、PWJのそうした習性をよく知って、実際のお金の使われ方を調べてみて欲しいと思います。
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それにしてもこうした「厳しい状況」はなぜ生まれたのでしょう。次回は、その問題を取り上げようと思います。