マジパン細工を続けている理由③
こんにちは、うめ木です。
こちらは前回に続く内容となります。
ふとしたきっかけでマジパン細工を始め、コンテストに出品したり、お仕事として制作をさせてもらいました。
それでもまだこの時は、マジパン細工は自分の仕事の幅を広げる為のひとつの方法でしかありませんでした。
周りから評価をもらえることであっても、プライベートでやるほどに好きなことではなかったのです。
素材の性質ゆえの難しさ
マジパンペーストという製菓材料は、粘土のようであると例えられますが(私も簡単に説明する為にそのように言うこともあります)実際には全然違う性質を持っています。
粒子の大きさ
まず、粒子の大きさが違います。
粘土の粒子の大きさは一般的に粒径が0.005mm以下とされていますが、それに対してマジパンペーストは0.02〜0.03mmほどで、時々粗い粒子のものが混ざります。
高品質なマジパンペーストほど、アーモンドが細かく挽かれていると言われています(細工用に関して)
よって、テクスチャの滑らかさに違いがあります。
粘性の低さ
また、マジパンペーストは、粘土の特徴である粘性があまりありません。
粘性の高さは温度にも依存しますが、最大限に引き出したとしても、それなりに細かいパーツが作れる程度のものです。
引っ張った時にびよーんと伸びるような性質はありません。
粘土のように彫ったり盛ったりする造形方法がしにくく(接合面が綺麗になじまない)粘土造形の為の知識は、マジパン細工にそのまま落とし込めるものではありません。
強度の低さ
そして、更に取り扱いを難しくさせているのがマジパンペーストの強度の低さです。
乾燥させることである程度固まりますが、固まった状態でも手でポキっと折れたりします。
その上、温度や湿度を高めることで柔らかさが戻ってしまいます。
一筋縄ではいかない造形方法、固めた後も強度が低く、それさえも環境を整えねば保てない、難しい素材だと思います。
その打開策となるような書籍を見つけることもできず、私は自分のマジパン細工の可能性に限界を感じていました。
そしてその表現の幅の狭さが理由で、魅力を感じなくなっていました。
マジパン細工にハマった瞬間
「-”その瞬間”が有るか、無いかだ。」
仕事としてのみマジパンに触れていた私に転機が訪れました。
それは、当時となりのトトロに大ハマりしていた娘の誕生日に作ったメイちゃんのケーキトッパーでした。
このとき初めて、丸+丸+丸+丸…のような造形から脱し、頭の中のイメージに添って自由に作れた気がしました。
顔の形も表情も、手足の作り方、髪の毛の付け方…メイちゃんには私の作り方初挑戦がたくさん詰まっています。
初めて制作中にドーパミンがドバドバ出たマジパン細工でもあります笑
下手くそだったからマジパン細工の可能性に限界を感じていたのに
下手くそなりに続けていたらその可能性が広がっていくことを知ったのです。
今まで無理だろうと諦めていたあんな造形もこんな造形も、きっと出来るんじゃないかと思えたのです。
-”それが、私がマジパン細工にハマった瞬間でした。
難しさゆえの面白さ
マジパン細工の可能性が開けたような気がしたとはいえ、その難しさが無くなったわけではありません。
むしろ壁はどんどん高くなる、という感じがします。
ひとつ扉が開けたような感覚があっても、すぐにまた新しい課題が見付かって、その終わりはまだ見えません。
作るたびに難しいなと思います、全然満足できません。
きっと容易にイメージ通りの制作が出来ていたら、こんなに長くマジパン細工に取り組むことはなかったでしょう。
難しくて自分の技術に満足できない…でも時々ちょっと出来た気がする瞬間があるから、これまで続けてこれたのだと思っています。
さいごに
以前マジパンの話をできる人といえば職場の中に収まっていましたが、ここ数年はSNSを通してマジパンについて交流する機会が増えました。
マジパン細工は身近な職場の先輩に教わって始める人も多いので、違うルーツを持つ方と技法について議論を交わすと、やり方が違うと気付くことも多々あります。
どれも勉強になる話ばかりです。
また、同じことに興味関心を持っている人との繋がりはモチベーションの維持に役立ちますし、
素晴らしい作品を見ることに加えて、その作品が生まれた背景を直接聞けることは非常に良い刺激になります。
マジパン細工にハマった時の熱意を今も持ち続けていられるのは、このnoteを読んでくださるような方々のおかげです。
本当にありがとうございます。
これからも、自分自身が楽しみながらマジパン細工を続けていきたいと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。
うめ木