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なぜ私は炎環賞がとれないのか②過去10年炎環賞選考委員決定力分析

身も蓋もない言い方だが、前回記事の炎環賞選考分析では、八方美人のような受賞条件が出てしまい、これさえやればかなり有利になるというような、決定的な条件は導き出せなかった。何を良しとするかがそれぞれ違う選考委員の支持を集めるには、第一に失点しないことが求められてしまう。ひとりに強烈に響く作品では受賞ができないというつもりはないが、その上で結局残りの選考委員に少なくとも可と言わせる安定感が作品に求められるということだ。もっともそれができても、ほとんどの場合は広く票を集めた作品には太刀打ちできないだろう。それを覆して受賞に至るとすれば、それは作品というより、作品に惚れ込んだ選考委員の力によるところが大きいのではないだろうか。
本稿では過去10年を振り返って、選考委員の力の偏りを調べ、どの選考委員の選を目指せば受賞に近くなるかを分析する。(敬称略)

まずは、過去10年すべてで選者を務めたのは、石寒太、丹間美智子、一ノ木文子、齋藤朝比古、市ノ瀬遙の五名、在職9年が丑山霞外、8年が関根誠子、7年は柏柳明子、近恵、そして田島健一4年と続く。
次に、過去10年分の炎環賞受賞作(みらい賞は正賞ではないため除外)に各選者が何点いれたか集計すると、その合計は次のようになる。
斎藤朝比古:19点
石寒太  :18点
一ノ木文子:16点
丹間美智子:15点
丑山霞外 :12点
関根誠子 :11点
市ノ瀬遙 :10点
柏柳明子 :11点
近恵   :11点
田島健一 :1点
僅か1点だが、石寒太より斎藤朝比古の方が、受賞作決定力が高いという結果になった。そして受賞一作品当たりの点数も齋藤朝比古がトップの2.11点(2位 石寒太2.00点)を叩きだしている。実際、過去10年分の受賞作中、7回で本選以上の選を与えており、特選を与えた作品が炎環賞を受賞した年も4回(同率1位 石寒太)ある。
つまり、石寒太特選、齋藤朝比古特選になる作品を作ることが炎環賞受賞への一番の近道と言えるのだ。特に近年は主宰特選が受賞に結びつく傾向が強まっている。さらに本選で柏柳明子、丹間美智子、一ノ木文子本選以上を獲得できれば盤石だろう。反対に、在職年数が少ないためまだ不正確だが、統計上は田島健一の本選・特選を獲得した場合、炎環賞を獲ることは非常に厳しいといわざるをえない。データ上はね!

私は過去10年で5回炎環賞に応募し、その全てで、10位以内という好成績を収めているが、齋藤朝比古選を獲得したのは2020年(みらい賞獲得時)の予選1点のみ、石寒太選を獲得したのは全て予選で、2021年、2020年、2018年の3点のみである。反対に、田島健一在職4年のうち2回特選を獲得してをり(残りの二回は私が応募していなかった)統計の正しさを示す一例になってしまっている。

ここまではっきり数字として出るとは思っていなかったが、このことは、集計をとる前から何となくわかっていた。寒太・朝比古選の本選以上を獲ることを目指せばいいのだが、今まで別段作り方を変えたりしてこなかったのだ。選が欲しくないわけではないが、詠みたいことを詠むので、向こうから採りに来てほしいみたいな。
今回は思い立って、10年分の選考データをまとめるのは面白そうなので集計してみたが、人に合わせて句作するのは面白くないので、次回も好き勝手作るつもりでいる。その上で、寒太先生と朝比古さんを振り向かせることができればそれは最高に面白いといえるだろう。尚、次回の田島さんの特選評ももちろん誰にも渡すつもりはない。読んで一番面白いし、見つけてもらった感がやばい。もし、叶うなら劣勢も点差もひっくり返して、田島さんしか点をいれてない作品が炎環賞を獲るのを見てみたい。
求めるのが受賞という結果のみなら、もう少し割り切って方針転換できるんだけど、フィルタで濾されるよりは破りたいみたいな気持ちを強くしてしまった。

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