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生物の共生の関係論 (光合成細菌シリーズ 3/4)
共生
共生とは、複数種の生物が相互関係を持ちながら同所的に生活する現象である。自然界の生物種間で共生する生物のうち、体が大きい方を宿主 (しゅくしゅ)、体が小さい方を共生者といい、宿主と共生者とが出会い、共生関係になる過程を伝播と呼ぶ。また、卵などを通じて親から共生関係を受け継ぐ場合を垂直伝播、環境を介して受け継ぐ場合を水平伝播という。また、自然界の共生関係とは別に環境社会学の視点においては、自然界と人間界での共生という考え方もある。
元々、中世期ヨーロッパの生物学において共生とは、種間関係の中でも特殊なものと考えられがちであった。これには、トマス・ホッブズの「万人の万人に対する闘争」という有名なフレーズが端的に示すように、社会的自然状態を競争関係と捉えることが受け入れられやすいという社会思想背景があったからであるともいわれている。日本でも1980年代までの生態学者の書いた教科書では、影響しあう2種の生物の種間関係を、捕食被食関係、競争関係、共生関係、寄生関係の4つのパターンに分類し、これらのうちあくまでも主流とみなすべきは捕食被食関係と競争関係であり、共生や寄生はあくまでも例外的なものとして考え、重視するべきではないと書かれたものもあった。
1,双利共生
双方が利益を得る共生。
2,片利共生
片方のみが利益を得る共生。
3,中立
双方が利益を得ず、害も被らない共生。
4,寄生
片方のみが利益を得、片方が害を被る共生。
5,片害共生
片方のみが害を被る共生。
6,競争
双方が害を被る共生。
これら相互の関係性には明確な境界はない。同じ生物の組み合わせでも時間的に利害関係が変化したり、環境要因の影響を受けて関係が変わったりすることもある。また、同一の現象であっても着目する時間や空間のスケールによって害とも益とも見なされる場合がある。共生は、利害関係によって単純に分類できるものではなく、また、単純に相利共生だけが共生ではない。利害関係は可変的であったり観察困難だったりするため、利害関係は考慮せず、複数種の生物が相互関係を持ちつつ同所的に生活している状態すべてを共生としている。
共生者の生息している場所に基づく共生について分類すると、以下4通りに分類できる。
1,体外共生
宿主の表面や消化管や体表のくぼみ部分に共生者が生息する共生。
2,体内共生
宿主の内部に共生者が生息する共生。
3,細胞外共生
宿主の細胞外に共生者が生息する共生。
4,細胞内共生
宿主の細胞内に共生者が生息する共生。後述するアブラムシとブフネラ(共生細菌)の例では、細菌はアブラムシの細胞内に生息している。細胞内共生微生物には、単独では培養不能なものが多く、遺伝子の一部が宿主ゲノムに移行していることも多い。現在では、真核生物の細胞内にあるミトコンドリアや葉緑体は、細胞内共生細菌が起源であるという細胞内共生説が有力である。
動物と動物の共生の例
カクレクマノミとイソギンチャク
魚類であるクマノミと、刺胞動物であるイソギンチャクの共生関係は有名である。イソギンチャクの触手には、異物に触れると毒針を発射する「刺胞」という細胞が無数にあり、これで魚などを麻痺させて捕食している。ところがクマノミの体表には特殊な粘液が分泌され、イソギンチャクの刺胞は反応しない。このためクマノミは大型イソギンチャクの周囲を棲みかにして外敵から身を守ることができる。一方、イソギンチャクがこの関係からどの様な利益を得ているかはっきりせず、この関係は片利共生とみられる。一説には、イソギンチャクの触手の間のゴミをクマノミが食べる、またクマノミの食べ残しをイソギンチャクが得る、イソギンチャクの天敵チョウチョウウオをクマノミが追い払うといった相利共生とされることもある。また一説には、イソギンチャクの触手の中に藻類が共生しており、クマノミが近くにいることによって触手が伸び、藻類の光合成が盛んになるという3種間による壮大な共生を説明しているものもある。
ヤドカリやカニの中には、小型のイソギンチャクをはさみや貝殻につけて身を守る種類がある。ヤドカリは自分の体が大きくなると貝殻を替えなければならないが、そのときイソギンチャクは自ら移動したり、ヤドカリがはさみで剥がして移し替えたりする。さらには、お互いに食物のやりとりをすることもある。
動物と菌類の共生の例
養菌性キクイムシ、別名アンブロシアビートルは、材中に掘った坑道の中に植えつけた共生菌類であるアンブロシア菌のみを食べて生活するキクイムシの一群である。成虫の体には特定の菌を運搬するための構造があり、材内で羽化した新成虫は、育った坑道内のアンブロシア菌を身につけて材を脱出し、新たな坑道を掘ってはそこに菌を植え付けて次世代の餌とする。
動物と原核生物の共生の例
アブラムシとその細胞内で生息するブフネラという細菌は、非常に強い相利共生の関係にある。アブラムシが主食としている植物の師管液(しかんえき)には、グルタミンとアスパラギン以外の必須アミノ酸はほとんど含まれていない。本来ならば、アブラムシはこれだけで生命を維持することは不可能なはずである。しかし、アブラムシの細胞内の細菌のブフネラが、これら2つのアミノ酸を基に他のアミノ酸を合成し、アブラムシの細胞内に供給しているため、師管液のみで必要な栄養を得ることができる。アブラムシはブフネラ無しでは生命を維持することができない一方で、ブフネラは自らの生命を維持するための遺伝子の多くを失っており、アブラムシの細胞内でしか分裂・増殖することができない。この共生関係は、はるか2億年にわたり世代間で引き継がれてきており、このような共生がなされる以前のブフネラの祖先は、大腸菌の仲間であったと考えられている。
菌類と共生について
菌類とは、元来、キノコのことを指し、近代になって「菌類」、つまりキノコに似ていると考えられている生物の雑多なグループを指すようになった。なお、漢字「菌」の訓読みは「きのこ」である。
菌類には、互いに類縁関係の乏しい多くの系統が含まれる。その中で代表的なのはキノコ・カビ・酵母などを含む真菌で、菌・菌類という言葉で真菌を指すこともある。
さらに、後になって発見された微小な生物であるBacteria(バクテリア)にも「細菌」という単語が当てられ、一般に耳にする結核菌や乳酸菌などの○○菌と呼ばれるものの殆どは細菌に属する。また、1990年になってBacteriaから切り離されたアーキア(Archaea)にも「古細菌」という単語が当てられていて、これも同様に狭義の菌類でも細菌でもない独立した別の生物である。
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