菌と農業 ～山川プログラムとPSB～ （光合成細菌シリーズ　４／４）

はじめに

植物とは、草や木などのように、根があって場所が固定されて生きているような生物のことである。日本では近世まで、そもそも「動物」や「植物」という概念は無く、「植物」という用語ではなく草、竹、木、花などの言葉が使われていた。ヨーロッパでは、16世紀に顕微鏡が発明され、生物にきわめて微小なものもあることが知られるにつれ、植物についても様々な分類分けが定義されてきた。その過程を経て現在では、生物全体が細菌、古細菌、真核生物の3つのドメインに分かれるとし、植物の分類は真核生物という大きなカテゴリの中に含まれるものとされ、やがてさらに細かい分類分けがされてきた。
生態系において植物は、大きな部分を占めその役割は極めて大きい。緑藻を含む緑色植物は、光合成によって有機物を生産する生産者であるが、これ以外の一次生産者は化学合成を行う一部の細菌類のみであり、地球上のほとんどの有機物生産は植物によって行われている。植物によって生産された有機物は、捕食-被食関係などを通じて一次消費者である草食動物、二次・三次消費者である肉食動物、そしてそれらの分解者へと繋がっていき、食物連鎖を形成する。また、植物は各地の気候などによって特徴的な植生を形成し、それを基盤とした生物群系を各地に成立させる。そして、植物の光合成は、大気中の酸素濃度および二酸化炭素濃度を安定化させることに大きく貢献している。

人類は雑食であり、植物は人類の食糧源としても重要である。植物の葉・茎・根・果実は、穀物・野菜・果物としてそのままあるいは調理加工して摂取される。人類は当初、採集によって植物性食糧を確保していたものの、約10,000年前に一部の植物の栽培が始まり、農業によって植物性食糧が大量に生産されるようになった。世界で食用に栽培されている植物は、およそ2,300種ほどとされている。また、植物を飼料として家畜を飼育することにより、動物性食品の大量供給も行われている。直接的な食糧だけでなく、糖や蜜といった甘味料や、油糧作物から取れる植物油も重要である。植物からはタバコやコーヒー、茶といった嗜好品も生産され、換金作物として広く栽培されている。微生物を利用した発酵食品も各種存在し、穀物や果物からは、ビールやワインといった酒も作られる。植物の中には薬効を示すものがあり、人類は有史以前から健康のために薬用植物を摂取し、また、そこから薬を製造して患者に投与してきた。植物由来の医薬品は、現代でも盛んに使用され、さらに植物の薬効成分の研究によってあらたな薬が開発されることもある。

分類階級
生物学・分類学において階級は、リンネ式階層分類において分類群の階層的位置を表す。
国際藻類・菌類・植物命名規約 (ICN)では、基本的な分類階級を一次ランク（principal ranks）と呼び、これには、界、門、綱、目、科、属、種の7つの階級があり、例えば、ヒト科は、哺乳類サル目（霊長類）の分類群のひとつで、ヒト属、チンパンジー属、ゴリラ属を含むヒト亜科とオランウータン亜科で構成される。人の分類は、

ドメイン：真核生物、界：動物界、門：脊索動物門、綱：哺乳綱、目：霊長目、科：ヒト科、属：ヒト、種：ヒト　

である。

なお、脊索動物とは、魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類など背骨（脊椎）をもつ動物を含んだ脊椎動物と、それと近縁な動物群であるナメクジウオなどの頭索動物とホヤなどの尾索動物を合わせたものである。

植物であれば、
例えばローズマリーは、

ドメイン：真核生物、界：植物界、門：被子植物門、綱：双子葉植物網、目：シソ目、科：シソ科、属：ローズマリー属、種：オフィシナリス　

例えば大根は、

ドメイン：真核生物、界：植物界、門：階級なし、綱：階級なし、目：アブラナ目、科：アブラナ科、属：ダイコン、種：ダイコン　

である。

耕種農業
耕種農業とは、米、麦、野菜等の生産活動を行う農業をいう。生産物分類は複数あるが、主に耕種農業の生産物は穀物、野菜、ナッツなどの果実および堅果、脂肪種子および脂肪性果実、香辛料植物および香料作物、豆類、糖料作物、その他の植物原料などに分類される。以下に例をあげる。

穀物
コムギ、トウモロコシ、コメ、モロコシ、オオムギ、ライムギ、オート麦、雑穀

脂肪種子および脂肪性果実
ダイズ、ラッカセイ、綿花、オリーブ、ココナツ

豆類
インゲンマメ、エンドウ、小豆

香辛料植物および香料作物
コーヒー、茶、コショウ、トウガラシ

糖料作物
テンサイ、サトウキビ

その他の植物原料
飼料用植物、繊維料植物、タバコ