法律家の視点で考える メガソーラーと条例 考察
はじめに
2024年春に、奈良県のある池の上に太陽光パネルが設置されていることについて議論が起こりました。奈良県と住民がもめているということも全国ニュースとなり、大々的にその問題性が取り上げられました。
多くの方がすでに知っている通り、メガソーラーの問題は大規模化し、各地で被害が出ていることもあり、また、その手続きや施工などにも不正やトラブルが多発していることも見過ごすことのできないレベルに達しています。
業者や政治家に対する不信感も募り、その裏では黒い噂や隠すことすらしない闇の取引まで広く伝わっている始末。しかしそれでも、この流れを止められないというのが現状です。
このような現状のもと、今回は奈良県のある依頼をもとに調査した結果の記事を掲載しています。全体的な考察テーマは、『メガソーラーの設置は何が適法なのか?』というとこになります。以下、条例や太陽光施設の設置基準をもとに考察してまいります。
奈良県の太陽光発電施設の設置現況についての考察
考察根拠1
奈良県太陽光発電施設の設置及び維持管理等に関する条例
令和五年三月二十七日
奈良県知事 荒井正吾
第一章総則
(目的)
第一条この条例は、太陽光発電施設が自然環境、生活環境その他の環境に及ぼす影響に鑑み、太陽光発電施設と地域環境が調和するよう、その設置及び維持管理等に関して必要な事項を定めることにより、生活環境に係る被害を防止し、環境の保全を図り、もって県民が安全に安心して暮らせる地域社会の実現に資することを目的とする。
(定義)
第二条この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 太陽光発電施設
太陽光を電気に変換する設備及びその附属設備(これらの設備が建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に規定する建築物に設置されるものである場合を除く。)をいう。
二 太陽光発電施設の設置
太陽光発電施設の新設及び増設(これらの行為に伴う木竹の伐採及び土地の形質の変更を含む。)をいう。
三 施設区域
太陽光発電施設の用に供する土地の区域をいう。
四 地域住民等施設
区域の全部又は一部をその区域に含む地縁による団体(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百六十条の二第一項に規定する地縁による団体をいう。)の区域に居住する者その他規則で定める者をいう。
(地域住民等)
第三条 条例第二条第四号に規定する規則で定める者は、次に掲げる者をいう。
一 施設区域の全部が地縁による団体の区域に含まれる場合は、当該地縁による団体の区域に隣接する地縁による団体の区域に居住する者
二 (省略)
三 (省略)
第四条 (省略)
第五条 (省略)
第六条(省略)
第七条(省略)
(地域住民等への説明等)
第八条 条例第九条第一項の規定による設置等計画及び説明会の実施状況の概要の公表は、インターネットの利用その他の適切な方法により行うものとする。
2 条例第九条第一項の規定による説明会の開催に当たっては、できる限り地域住民等の参集の便を考慮して開催の日時及び場所を定めるものとする。
3 前項の説明会の内容は、次に掲げる事項とする。
一 設置等計画に関する事項
二 条例第八条第一項に規定する調査等の結果及び同条第二項に規定する適正な配慮に関する事項
三 その他知事が必要と認める事項
(設置許可の基準)
第九条 条例第十条第一項第一号の規則で定める基準は、次のとおりとする。
一 施設区域に条例第六条第一号に掲げる区域(同条第二号から第六号までに掲げる区域を除く。)が含まれる場合(条例第五条に規定する太陽光発電施設の設置の場合に限る。)は、当該太陽光発電施設の設置をする森林の現に有する土地に関する災害の防止の機能からみて、当該太陽光発電施設の設置により当該森林の周辺の地域において、土砂の流出又は崩壊を発生させるおそれがないと認められる水準を満たすものとして知事が定める基準に適合していること。
二 施設区域に条例第六条第四号に掲げる区域が含まれる場合は、当該申請に係る太陽光発電施設が土砂災害により損壊し、県民の生命又は身体に著しい危害(当該太陽光発電施設の損壊に起因する建築物若しくは工作物の損壊又は避難上の支障によって生ずるものを含む。)が生ずるおそれがないこと。
三 太陽光発電施設の設置に起因する反射光等により、当該施設の周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがないこと。
四 太陽電池モジュールを支持する工作物の構造等の安全を確保する措置並びに太陽光発電施設の設置の工事及び維持管理等につき適正な水準を満たすものとして知事が定める基準に適合していること。
2 条例第十条第一項第二号の規則で定める規定は、第一号から第九号までに掲げる法律の規定並びにこれらの規定に基づく命令及び条例の規定並びに第十号から第十二号までに掲げる条例の規定及びこれらの規定に基づく規則の規定で太陽光発電施設の敷地に係るものとする。
一 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号第十条の二第一項)
二 農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号第四条第一項及び第五条第一項)
三 自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号第二十条第三項及び第三十三条第一項)
四 地すべり等防止法(昭和三十三年法律第三十号第十八条第一項)
五 都市計画法(省略)
六 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(省略)
七 自然環境保全法(省略)
八 特定都市河川浸水被害対策法(省略)
九 宅地造成等規制法の一部を改正する法律(省略)
十 奈良県立自然公園条例(省略)
十一 奈良県自然環境保全条例(省略)
十二 奈良県砂防指定地管理条例(省略)
(変更の許可等)
第十条 条例第十一条第一項ただし書に規定する規則で定める軽微な変更は、次に掲げるものとする。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名の変更
二 施設区域の縮小
三 太陽光発電施設の出力又は太陽電池の合計出力の減少
四 施設区域内における太陽電池モジュールの面積又は数の減少その他生活環境に係る害及び環境の保全上の支障を発生させるおそれがないと知事が認める変更
2 (省略)
第十一条 (省略)
第十二条 (省略)
(維持管理の基準等)
第十三条 条例第十四条第一項及び第十六条第一項に規定する規則で定める基準は、次に掲げるものとする。
一 太陽光発電施設及び擁壁、排水施設その他これらに類する工作物について、良好な状態を常に維持するとともに、維持管理の体制を整備すること。
二 設置等許可を受けた者にあっては、条例第十四条第二項に規定する保守点検を実施した後、同項に規定する記録を速やかに作成し、当該記録を作成した日から起算して三年を経過する日までの間、当該記録を保管すること。
三 施設区域若しくはその周辺における土砂災害その他の災害が発生した場合又はそのおそれがある場合に、太陽光発電施設の損壊その他の施設区域の危険な状態に起因する生活環境に係る被害及び環境の保全上の支障(以下「太陽光発電施設の損壊等に起因する支障」という。)の発生の防止に必要な対応を速やかに講ずるとともに、必要に応じ、地域住民等及び関係する地方公共団体に対し情報提供を行う体制が整備されていること。
四 事故若しくは前号に規定する土砂災害その他の災害により、太陽光発電施設の損壊等に起因する支障が発生した場合に、当該太陽光発電施設の復旧その他施設区域に係る危険の除去のために必要な措置を速やかに講ずるとともに、必要に応じ、地域住民等及び関係する地方公共団体に対し情報提供を行う体制が整備されていること。
2 条例第十四条第三項の規定による報告は、事故又は災害が発生した日から起算して三十日以内に、事故等報告書(第九号様式)を提出してしなければならない。
3 前項の事故等報告書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 位置図及び配置図
二 事故等状況写真
三 その他知事が必要と認める書類
第十四条(省略)
(その他)
第十五条 この規則に定めるもののほか、条例の施行に関し必要な事項は、知事が定める。
(以下省略)
考察根拠2
奈良県太陽光発電施設の設置及び維持管理等に関する条例施行規則
令和五年八月二十三日
奈良県知事 山下真
(趣旨)
第一条この規則は、奈良県太陽光発電施設の設置及び維持管理等に関する条例(令和五年三月奈良県条例第四十二号。以下「条例」という。)の施行に関し必要な事項を定めるものとする。
第二条以下、前述の条例との重複のため全て省略
考察根拠3
令和三年経済産業省令 第二十九号
発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令(一部省略有り)
電気事業法の規定に基づき、発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令を次のように定める。
(適用範囲)
第一条 この省令は、太陽光を電気に変換するために施設する電気工作物について適用する。
2 前項の電気工作物とは、一般用電気工作物及び事業用電気工作物をいう。
(定義)
第二条 この省令において使用する用語は、電気事業法施行規則(平成七年通商産業省令第七十七号)において使用する用語の例による。
第三条 太陽電池発電所を設置するに当たっては、人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがないように施設しなければならない。
2(省略)
(支持物の構造等)
第四条 太陽電池モジュールを支持する工作物(以下「支持物」という。)は、次の各号により施設しなければならない。
一 自重、地震荷重、風圧荷重、積雪荷重その他の当該支持物の設置環境下において想定される各種荷重に対し安定であること。
二 前号に規定する荷重を受けた際に生じる各部材の応力度が、その部材の許容応力度以下になること。
三 支持物を構成する各部材は、前号に規定する許容応力度を満たす設計に必要な安定した品質を持つ材料であるとともに、腐食、腐朽その他の劣化を生じにくい材料又は防食等の劣化防止のための措置を講じた材料であること。
四 太陽電池モジュールと支持物の接合部、支持物の部材間及び支持物の架構部分と基礎又はアンカー部分の接合部における存在応力を確実に伝える構造とすること。
五 支持物の基礎部分は、次に掲げる要件に適合するものであること。
イ 土地又は水面に施設される支持物の基礎部分は、上部構造から伝わる荷重に対して、上部構造に支障をきたす沈下、浮上がり及び水平方向への移動を生じないものであること。
ロ 土地に自立して施設される支持物の基礎部分は、杭基礎若しくは鉄筋コンクリート造の直接基礎又はこれらと同等以上の支持力を有するものであること。
六 土地に自立して施設されるもののうち設置面からの太陽電池アレイ(太陽電池モジュール及び支持物の総体をいう。)の最高の高さが九メートルを超える場合には、構造強度等に係る建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)及びこれに基づく命令の規定に適合するものであること。
(土砂の流出及び崩壊の防止)
第五条 支持物を土地に自立して施設する場合には、施設による土砂流出又は地盤の崩壊を防止する措置を講じなければならない。
(以下省略)
考察 太陽光パネルの設置は適法なのか?
以下、地上設置型太陽光発電施設の設計ガイドライン及びウイキペディア等の情報サイトをもとに考察した私見である。
太陽光発電施設の用語等
太陽光パネル
ソーラーパネルまたは太陽電池パネルとも言い、太陽光で発電を行うためのパネルのことで、太陽電池板、太陽電池モジュールともいう。2009年頃までは日本の大手メーカーも生産していたが、2017年に生産したソーラーパネルの出荷量で比較した上位10社はすべて中国企業である(ウィキペディア調べ)。
架台
太陽光パネルは一般的に架台(かだい、がだい)と呼ばれる金属の構造物の上に設置される。各架台にはコスト、性質、施工性等の違いがあり、架台に使用される鋼材は、設計条件に耐え得る安定した品質をもつ材料でなければならない。また、使用される目的、部位、環境条件、耐久性等を考慮して適切に選定する必要がある。
基礎
太陽光パネルを安全に支えるために設置されるもので、基礎は、パネルや架台を含む上部構造が沈下・浮き上がり・転倒・横移動を生じないよう安全に支持できる構造形式とする必要がある。上部構造の規模・重量及び地盤特性を考慮して、地盤も含め適切な形式の基礎とし、架台同様に、設計条件に耐え得る安定した品質をもつものでなければならない。
パワーコンディショナー
太陽光発電施設や家庭用燃料電池を利用する上で、発電された電気を家庭などの環境で使用できるように変換する機器であり、インバータの一種である。
考察1
太陽光パネルの感電リスク
感電とは、電撃、電気ショックとも呼ばれ、電気設備や電気製品の不適切な使用、電気工事中の作業工程ミスや何らかの原因で人体または作業機械などが架線に引っかかる等の人的要因、或いは機器の故障などによる漏電や自然災害である落雷などの要因によって人体に電流が流れ、傷害を受けることである。人体は電気抵抗が低く、特に水に濡れている場合は電流が流れやすいため危険性が高い。軽度の場合は一時的な痛みやしびれなどの症状で済むこともあるが、重度の場合は死亡に至ることも多い。
太陽光発電施設による感電のケース
施工不良による漏電事故
施工不良による漏電で感電事故に発展してしまう場合があり、中には、施工実績の少ない業者や施工品質の悪い下請け業者へ依頼している悪質な施工販売店などもあり、それらによる事故が全国で多数報告されている。そうした悪質業者によって設置された太陽光発電施設は、配線ミスによる火災や漏電などといったリスクも高いと考えられる。
雨天時の漏電事故
太陽光パネルに不具合が生じた事例の中には、雨に起因して地面に電気が漏れ、漏電事故になるケースも報告されている。
水没による漏電
土砂災害や台風、豪雨によって太陽光発電所が水没した場合、大規模な漏電事故が起こる可能性がある。水没した太陽光発電所に近づいたり太陽光パネルや架台などに触れたりした瞬間、感電することがあり、特に野立て太陽光発電施設は台風や豪雨で水没しやすく、注意の必要な設備といえる。
感電事故による被害と対処
感電事故の被害は、電気の流れる量である「電流」の大きさによる。電流が1mAの場合は、静電気程度の刺激で済むが、10mAでは強烈な痛みになる。20mAの電流では、筋肉の萎縮が始まり、感電の原因となっている場所から手を離したり移動したりすることができなくなり、感電している人を助けようと触れてしまうと、救助者も感電して動けなくなる。そのため、感電事故を見かけた場合は、近づく前に速やかに119番通報する必要がある。
考察2
水害対策と太陽光発電施設についての考察
いわゆる「令和2年7月豪雨災害」において、九州をはじめ日本各地に甚大な被害をもたらした。中でも、水害に見舞われた大規模な太陽光発電施設があることが問題となった。
水害を受けた場合の対処法
一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)は、「冠水・浸水・水没等の被災した太陽光発電施設の点検・撤去」について注意を呼び掛け、「太陽光発電施設のパワーコンディショナや、太陽電池パネルと電線の接続部は、水没・浸水しているときに接近・接触すると感電する恐れがありますので、近づいたり触れたりしないようにしてください」といった声明を出し、注意を呼び掛けている。
特に、太陽光パネルの取り扱いについては「水害によって絶縁不良になっている可能性があり、接触すると感電する恐れがある」として、復旧作業に際してはゴム手袋やゴム長靴を使用するなどの感電対策をとることを求めている。
複数枚の太陽光パネルが接続されたまま水没等した場合は、「接続活線状態であれば日射を受けて発電し、高い電圧・電流が発生する」ため、周辺にロープを張るなど、関係者以外が不用意に立ち入らないよう対策を講じなければならない。
パワーコンディショナに関しては、浸水によって「直流回路が短絡状態になる可能性があり、太陽電池パネルが活線状態の場合には、短絡電流が流れることでショートや発熱することもある」。
ショートの可能性がある場合には、速やかに販売施工事業者に連絡し、対応をとることが必要となる。また、取り扱いにあたっては、感電対策をとるとともに、パワーコンディショナの遮断器を解列することが推奨されている。
経済産業省は「太陽光発電施設の台風期前の点検強化」について注意喚起を促しているが、台風などの災害によって太陽光パネルの水没や飛散が多発したことを受け、対策の必要性を訴えたものだが、その内容は豪雨時全般に有効なものである。
以下点検のポイントを示す。
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