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お前の熱狂を分けてくれ

漠然とした不安がある。自分だけが取り残されているような恐ろしさが、ずっと心にある。

いつからか「オタク」を名乗るのが怖くなった。「熱狂」という感情が欠落している、そう気づいた瞬間からだ。何にも取り組めない。何にも沈めない。そんな自分が嫌だ。熱意を持って何かをしている人を見ると、自分の冷え切った心に気づいてしまう。勉強でも、趣味でも、恋でも、絵でも本でも写真でも車でも音楽でも運動でも。このまま冷え切った心を抱えて、体が冷え切るまで生きるのか。そんな不安が襲ってくる。

インディーズバンドでがむしゃらにステージに立つあの子。楽しそうだ。給料を全部推しのグッズにつぎ込むあいつ。幸せそうだ。家族の笑顔のために死ぬ気で働くあの人。憧れる。命を削ってでも、自分の表現したいものを生み出す気迫のアイツ。すごいなぁ。

……俺には無理だ。沼を見つけても飛び込めない。片足が動かなくなったあたりで怯えて飛び出してしまう。情けない。そうやって何かになろうとして、結局何にもなれないまま、20歳になってしまった。

多分、この不安からは一生逃れられないだろう。俺はずっと、何者にもなれない。最下位にも、トップにもなれずに生きていく。 何もかもをかなぐり捨てて何かになろうとする気迫も持てず、ただ湿気った煙をあげ続けるのだろう。

アクが強いスーパークリエイターは 冷静な常識人が隣にいる事で活かされる。

引用:左利きのエレン かっぴー・nifuni/集英社

これになりたい。人の熱すぎる熱意に、すぐ近くで当てられていたい。俺にはない「熱狂」という感情を見せてほしい。湿気った俺を乾かしてくれ。俺に火種を分けてくれ。自分のために燃えられないなら、誰かのためにこの人生を使いたい。そんな燃え方も悪くないだろう。火を分けてくれ。

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