『若おかみは小学生!』と「子ども向け」ということ①

口コミで人気が出たアニメ映画『若おかみは小学生!』を先日ようやく見た。評判通りの丁寧な作りで、素直に感動できた。細かい内容についてはネタバレになるし、内容が知りたい人は私以外の感想を見れば把握できるので省略しようと思う。

一方で、口コミの中に多く見られた「子ども向けとは思えない〜」という感想に対しては色々思うところがあった。

まず第一に子ども向け「なのに」質が高くて感動できるという褒め言葉は、エンターテイメントの分野に対する子ども向け作品の影響力を過小評価あるいは誤認していると思う。
話題になった作品に対して「子ども向けなのに〜」と評価するのはある種のお約束みたいなものだ。しかしその言葉は子ども向け作品は色々な意味で本格的ではないという考えが前提になっている。子ども向けだから本格的ではない・質が低いというのは全くの事実誤認で、今現在大人が楽しんでいるエンターテイメント作品の中には子ども向けのものが多く含まれている。
『ハリーポッター』シリーズは『若おかみ〜』と同じく小学生くらいに向けて書かれた小説だが、今では子ども向け作品というレッテルを意識せずに見られている。『アヴェンジャーズ』などのコミック映画はやや対象年齢が高いものの、興行面で映画界のトップに位置している。そもそもトップと言えばエンターテイメントの王様であるディズニーからして子ども向けの作品を提供し続けている。日本のエンターテイメントのトップであったスタジオジブリも代表作は子ども向けだった。
児童文学に関して言えば、今は古典となっている『小公女』『赤毛のアン』も子ども向け小説として世に出たものが大人の読者に評価されて広まった作品だ。
だから「子ども向け」というレッテルがある作品が世に広がることは珍しくもなんともない。子ども向けなのに面白くて〜と言うのは、単にエンタメ分野の実情を忘れているだけなのだ。
実際『若おかみは小学生!』を見ると、細部まで作り込まれている一方でその根本は子ども向け作品そのものなのがわかる。一人の女の子が苦境を乗り越えて成長する脚本、線を強調してわかりやすい構図を多用した画作り、声の演技も聞き取りやすいテンポで進んでいる。その上で、ものすごく綺麗で、感動せずにはいられない作品を作り出しているのだ。
結局のところ、子ども向けに作られた映画を大人が勝手に楽しんでいる、それだけのことかもしれない。むしろ大人「なのに」楽しんでいることの言い訳をするために「子ども向けとは思えない〜」と言っているようにすら思える。
正直に言うと、子ども向け作品は面白くていいのだ。エンターテイメント分野での成功を「子ども向けからの卒業」と見る人はいるけれど、『若おかみは小学生!』は児童文学から生まれた胸を張って面白いと言える子ども向け映画作品だと私は思う。

そのこととは別に、子ども向け作品のあり方について思うところもあった。しかし続けて書くには話題が違いすぎるし、一度に読むには長くなるので別の記事にまとめたいと思う。