傘の危険と言われる部分(石突)

実のところ前回話を書いた露先に比べて石突による人体に対する危険性は少ないのかも知れません。傘を閉じたときに一番危険な部分に見える石突ですが、実際にこれが人間に刺さったというケースはあまり多くありません。

もちろん意図的にこれでさす人がいる場合は別なのですが、基本的には地面のマンホールのふたに刺さったり、自転車のホイールの隙間に刺さったりすることはあっても、人間に害を加えたというケースはまれです。
意図的なケースは子供同士の遊びで発生する可能性があるため、学童用の傘の石突は非常に太いものが採用されることになっており、SGという規格で定められています。

とは言え、やはり先端がとがっているのは間違いない訳で、出来ればない方が良い部分なのですが、こちらも前回書いた露先と同様に傘生地を傷めにくくするためにはどうしても必要な部品となります。ただし、こちらに関して本当は改良しても良いのではないかという事はあります。

石突の長さに関してですが、もちろん個体差はあるものの、大体10~15センチぐらいです。もしこの長さが2センチぐらいであれば、刺さってしまう恐れがぐっと減るのにどうしてそうしないのかなという事になってきます。実際、折り畳み傘やミニ傘の石突はとても短いので、なぜ長傘だけはその長さを長くしているのかが問題となります。

実はその答えのひとつは傘の構造にあります。
中棒と親骨を連結する上ロクロという部品が石突部分と陣笠部分のすぐ近くにありまして、この部品が破損すると傘の開閉機能に不具合が出ます。最悪の場合、上ロクロを止めているピンが抜け落ち傘が壊れてしまうのですが、その部分に直接強い力が加わりにくいようにするために石突は長くとられているというわけなのです。

また、同時に傘生地を擦り傷から守るだけではなく水たまりなどの地面にある汚れた水分から守るために石突が長めに取られています。もし石突の長さが短いと、傘を水たまりなどについてしまった際に傘生地と水面が接触して傘の頭頂部分が汚れやすくなってしまいますのでこれを防ぐために石突は長めに設計されているわけです。

もちろんこれは手に持っているときに地面を突きたくなってしまう長傘特有の状況ですから、中棒の強い折り畳み傘を開発することによってこの状況を改善しうる可能性があります。
とは言え、変わり種のアイテムが受容されるのにはそれなりの年月がかかりますので、傘の世紀単位の歴史に対して新しいアイテムが対抗可能な能力を備えているかがポイントになるのかもしれませんね。

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