ゲームショップとパチモノの関係について思う事

知り合いで古物取り扱いの資格を持ってネットショップを営んでいる方が、某レトロゲーム専門店でアジア製の海賊(パチモノ)ソフトが販売されていることに関して疑問を投げかけるツイートをされていた。

このツイートで取り上げられているのはいわゆる「in1」と呼ばれる、正規のソフトを何本か勝手にコピーしてひとつのROMに突っ込んだもの。正直珍しいものでもなく、わざわざパチモノソフトを狙って集めている好事家でない限り手を出そうとは思わないような、言ってしまえばかなり低級なシロモノである。

偽ブランド品などの海賊商品を中古ショップが販売する事に関しては古物営業法で明確に禁止されていて、これを破るといろいろと面倒なことになるらしいが、如何せん門外漢なのでそのあたりには触れずにいちゲームファンとしての印象や感想を書く。

一時期までなら「パチモノ売ってるぜ~」って笑い話というか、多少知識がある人間なら簡単に見分けられるので「変なの売ってたよ」とネタにするくらいの余裕はあったと思う。また内容も「何種類も入ってるけど、実際は違う面からスタートするマリオがいっぱい入ってるだけ」「ドラえもんのゲームなのに、ドラえもんがよくわからないキャラに書き換えられている」「FF7やバイオ1などの次世代機種のゲームを無理やりファミコンに移植」と謎のオリジナリティを発揮しているものもちらほらあり、それが一部マニアにウケていたという側面があるのは事実だと思う。現在でもそのような「面白い(ネタになる)パチモノ」を紹介するイベントなども催されているし、本流から外れた一つのアングラなジャンルとして確立されているのは決して否定しない。正直、自分もそういうの見てて面白いと思うし。

実際、このツイートにもこのパチモノを面白がったり、あるいは欲しいという反応をする人が少なくない。

が、「ネタにできるものが作られていた時代」とは状況が違ってしまっているように思う。というのはAmazonで正規品と勘違いさせるような売り方で出品されていたり、あまつさえヤフオク、メルカリなどで希少なソフトのデッドコピー品が出回りだしているという背景がある。

・Amazonに潜むパチモノ

Amazonに素性の知れないアジア系業者が多数参入して低品質なコピー品を販売したり、レビューを操作するなどして問題視されているのは聞いたことある方も多いと思う。その中でメーカーに許諾を得ていないパチモノソフト・ハードを出品している業者も少なくなく、中にはスポンサープロダクトのラベルがついているものまである。海賊版を製造している業者にスポンサードされているのはどうなんだというのはさておき、知識がなければ「こんなお得なものがあるんだ~」で流されかねないし、実際に騙されて買ってしまったが指摘されるまでパチモノだと気付かなかったというケースもツイッターで見たことがある。

面倒なのがここ最近のレトロゲーム再興に乗ってレトロハードの新作ソフト過去に発売されたソフトの復刻版、さらに各メーカーに許諾を得てソフトをひとまとめにした、言わば合法in1ソフトというのも存在しているのも勘違いさせる一因となっているのかもしれない。とはいえきちんとクリーンな商売をしている国内メーカーを責めるのは筋違いであり、悪なのはただ乗りで商売する業者(と、それを何の疑いもなく乗せているAmazon)なのは変わりない。

↑これらは何の問題もないクリーンなソフト。

そんな状態だからこそ初心者も安心して購入できる専門店という存在が不可欠なのだが、問題の店は正規品と同じような扱いでパチモノソフトを陳列、販売してしまっている。知識のない店員が査定してスルーしてしまったのか、それともパチモノだと分かった上で値段を付けているのか。何にせよ店の信頼に傷が付くような所業なのは間違いない。

・精巧なデッドコピーの出現

そしてデッドコピー品である。出回り始めの頃はラベルのカッティングが雑だったり、印刷の品質が悪かったりとかろうじて見た目で判別がつく物だったが、年を追うごとにどんどんと本物に非常に近いブツが製造されるようになってきており、最近はコピーライト表記のフォントやデザイン、カートリッジの形成の質、ラベルの質感などのかなり微妙な見分け方をしなければならないような状態になっている。仮にそのようなデッドコピー品が買取で持ち込まれたとして、一目見ていかにも「パチモノ」とわかる物を普通に店頭に並べている店が判別できるか?という点については、無理なんじゃないのかというのが正直なところである。

つまり何がヤベえって「レトロゲーム専門店」という看板を出して大体的に商売しているにもかかわらず、「パチモノでも疑問を抱かずに正規品と同じ扱いで販売している」という大ポカやらかしちゃっている以上、精巧なデッドコピーを正規品として(プレミア価格で)販売しないという保証はどこにもないという事である。

万が一店頭に並んでしまったとしても、精巧に作られた「値段だけは本物」のデッドコピーをショーケースの外から見分けるというのはハッキリ言って不可能だろうし、確実に確かめるとしたら中の基板を確認する(デッドコピー品は基板の構造が大きく異なるので中を見れば判別は簡単)くらいしかないが、もちろん売り物にそんなことはできない。こればっかりは店側の知識や対策を信じるしかないのが現状だが、低級なパチモノを普通に売りに出している店をそんな信頼できるかと言われると・・・。

そんな疑心暗鬼状態に陥る前に、この店舗のみならず全国のショップさんは意識を高めて対策を講じて欲しい。言うだけなら簡単だというのは重々承知だが。

・そもそも「面白いパチモノ」なんてもうほぼ無い

ネット上で「面白いパチモノ」の情報を見て興味を抱く人もいるのかもしれないが、そもそもその「面白いパチモノ」もほぼ存在していないんじゃないかと思う。おそらく、ファミコンやメガドライブなどのレトロハードのコピー品が(たぶん安くコピーして製造できるという理由で)しぶとく生き残っていて、それら向けに供給される正規ソフトのコピーや手軽に作れるどーでもいいようなミニゲームなんかに混じって上に書いたような「ネタになるパチモノ」があったのだろう。

が、そんなものをわざわざ作るより(恐らくネット上の違法なROMデータから)簡単に作れる「ただの海賊版」を適当に作って売りさばく方にシフトしきっている気がする。今からわざわざ「変なものが入ってるかも」と期待してパチモノを購入してもガッカリするだけだろうから、興味があっても手を出さない方が賢明だと思う・・・海賊版ごときに何を期待してるんだという話もあるが。

このことに関して思うのはそんな所です。


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