おとのいし達(「MOTHER」関連盤まとめ)
任天堂のRPG「MOTHER」シリーズに関連したCDをまとめた記事。ネット上にちゃんとまとまってるページが存在しなさげだったのでまとめてみた。たまに加筆されていきます。
・MOTHER オリジナルサウンドトラック
MOTHERファン必携の盤。鈴木慶一によるアレンジバージョンとゲーム音源のメドレーを収録。
当時のゲームサントラとしては異例のロンドンレコーディングを敢行し、マイケル・ナイマンやデヴィッド・ベッドフォードといった大物まで起用した豪華盤。また演奏には斎藤ネコカルテットやキリング・タイム、じゃがたらのメンバーも参加している。
原曲のすばらしさはさることながら、アレンジバージョンがメインという事に不満を持つ間もないクオリティ。鈴木慶一の幅広い音楽的嗜好が爆発しており、キャサリン・ワーウィックのボーカルによるポップな「Pollyanna」、切ない歌詞をルイス・フィリップのボーカルで聴かせる「Flying Man」、デヴィッド・ベッドフォードによってスケールの大きなサウンドに生まれ変わった「Wisdom Of The World」、マイケル・ナイマンによるアレンジで聖パウロ大聖堂聖歌隊が歌い上げる「Eight Melodies」など聴きどころ満載。
オリジナル盤は1989年発売、2004年にSony Music GREAT TRACKSよりリマスター再発。再発盤では「The World Of MOTHER」(ファミコン音源の原曲メドレー)がExtented Ver.となり、ボーナストラックとして「Smiles and Tears」のデモバージョンを収録。
2015年に海外Ship To Shoreレーベルよりレコード2枚組で発売(流通ルートによってレコードの色にバージョン違いあり)。2019年には30周年記念盤としてSony Music GREAT TRACKSよりクリアレコード仕様で限定発売(Ship To Shore盤とはジャケット装丁やレーベルデザインが異なる別物)。
サブスク配信されているが、「Eight Melodies」のみ配信されていないので注意。
余談だが、「Flying Man」を鈴木慶一がライブで演奏した音源が存在している。この動画のコメントによると、盟友・高橋幸宏のライブでの音源らしい・・・が、詳細なデータが見つからない。ライン録音っぽいが、ラジオか何かで放送されたのだろうか?
2021/4/1追記・どうやら「Flying Man」ライブ音源は1997年のメトロトロンワークス(ムーンライダーズのベーシストであり鈴木慶一の弟・鈴木博文が主宰しているレーベルのイベント)のパンフレット付録CD収録のものと判明。1989年の鈴木博文のライブに鈴木慶一・白井良明(ライダーズのギタリスト)がゲストで参加した際の音源とのこと。青山陽一がコーラスで参加している、という情報からメトロトロン関連のメンバーでの演奏と推測。
ただし、高橋幸宏のライブ、というのも当たらずも遠からずで、鈴木慶一が参加した1990年の高橋幸宏のツアーでも演奏されていたらしい。しかしオフィシャルとしては音源は残っていないとのこと。
調べるとこちらのサイトのセトリに確かに「Flying Man」の記述がある!しかしこのツアー、メンバーがメチャクチャ豪華(鈴木慶一・さえ子夫妻、浜口茂外也、コシミハル、故・大村憲司・・・)なので、音源が残っていないのが惜しまれる。
・MOTHER MUSIC REVISITED
鈴木慶一+ゲストらの手による新アレンジと、デラックス・エディションのDISC2にはファミコン音源の原曲をほぼ完全収録。ゲストとしてMETAFIVEのゴンドウトモヒコが「Magicant」を、蓮沼執太+U-zhaanが「Snowman」を、カメラ=万年筆の佐藤優介が「Fallen’ Love, And」のアレンジを担当。また上野洋子(元ZABADAK、Orange&Lemons)がコーラスで参加しているほか、一部楽曲のストリングスアレンジを担当している。演奏にはゲストアレンジャーに加えて柏倉隆史(toe、The HIATUS)、岩崎なおみ(The Uranus、Controversial Spark)、東涼太、四家卯大、サカモト教授などが参加。
89年版と比べてさらにサイケ色、というより鈴木慶一ソロの色が強く、ヴァン・ダイク・パークスやXTCを彷彿とさせるポップス職人的な一面も感じさせるアルバム。ストーンズの「She’s A Rainbow」のようなピアノの音色がサイケデリック感のある「Pollyanna」、こじんまりしたハウスバンドの様なイメージを湧かせる「The Paradise Line」、「MOTHER2」的なアプローチでやり直したようにも聞こえる「Flying Man」、鈴木のボーカルにより89年版と対をなす内省的な仕上がりになった「Wisdom Of The World」、まさかの轟音ギターがフィーチャーされインディーロックっぽくなった「Eight Melodies」など、徹底的に89年版との差別化を図ったまさに「2021年版」サウンドトラック。個人的には「MOTHER」から鈴木慶一ソロ・ムーンライダーズへの入門はちょっと敷居が高い気がするのだが、このアルバムで予習するとすんなりハマれるかもしれない。
鈴木慶一音楽生活50周年コンサートでは89年版を基に「REVISITED」の要素を合わせたアレンジで演奏されていた。
通常盤のほか、2枚組デラックス・エディションではファン待望のゲーム音源がほぼ完全収録されていることも特筆しておきたい。また限定盤としてレコードも発売(収録内容は通常盤と同一)。
・MOTHER2 ギーグの逆襲 オリジナルサウンドトラック
ゲーム音源とリミックス音源を収録。1のサントラとは異なりゲーム内音源がメイン。ただしセーブデータ画面やドラッグストア、戦闘BGMなど未収録曲が多く、それらの曲をリミックス音源に使用という変則的な編成なので注意。
個人的にはラストに収録されている「PSI MIX」が趣深い。「MOTHER2」制作当時、鈴木慶一はテクノに、田中宏和はヒップホップにどっぷりだったという話なので、その志向の延長線上で収録されたものなのだろうか?ブックレットによるとリミックスは坂元俊介と松前公高が担当。ネット上の情報では鈴木慶一ないし田中宏和のアレンジと表記されることもあるが間違い。
ただ何にせよ、データベース的なサウンドトラックとしても「1」のようなアレンジトラック集としても中途半端な仕上がりなので、ファンからの評価は高くない。「ただ機械的に曲を並べただけのCDにはしたくない」という志はわかるのだが・・・時期的にはムーンライダーズが活動を再開した頃でもあり、活動休止中だった「1」の時と違って、まとめ上げる時間が無かったのだろうかと邪推してしまう。
オリジナル盤は1994年発売、2004年にSony Music GREAT TRACKSより再販。2015年に海外Ship To Shoreレーベルよりレコード2枚組で発売(流通ルートによってレコードの色にバージョン違いあり)。2021年にはSony Music GREAT TRACKSよりクリアレコード仕様で限定発売(Ship To Shore盤とはジャケット装丁やレーベルデザインが異なる別物)。
・MOTHER1+2 オリジナルサウンドトラック
全曲松前公高によるアレンジ音源が収録。「1」「2」共にゲーム音源を収録した盤ではないことに注意。
「1+2」自体がハードの制約によりオリジナル版よりも音質が悪くなっていたためか、松前公高による打ち込みアレンジのみを収録。共にゲーム音源のアップグレード版という感じの無難なアレンジ。悪くはないが、しいて言うなら松前公高らしいKORG MS-20のサウンドがよく聴かれる程度であまり書く事が無い。注目点は「1」「2」のサントラに収録されていない曲が多数取り上げられている事くらいか。何故か「All That I Needed (Was You)」が「The Paradise Line」と間違えてクレジットされている。ブックレットに鈴木慶一・田中宏和両名の曲解説あり。
・MOTHER3+
原曲を基にしたアレンジバージョンとクレイジーケンバンド(D.C.M.C.名義)による生演奏バージョン、大貫妙子による「MOTHER3 愛のテーマ」のボーカルバージョン「We miss you ~愛のテーマ~」を収録。
・MOTHER3i
DL専売。原曲を基にした打ち込みバージョン(と言うよりはGBA音源に落とし込む前の原曲か?)を収録。「MOTHER3+」とは収録曲が異なり、こちらの方がサントラ然とした構成になっている。ただしこの2枚を合わせても依然として未収録の曲は多い。
鈴木慶一関連
・SUZUKI白書
鈴木慶一のソロアルバム。自身が優れたアレンジャー・プロデューサーでありながら、ほぼ全曲を別々のゲストミュージシャンにアレンジ・プロデュースを任せるという異色のアルバムとなっている(ちなみに「MOTHER」サウンドトラックに関わったデヴィッド・ベッドフォードやデヴィッド・モーションもこのアルバムに参加している)。
「MOTHER2」のランマのテーマに歌詞を付け、The Orbのアレックス・ファルコナーがアレンジしたバージョンを「Words,Colors,Noises,Booms」として収録。
小学館「任天堂公式ガイドブック MOTHER2」にて「ランマの曲はゲーム用に作ったが、あまりにも気に入ったので自分のアルバムにも入れてしまった」と言っていたのはこれのこと。そのため原曲はゲームの方だが、発表自体はこちらの方が先だったりする。(ゲーム発売:1994年 「SUZUKI白書」発売:1991年)
アルバム通してアンビエントテクノとエスノ(民族音楽)が融合したようなサウンドになっており、ランマのテーマが収録されたのもアルバムのテーマとリンクするものがあったからだろうか。
・Music for Films and Games/Original Soundtracks
鈴木慶一のサントラワークスの中から選曲されたベスト盤。「MOTHER」「MOTHER2」両サントラから数曲収録されているほか、ボーナストラックとして相対性理論のやくしまるえつこがボーカルを取る「Smiles and Tears」を収録(作詞は糸井重里)。
歌詞自体は取扱説明書や攻略本、サントラのブックレットにも掲載されているものの、音源としては唯一のボーカルバージョン。(他にはほぼ日のネット配信企画でサカモト教授・ヒャダイン・鈴木慶一・田中宏和の演奏でピチカート・ファイヴの野宮真貴が歌ったことがあるが、音源としては残っていない)アルバムの内容自体は音源化されている物が殆どで、どちらかというとムーンライダーズのファンでメンバーの細かい仕事までは追ってないという人向けかと思うが、MOTHERファンもこの曲のためにアルバムを入手する価値はあると思う。
ゲームサントラファン的には「リアルサウンド 風のリグレット」の音源が収録されている点にも注目。
・The Lost SUZUKI Tapes
デモ・蔵出し音源集。「1」のエイトメロディーズのデモバージョンを収録。
・The Lost SUZUKI Tapes Vol.2
デモ音源集。「1」より「Pollyanna」「Eight Melodies」のホームデモ、「All That I Needed(Was You)」のスタジオデモ(サントラ収録時のガイドボーカル版?)、「2」より「サターンバレーのテーマ」のデモバージョンを収録。「Pollyanna」は鈴木慶一自身がピアノ弾き語りで仮歌を歌っているもので、楽曲制作時に作られたファミコン音源に落とし込む前の原曲かも?「Eight Melodies」も「ひとつめのメロディー・・・」と説明を入れながらピアノを演奏するもの(上記「The Lost SUZUKI Tapes」とは別の音源)。
・鈴木慶一 Aerial Garden Sessions LIVE
Preservation SocietyでのDL専売。鈴木慶一のライブシリーズのゲストセッション部分を音源化したもの。カメラ=万年筆の佐藤優介とのコラボで演奏された「Pollyanna」を収録。
・ムジカ・ピッコリーノ Mr.グレープフルーツのブートラジオ
NHK Eテレの音楽教育番組、の割に選曲や出演者が完全に親御さん向けなことで一部では有名な「ムジカ・ピッコリーノ」で演奏された音源をまとめたアルバム。鈴木慶一がレギュラー出演していた時期に「Eight Melodies」が取り上げられており、そのバージョンを収録。アレンジはMETAFIVEのゴンドウトモヒコ、ボーカルは斎藤アリーナ。斎藤アリーナは鈴木慶一の活動45周年ライブのフィナーレで「Eight Melodies」が演奏された際にも、そうそうたる面子をバックにリードボーカルを取っていた。
・ムジカ・ピッコリーノ メロトロン号の仲間たち
同じく「ムジカ・ピッコリーノ」のサントラ盤で「Eight Melodies」が収録されているが、こちらは番組内で使用されたインストバージョンのようだ。
カバーもの
・SAKEROCK「songs of instrumental」
今や大スターとなった星野源が在籍していたバンドの2ndアルバム。「Eight Melodies」のカバーを収録。
星野源は相当なゲーム好きで有名で、オールナイトニッポンでUndertaleのサントラをかけつつMOTHERシリーズやUndertaleへの熱い思いを語っていて当時ちょっと話題になった。生バンドアレンジとしてはかなり雰囲気がいい文句のないアレンジ。
・サカモト教授「SKMT」
頭にファミコンを乗せたチップチューン・ピアニスト、サカモト教授のオリジナルアルバム。オリジナル曲の中に混ざって「Pollyanna」のチップチューンカバーを収録。原曲の雰囲気を保ったまま軽快なリズムにアレンジされいる。
・plusico「初音ミク plays 月光下騎士団」
ポケモンサン・ムーン等のサウンドに関わった黒田英明と謎の人物Thomas O'haraのユニットplusicoがムーンライダーズの楽曲を初音ミクに歌わせたトリビュートアルバム・・・と思ったらThomas O'haraとはムーンライダーズのキーボード・岡田徹の変名らしく、実態はセルフカバーアルバムに近い。ライダーズの曲の中に混じって「Eight Melodies」のカバーが収録されている。VOCALOIDの好き嫌いは別として、アレンジはAphex Twinあたりのコーンウォール系を彷彿とさせるアンビエントっぽいドラムンという感じでVOCALOID2の冷たいボイスにはよく合っていると思う。
・ARTHUR「Hair Of The Dog」
詳細不明。日本語の情報が全く出てこないので検索して出てきた記事を翻訳にかけてみたら、フィラデルフィアを拠点に活動するソロアーティストらしい。2ndアルバムの1曲目に「Eight Melodies」を収録。よーく聴くと「エンディングまで泣くんじゃない・・・」というCMのナレーションが丸々サンプリングされている。アルバムが全体的にローファイかつ妙なサイケ感のある音色に支配されており、まあ鈴木慶一ソロみたいなというか、もっと身もふたもない事を言うとMOTHER2の音色でオリジナル曲を作りました、みたいなサウンドなので相当好きなのが伺える。MOTHERファンは一度聴いてみてもいいかもしれない。
・Kuboty「おやすみ、またあした」
メロコアバンドTOTALFATの元ギタリストKubotyによるギターインストカバーアルバム。「Eight Melodies」を収録。何気に珍しい、「1」のエンドロールで流れるバージョンに忠実なカバー。
・オーケストラによるゲーム音楽コンサート2
ワーナーブラザーズから発売されていたシリーズアルバム。教育用CD的なジャケットの雰囲気で侮ることなかれ、中身はすぎやまこういちが主催したゲーム音楽のオーケストラコンサートを収録したもの。「Because I Love You」「イーグルランドのテーマ(オネットのテーマ)」をオーケストラアレンジで収録。MOTHERシリーズの音楽がオケで演奏されるされるのは非常に珍しい(他はNHKの「シンフォニック・ゲーマーズ」で放送されたくらいか?)ので貴重な盤かも。しかしこのアルバム謎なのがMOTHER2の曲を収録しているのに発売が1992年とゲームより2年も早く、「SUZUKI白書」と合わせると3曲もゲーム発売前にお披露目されていたことになる。他はドラクエ5やFF5、Wiz5と92年発売のゲームが取り上げられているので、本来ならMOTHER2もこの時期に発売される予定だったのだろうか?謎だ。
・オーケストラによるゲーム音楽コンサート3
上記と同じシリーズの第3弾。こちらにも「Because I Love You」が収録されている。音源は見つけられなかったが、データを見ると収録日時や演奏している楽団が異なっているようだ。発売は1993年と、相変わらずゲームより早い。
ちなみにこのシリーズ、確認できただけですぎやまこういちをはじめ羽田健太郎、菅野よう子、酒井省吾、田中公平、宮川泰・彬良親子といったかなり豪華な面子が関わっており、選曲も有名どころからシムシティー(SFC版)、Wiz、レナス、イーハトーヴォ物語など渋いタイトルも多い。
・ファミコン・ミュージック・ベスト・セレクション
1992年発売。タイトル的にGMOやサイトロンのオムニバスサントラ系かと思ったら完全アレンジ盤。Amazonのデータでは演奏はMCファクトリーとなっているが、いかにも90年代くさいシンセ打ち込みの音なのでバンドと言うよりT’s Musicのような制作会社の名義である可能性が高い。「Pollyanna」と「Eight Melodies」を収録。
「Pollyanna」はスーパーの有線みたいなアレンジで特筆すべき物ではないが、思いきり採譜をミスしている。一方で「Eight Melodies」は衝撃のハウスアレンジ。リスナーを驚かせるという点ではかなり評価できるかもしれないが、曲のアレンジとしては成功していると言い難い。まさかMCファクトリーってハウスつながりでC+C Music Factoryをパクって付けたんじゃないだろうな・・・。
他の曲も総じてアレンジが安く(ついでにジャケットもへぼい)、まあまあなトンデモ盤な気がする。
・EXIT TUNES PRESENTS ファミトランスEX
一時期(今もか?)雨後の筍のように乱発されていたアニソンやゲーソンのクラブアレンジコンピ。「Eight Melodies」「Pollyanna」「Smiles and Tears(「エンディングのテーマ」表記)」が収録。意外にも「Eight Melodies」「Pollyanna」はボーカル入り。あとは特に書くことなし。
・nanofingers offset「ギムナジウム」
萩尾望都の「11月のギムナジウム」に着想を得て制作されヴィレッジヴァンガード専売で発売されたBGM集・・・らしい。要するにヴィレヴァンの店頭で延々かかってるジブリのアレンジCDのようなもの。なぜか「Eight Melodies」が収録されている。いかにもソフトシンセのプリセットベタ打ちで作りました、的なサウンドで特に聴きどころや書く事などは無いが、坂本龍一の「Energy Flow」などすべての収録曲を適当にスコアそのまま打ち込んで強引にシャッフルビートを乗せたようなアレンジは(一部の好事家にとっては)ある意味聞きものかもしれない。