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きっと心はそこにある『ムーン・ゴースト』感想


全体的な所感

幻想的な世界観、月の庭園で行われる密かな恋物語であり、別次元の世界を巻き込む大きな事件。
アンドロイドが主人公でボイス有といままでになかった主人公像。
しかも、両性でありH シーンは男性と女性のボディ切り替えでいたすシーンはいままでこの業界になかった革新なシーンでしょう。

幽霊の魂を救済するという一連の行動には、とても美しさを感じ感動しました。パターンとしては、『八重』『ドミニク』を救済したシーンがありどれも印象的です。
もっとこの救済を見ていたいとミドルプライスのボリューム感では仕方ないですが思わせてくれました。

©Purple software

隠れたこの作品でのゴーストがいると思ってます。
それが『姫子』の存在。
おそらく、具体的なタイトル回収はされておりませんが彼女こそがメイン
『ムーン・ゴースト』の役割だったのだと読了した時に感じました。

彼女は結局の所幽霊ではないですが、別次元からビナーを失った為に行動した『未練』『執着』『憎悪』…幽霊としての行動原理に当てはまるかと思っています。お別れの仕方も、彼女の存在が終わり迎える事によって穴がふさがる際に生じ鐘が鳴り続け全幽霊の浄化もゴーストとしての表現ではないのかと。

とても素敵なシーンで心がうたれました。姫子がナノマシンで自壊してしまうシーンは『失われる』表現してとても印象的です。

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そしてこの物語には、神話性が含まれているお話だと思っております。
『リンゴ』と言う言葉が作中ででてきます。生命を生み出すお話としての旧約聖書の中でも象徴的な単語でしょう。
『ダアト』と言うキャラクターは、旧約聖書でも出てくる言葉でありセフィラの集合体・完全体としての言葉です。意味合いとして作中としても合致しております。

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旧約聖書のセフィラとは何かというと生命の樹を構成する要素の一つです。つまり、誕生のお話や命の象徴として描かれている生命の樹をモチーフにしているシナリオだと、考察しております。

だからこの作品では、『誕生したものが何か』を捕らえる必要性を感じるのです。その前にこの世界(卵)についての言及を。作中では世界の事を『鳥籠』と『アオイトリ』と同じ表現をなさっています。

善意性の訴え

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この世界は善意性の塊である世界。人類代表すらも例外ではなく100億の集合体である彼女は人の本質として描かれる悪が全くないのです。
別のキャラも善意で動いておりました。

何故人間が登場せず善意だけの世界で構成されているのか?
きっと、人間がでてくる物語では悪意が入り込む余地があるからです。
人間は知恵の樹になっている実を食べた存在。
その実を食べると神と等しき善悪の知識を得るとされる。

だからこそ登場させなかったというのが私の見識です。

じゃあ、人類代表は?幽霊は?
と説得力を持たせにくい発言になってしまっているかと思います。
純粋な人間ではありませんが、伝えたい事にとって人間が元になっている存在としての異物には間違いありません。
そこは、想像の余地でしかありませんが、

  1. 人間の善意だけ集合させている『人類代表』を描いている

  2. 幽霊となる条件として悪意が無い事が前提条件である(心がある事が条件である。だからアンドロイドの幽霊は存在しない)

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上記の隠れた設定を考えております。
これは、私の勝手ながらの考えですので答えは御影さんにしか分からない事でしょう。
ただし、例外があり心を持ったアンドロイドがいます。それは後述で書かせていただきます。

だからこそ、この世界観は優しい気持ちに浸れる世界となっていました。

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人類代表の姫子を別次元へと送るシーンの
『行きなさい』ではなく『生きなさい』という祈りは善意性の表れの象徴的なシーンですね。とても素敵な祈りでした。

この物語のメッセージとテーマ

では自分なりに咀嚼した結論部分を。
大きなテーマは『心の誕生』だと思います。
そしてメッセージは『善意性から特別が生まれる

まずはテーマのお話から。
だからこそ、旧約聖書をモチーフにし心が宿った存在として一個の生命の誕生を認めるお話になっているのかと思います。
心を持たない存在であるはずのアンドロイドが恋愛をし、子をなそうとする過程を描く。
そして、心が生まれている絶対的な描写があります。

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別次元での『セフィラ・ダアト』の存在です。これはダアトの次元のお話で地球から月に移送されたさいにとりとめもない一体の幽霊として描かれていました。
ここで、気づかれる方はいるでしょう。アンドロイドの幽霊はいない

だからこそ、心を持ち一つの生命体まで昇華された存在こそセフィラの完全体であるダアトなのです。彼は幽霊の条件を満たした限りなく人間に近い特別な存在なのです。
『アオイトリ』でもあった『特別』が踏襲されている部分です。
御影さんは『アオイトリ』に近い作品と仰っておりました。こういった要素も一つなのでしょう。ダアトが『この世界が好きだから』言葉もそうですね。プレイ済みの方ならわかるはずです。

ダアトが好きな世界『善意』で溢れているからこそ生まれた心なのです
これが自分なりのメッセージの受け取り方でした。生まれたのは特別なので心だけではありませんが。

善意を大切にしたい、そう思えるシナリオでした。

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なにも、特別はダアトの心だけでありません。色々な物語の取りようがあるかと思います。

姫子も心を持ち始め、幽霊になれる条件まで至ったかは想像でしかありませんが、彼女もこの好きな世界で『生きたい』と思える程に感受性を持った事はまた特別になりました。
姫子と言うキャラは魅力があり過ぎまして、過程も背景も終わりも通して、一番好きなキャラクターです。

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最後に(総評もまとめて)

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ここまで、安易な考察と稚拙な感想ではありますがお読みいただきありがとうございます。間違っている部分多々あるかと思いますが、指摘していただけるとありがたいです。

本作は、恐らくパープルソフトさんの挑戦作ですので評価が難しく感じました。自分としましては凡作としての評価です。理由としましては以下の点です。自分として感じた事なので人にとっては違う感じ方を受けると思います。

  • アンドロイドが主人公で感情移入がしにくい。また恋愛描写がおまけ程度のもので、ビナーとダアトの関係は素敵だが恋愛として成立しているかが薄味だった。

  • 姫子がビナーに好意を持っていた理由をしっかりと持たせて欲しかった。(あるにはあったが。。。)

  • 幽霊を成仏するくだりもう少し取り入れて欲しい

  • アンドロイドと人間の差が表現されていない。人間には見えなく、セフィラには幽霊が見える理由が明記されるかと考えていた。

  • マリアと言うキャラの役目

ぶっちゃけてしまえば上記の点がありました。ミドルプライスゆえの尺の短さがそうさせているのかもしれませんし、御影さんが故意に表現していないのかもしれません。そこは過去作でもあった部分なので、後者の可能性が高そうではあります。

とはいえ、2024年の作品でも随一美しい旋律を奏でる作品だったのかなと。
『葬送の鐘の音はどう聞こえているか』という問答が作中でありますが、勿論最後にはとても美しい音色を奏でていました。

姫子を送ったシーンがとても山場で、この為の鐘の音だと感じました。
だから、別次元では命が消えるなど話の流れによって鐘の音の聞こえ方は不気味だったりというギミックなのかと思います。

とても素敵な作品なのは揺るぎません。これからも、御影さんの作品には個人的に注目しております。
どうか、あなたにとっても鐘の音色が美しく聞こえますように…
この私の祈りでしめさせていただきたいと思います。

©Purple software


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