どんどん
このお話、完結していますが
前編『ちゃんとひまわり』の続編でも
あります。
前編へはページ最後のリンクからどうぞ!
袖無かさね
ボクは小さな虫です。飛び回るのがとっても得意です。でも、今日はちょっと疲れたので、このお庭の木でひと休みすることにします。
ボクは、このお家に住んでいる女の子を知っています。まきちゃん、です。ほら、今ちょうどお庭に出てきました。
まきちゃん、短い棒を持っています。あと、小さなコップ。短い棒を小さなコップにトントンと入れると、棒を口にくわえてボクの方を向きました。もう一回。そしてもう一回。まきちゃん、こんなに小さなボクがここにいること、どうして分かったのかな?ボクは張り切って背伸びをしました。
「ゆっくり、そーっと息を入れてごらん。」
まきちゃんは、誰かと一緒でした。
「おとうさんが、お手本を見せてあげよう。」
あの人は、おとうさん、っていう名前なのか。
おとうさんが、棒を口にくわえてボクの方を向きました。すると、棒の先に透明な光が丸くふくらんで、空中に浮かびました。
「わー!おとうさん、すごい!」
おとうさんは、またボクの方を向きました。もう一回。そしてもう一回。
透明な丸い光の一つが、ボクが止まっている木のところまでゆらゆらと飛んできました。丸い光のお腹の中は、空っぽみたい。
「こんにちは。」
ボクが恐るおそる声をかけると、丸い光はパッと消えてしまいました。ええ?たった今、目の前にいたのに!
おとうさんがくわえた棒から、小さな丸い光が、とぅるるるる、と、たくさん飛び出してきました。
「きれい!」
まきちゃんが飛び跳ねて丸い光に触ると、丸い光は次々と消えました。
「よぉし、見ててごらん。」
今度の透明な光は、棒の先でどんどんふくらんで、すごく大きな丸になりました。
「おおきーい!」
大きな丸い光はプワンプワンとまきちゃんの顔の目の前までくると、やっぱりパッと消えました。
ボクはだんだん不安になってきて、深呼吸をしました。まさかね。
ボクは思い切ってまきちゃんのお庭の木から空に向かって飛んでみました。ぶうーん。まきちゃんの楽しそうな笑い声がどんどん遠くなります。ぶうーん。もっと飛びました。ぶうーん。
でも、大丈夫でした。
「良かった。」
ボクは消えませんでした。ボクのお腹、空っぽじゃないもんね。
「ボクは、どんどん飛んでも、大丈夫。」
それでボクは、どんどん飛びました。
おしまい
photo by chin.gensai_yamamoto
▼ このお話は、続編です。
前編『ちゃんとひまわり』はこちらからどうぞ!
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