漫画の読み切り、ゲスト掲載を読んで思うこと・キャラクター大好き
突然ながら、漫画誌ってよく読み切り、ゲスト作品が掲載されてますよね。
新人育成のためであったり休載の穴埋めであったり理由はさまざまですが、漫画家にとっては大きなチャンスの場です。
これら読み切り作品は単発で終わることも多いわけですが、面白い作品が多いのでもったいないなあと思いながらいつも読んでいます。
単発で終わっていく読み切り作品も、作者さんにとっては命を吹き込んだ子供ですよね。人にとってはどうあれ、作者にとっては「連載にならなかったよ、はい終わり」では済まされない。
だから……作者さんに負担をかけるつもりはありませんが、たまにイラスト描いたり、ネットや同人誌などで続きを描いたりしてほしいといつも願ってしまいます。
商業誌で掲載をゲットしたということは、他者(編集者)の目を通しても何か光るものがあったということですし。
現在、柴朗先生と僕が『妖こそ怪異戸籍課へ』を連載させていただいている「まんがタイムきららMAX」も、レベルの高いゲスト作品が多いと感じています。
毎月読ませていただいていて「えっ、面白いのに、連載化せずに終わってしまうの?」と残念に感じることが多いです。
もちろん、長期連載されているベテランの先生方はさらに上を行っているということですし(新人である僕たちはさておき)、連載枠に制限がある以上は仕方ないのでしょうけど……でも、連載枠に入らなかったからといって終わりにしてしまうのはもったいない設定、キャラクターを持つ作品がたくさんあります。
※余談ながら、まんがタイムきららでも「ゲスト作品まとめ単行本」とか作れないですかね? 「ゲスト作品集〇〇年度版」とか。雑誌のバックナンバーのみならず、何らかの形でまとまっていたら嬉しいのになあ。
・誰にもキャラクターは誰にも殺せない、殺させない
読み切りを通らなかった漫画家さんや僕たち原作者は、次を目指して新作を書かねばなりません。だから「惜しかった過去作」を振り返っている暇はなかなかないでしょう。
ただ、それでもできることなら、連載をゲットできなかった過去作も葬ってはほしくない。願わくば「まだ彼ら(過去作)も生きてる」と思っていてほしい。「連載にならなかった=キャラクターの死」ではありません。
あなたの作品は、広い宇宙の、たった一冊ぽっちの雑誌で連載化できなかっただけです。あなたの作品は、他の場所だったら輝いていたかもしれない宝物です。
イラスト執筆や同人活動をするお時間がなかったら、心の中だけでもいい。次の新作を書きながら「でも、彼らは生きてる」「実は、新作漫画のキャラの隣町には過去作の子たちが住んでるんだもんね」と思う…そんな裏設定、自己満足でもいい。
とにかくキャラクターが生き続けていると考えたい……というのは、人様への願いというより、僕の考えになってしまいますが。ちょっと過剰な思い入れでしょうかね。
妙な言い方になってしまいますが、魂を込めて誕生させたキャラクターは、僕にとって妖怪、霊魂、精霊、付喪神にも近いものです。たとえこの世では見えなくても存在するし、生きている。軽々に扱うべきではない。
※(例えが妙な方向に行きましたが、笠間は変なカルトなどには加入しておりませんのでご安心ください。壺は売りつけません。壺を買うくらいなら『妖こそ怪異戸籍課へ』単行本を買って……!)
いちど生まれたキャラクターは、出版社にも、偉い人にも、神様にだって殺せない。作者のあなたが愛していれば死にません。殺させません。
あなたの設定、キャラクターが誰かに否定されたとしても「アドバイスを受け入れて改善する」ことは大切ですが「キャラクターを見放す、殺す」必要はないと僕は思います。
まあ、このあたりの素直さと頑固さのバランスは状況によるので難しいですが……。
時にはアドバイスや評価を受けて、より高みを目指すために「過去のアレはぜんぜんダメだった! 全てを捨てて1から出直すぞ!」とリセットすべきケースもあるでしょうし……難しい。
ただ、なんと言いますか、心構えの問題というか……キャラクターは生命体なんですよね。過去のキャラクターは決して「使えなかった道具」じゃない。生きている。
ああ、話がまとまらなくなってきました。これ以上は繰り返しにしかなりません。
そろそろ校長の長話に耐え切れず貧血を起こす子も出てくる頃でしょうから切り上げますね。
とにかく僕は、たくさんの魅力的な読み切り作品が続かないことが寂しいと言いたかったのです。キャラクターが好きでたまらない。人様の作品のキャラであっても。
仕事である以上、僕もわかっているつもりです。厳しく作品を厳選することが、雑誌にとっても読者様にとっても必要だということは。
でも、それでも、できることなら、どれひとつ切ることなく、漫画雑誌を無限に厚くして彼らを掲載させてあげてほしい。漫画の横幅より厚みが勝る、広辞苑みたいな漫画誌にしてほしい。
……と思いつつ、これから生まれてくる魅力的な新作を楽しみに、日々、漫画雑誌を拝読しております。
オチがなくて恥ずかしい。終わり。
『妖こそ怪異戸籍課へ』
https://houbunsha.co.jp/comics/detail.php?p=%CD%C5%A4%B3%A4%BD%B2%F8%B0%DB%B8%CD%C0%D2%B2%DD%A4%D8