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遅咲き棋士のリストラ回避録【連続お仕事小説】その7

勝てば棋星きせい戦リーグ入りで昇段し天国、負ければ引退が決まる運命の1局が始まった。最初こそ重圧で手が震えたが、序盤で研究した手が功を奏した。
中国で流行し始めた最新の布石を自分なりにAIで研究し、神崎かんざき師匠を訪問した時にも相談してこの本番でぶつけたのだ。

俺_相庭葎あいばりつが遅咲きの棋士と呼ばれているのは、20代の頃に勝てなかったからである。特に序盤が苦手だった。野球で例えるなら立ち上がりに安定感が欠け、四球を連発しクリーンアップを迎えて先制点を献上するというのがパターンだ。慎重に対局(試合)に入ろうとすると今度は時間を使い過ぎ、終盤の難解な場面で読み切れずスランプが続いた。

スランプを打破したきっかけはAIの普及が大きく、ダイレクト三々など今までにない布石が流行し、貯金を叩いてパソコンやソフトを導入しAIの布石を研究したことが勝率アップに繋がり「遅咲きの棋士」と呼ばれるようになった…と思っている。

9時に始まった運命の1局も12時になり昼休みを迎えた。
使用した布石が想像以上の効果を上げてボードアドバンテージを得ることができている。盤面だけでなく対戦相手の下川しもかわ九段が思ったより時間も使い、俺が1時間に対し倍の2時間を使っていた点も俺に軍配が上がる。
1人の持ち時間は5時間なので、勝負どころの後半に時間を温存できるのは心強いものだ。このまま対局が終われば、プロを続けられる。そう思った。

その8へ続く

次回は高村九段と神崎師匠が登場します。この物語はフィクションです。各話のリンク先はその1に掲載しています。

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過祭 進碁
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