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0から始める心電図検定2級



1. ご挨拶

初めまして。
第120回医師国家試験受験予定のかさはら(https://x.com/kasaharaminiku?mx=2) と申します。2024年12月に行われた心電図検定において、心電図検定初受験で2級に合格したので、その経験をnoteに記そうと思います。
こちらの文章は主に、
・心電図検定を受けたいが、全く心電図が分からない
・心電図検定3級は持っていないが、2級を受けたい
・心電図検定を受けるか迷っている人→目次の「最後に」をまず読んでください
という方々のための文章となっています。
その他、心電図検定に少しでも興味のある方々などの参考になれば幸いです。
 

2.筆者のレベルと勉強を始めた動機

医学生4年目が終わろうとした時点で、私は4年間も医学を学んだのにも関わらず、学校の定期試験を乗り越えるための過去問やレジュメ暗記しかしていなかったため、心電図をはじめとした医学知識は身についていないに等しい状態でした。
具体的に申し上げますと、恥ずかしいことに、4年次に受けたCBTでは分からない心電図の問題は全部「心房細動」と答えると決めている、あるいはAEDでショックを与える心電図波形がギリギリ分かるかなというレベルでした。
心電図が全く分からないのに、循環器内科志望と周りに話している身の程知らずの私は、さすがにこの状態で実習を迎えるわけにはいかないと心電図の勉強を始めることにしました。
心電図検定のためではなく、医学生としての自分のゴミさ加減に驚愕した結果、私は心電図の勉強を始めるに至ったのです。
心電図検定を受けることにしたのは、周りの人や実習先の先生方の影響があったのと、自分はある程度の課題を与えなければ勉強しないと分かっていたからです。3級を持っていないのに2級を受けようと思ったのは、勉強すれば君なら2級は受かるよと循環器内科の先生に上手くおだてられたからです。ちょろい。

3. 使った参考書とスケジュール

心電図の勉強に使った参考書は以下の通りです。
①レジデントのためのこれだけ心電図
②心電図検定公式問題集&ガイド
③心電図判読ドリル
④心電図完全攻略マニュアル マイスターが教える 1・2級合格への最強メソッド
⑤心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習
(⑥心電図マイスターチャンネル)

大体①→⑤の順に使用しました。心電図検定に合格するための参考書として購入したのは②、④、⑤です。
では、参考書の使い方やスケジュール、所感について説明しようと思います。

①レジデントのためのこれだけ心電図

これは4年から5年に上がるとき、つまり実習が始まる前〜最初のあたりに読み込んでいました。
この本でしっかり分かるようになったのは、誘導の空間的な捉え方と、右脚ブロック・左脚ブロックについてです。特に右脚ブロック・左脚ブロックの波形の違いが何故出るのかをこの段階で理解したおかげで、他の心電図について理解しやすくなると私は感じました。
心電図の勉強を始めるにあたって、心電図検定を受ける/受けないに関わらず、みなさんに1度は読んでほしい参考書だと思います。死ぬほど分かりやすです。かなり有名なシリーズなので、もしかしたら大学の図書室に置いてあるかもしれません。

②心電図検定公式問題集&ガイド

こちらをまず、6月末から大体10日間くらいで解きました。心電図検定がどのような問題形式でレベルなのかを知るためです。具体的な解き方としては、解いて、解説やレジデントのためのこれだけ心電図、ネットを読みながら自分で軽くノートまとめしていく感じでした。後からこの6月末時点でのノートを読み返したとき、とても浅い内容であったのを覚えています。
解説を読んでも、自分で調べても、いまいち自分は分かりませんでした。頭のいい人や調べるのが得意な人であれば、この公式問題集とネット・Youtubeだけで良いのかもしれません。しかし、この公式問題集だけでは、自分が心電図検定に余裕を持って合格するのは無理だと私は判断して、他の参考書を探すことにしました。
といってもこの公式問題集がダメだというわけではありません。公式問題集は、問題の解答自体の解説だけではなく、その心電図の他の所見も載っています。例えば、完全房室ブロックと答える問題なら、「心房細動、徐脈、完全房室ブロック」と所見が書かれています。この所見を自力でおおよそ答えられるようになれば、2級に合格できるのではないだろうかと思います。

③心電図判読ドリル

初めに言っておきますが、2級や3級レベルに合格するのが目的であればこの参考書は要らないです。Amazonのレビューを読んだり、Xを見たりしたらお分かりになると思いますが、これはおそらく「2級から1級への橋渡し」的な位置付けにある参考書です。
7月初旬に公式問題集を解き終えた私は、12月までまだ時間もあるし趣味として何か他の問題集も解こうかなくらいの気持ちで、大学の売店に行きました。何冊か参考書が並ぶ中で、私は心電図をもっと好きになりたくて、問題がついていて1番解説が詳しそうだったこの本を購入しました。
問題が載っていて、長めの解説が書いてあります。解いたときは、ほとんどの問題を間違えてしまいました。問題もかなり歯ごたえのある内容ですし、解説もしっかりしていて、心電図の参考書としては本当に素晴らしいと思いますが、2級レベルですとオーバーワークです。1級を受けるとき、または心電図についてもっと勉強するときにこの本を再び本棚から取り出そうと思います。
スケジュールとしましては、9月中旬から10月末くらいにかけて1日1問くらい解く感じでした。夏は国試勉強にシフトしたため、購入してすぐはほとんど解きませんでした。
心電図って奥が深いんだな!とこの参考書を通して感じることができました。ですがあまりにも難しすぎたので、私はXで見かけた④の本を購入することにしました。
(なお、この問題集を解き終えた後、公式問題集の復習も1度入れています。)

④心電図完全攻略マニュアル マイスターが教える 1・2級合格への最強メソッド

Xで心電図について情報を集めている方なら多くの人がご存知であろう、じろ先生(https://x.com/ttkjiro?s=21&t=DoZk3tErX5xSzewYqApn9w)とYakabe先生(https://x.com/yakabe1206?s=21&t=DoZk3tErX5xSzewYqApn9w)の著書です。
私が合格できたのは、この参考書のおかげであると言っても過言ではありません。
問題が1問ごとに載っていて、次のページ以降に解説や練習問題が載っている形式です。問題を解くための解説だけではなく、その問題で扱われている心電図の波形の意味を、図や平易な言葉で説明してくれているので、非常に分かりやすくどんどん解き進めることができます。医学生や医師向けの参考書は文章が多く難しいことが多いと私は感じるのですが、こちらはレイアウトも見やすく、非常にとっかかりやすい参考書になっています。レベル的には、2級ドストライクだと思います。1級を受けた方でもこの参考書を使っている人をたくさん見かけましたから、1級にも十分対応できるかとは思います。最後の模擬テストは3分の1も解けませんでしたが……筆者の先生も直前期に模擬テストは確か難しいよーと言っていた記憶があります(根拠のポストは見つけられませんでした)。復習して確実に自分のものにすれば大丈夫です。
2級(と1級?)の山場である、不整脈の起源や心筋梗塞の梗塞部位についても詳しく説明されており、2級を受ける人なら是非この参考書は購入してほしいと思います。
※2級では、PVC(心室期外収縮)などの起源について問われたことは無いかあまり無いはずですが、これから出る可能性は大いにありますし、理解した方が心電図について詳しく知ることができるので、個人的には不整脈の起源を捨てるということは絶対しないでほしいです。

スケジュールといたしましては、11月初めから11月中旬過ぎまで、時々公式問題集に立ち返りながらも、8割方はこの参考書を解いて復習するということを繰り返していました。

⑤心電図マイスターによる3→1級を目指す鑑別力grade up演習

あまりにも④を解きすぎて飽きてしまったので、この参考書以外にも購入しようと思って、散々迷った挙句、私はこれを選ぶに至りました。問題数をこなしたかったからです。
この参考書の良いところは、誤答も含めて選択肢すべてに触れていることです。また、心電図というある程度理論が確立された分野とはいえ、心電図完全攻略マニュアルとは違った切り口で問題を解けるようになるのも大事だと思います。
難易度としては、心電図完全攻略マニュアルと同じくらいですが、基礎的な問題もたくさんあるので、基本を復習したい方にとても良いと思います。心電図検定を受けたあとの復習にも良さそうなので、自分はこの本で復習しようと思っています。

⑥心電図マイスターチャンネル

心電図検定を受ける人の多くが知っているYouTubeチャンネルです。
Xやネットを見ていますと、このチャンネルの動画で勉強した方を多く見かけます。とても分かりやすい動画がたくさんあります。
しかし、私は動画や授業を聞くのが苦手(なぜQAを見れているのか不思議なレベル)で、教科書や参考書で勉強するのが好きなのと、検定ものということもあり問題演習を通して勉強したかったのでこのチャンネルをメインで使うことはしませんでした。
ただ勉強しているうちに、SVT(上室性頻拍)とVT(心室頻拍)が苦手だと感じたので、そこを補填する目的で以下の動画を見ました。

私のようなタイプの方は、苦手分野について理解を深める目的でこのチャンネルを利用しても良いかと思います。

⑦直前期の勉強

心電図検定公式問題集と心電図完全攻略マニュアルと鑑別力grade upの3冊をひたすらぐるぐる解きまくりました。ある程度勉強したうえで公式問題集に戻ると、意外なところで間違えたり、新たな発見があったりするので、公式問題集は何度も解くべきだと思います。
会場では、心電図完全攻略マニュアルと鑑別力grade upのどちらかを持っている人を多く見かけました。心電図検定2級の参考書で困ったら、このどちらかを購入しておくのが間違いないかと思います。

⑧まとめ

以上より、私が心電図検定についてがっつり勉強したのは3か月くらいだと言えるでしょう。「レジデントのためのこれだけ心電図」などの積み重ねもありますから、実質的な勉強期間はもう少し長いと思われます。

3. 最後に

私は医学科に入学してから、勉強へのモチベーションが下がり続け、留年しないための勉強だけを続けていました。CBTのIRTは460くらいで、決して良いとは言えない成績を叩き出してしまいました。
心電図検定を受けて良かったことの1つに、国試の前に勉強における成功体験を得られたことがあります。自分の勉強や能力に自信がほとんどない状態かつ暗い気持ちのまま、勉強することにならなくて良かったです。勉強方法のスタイルの確認にもなりました(心電図検定と国試とでは、だいぶ性質が異なるとは思いますが)。
また、国試の勉強をしているときに、心電図が出てくる問題はある程度自信を持って答えられるようになりました。国試だけではなく、きっと研修医になってからも役立つ知識であることは間違いないので、勉強して良かったと思います。

Xやネットを見ていると、心電図検定は就活では役立たないだとか、意識高い系な感じがするから嫌だとか、そういう声を見かけます。
確かにマッチングでは役に立たないかもしれません。でも、仮にマッチングに多少影響を及ぼすとして、履歴書の欄を埋めるだけに心電図検定について勉強するのは逆にもったいないと私は思います。就活ではなく、心電図を好きになる、苦手分野が1つでも減る、という目的において十分受ける価値のある検定ではないでしょうか。
こんなにたくさんの医学生が受け、こんなにたくさんの参考書が出されている分野は他にあまり無いと思います。勉強しやすく、とっかかりやすい分野であることは間違いないのです。
心電図という分野を始まりとして、勉強のモチベーションを上げることができて、私は本当に良かったと思います。

ここまで拙い文章を読んでくださり、ありがとうございました。私のこの文章が、受験や勉強方法で迷っている方の決断の一助になれば幸いです。

かさはら

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