イタリアの原子力回帰(CFACTの記事)
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2023年5月18日にCFACTは、世界の原子力発電の動きに関する記事を発表した。内容は、イタリア政府の原子力回帰やアメリカの原子力エネルギー政策の現状を概観するものである。
日本ではサミットで核兵器廃絶などといった原子力に対するネガティブな情報が蔓延しているが、エネルギー政策は喫緊の課題であり、資源のない日本が確保しなればならない最重要エネルギー源の一つである。現実的なエネルギー政策を考えるための参考として、本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(Italy returns to nuclear sanity. Shouldn’t we?)
https://www.cfact.org/2023/05/18/italy-returns-to-nuclear-sanity-shouldnt-we/
1.本記事の内容について
・5月15日にメローネ政権は、1987年の原子力発電一時停止措置を撤回し、発電のエネルギーとして再度導入することを決定した。ドイツは17基の原子力発電所を閉鎖したことにより、エネルギー不足に陥っているが、これとは全く対照的な動きである。
・2013年以降、アメリカは11基の原子力発電所を閉鎖しており、2025年までに8基が閉鎖される予定となっている。バイデン政権は原子力発電強化に乗り出したいようだが、官僚的な規制制度により、ここ数10年新規建設が進んでいない。エネルギー不足は喫緊の課題であり、太陽光発電や風力発電ではこの不足を賄いきれないことから、この問題を早急に解決する必要がある。
・イタリアの原子力発電計画は、2050年までに35メガワット分の発電量を小型原子炉により賄うとしている。また原子炉を二酸化炭素排出削減の技術として売り込む計画も盛り込んでいる。この計画により、イタリアは中国の一帯一路事業への交渉にも強くでることができるようになるだろう。
・ドイツはロシアから天然ガスを調達できなくなっていることから、原子力発電所を放棄するのは全くもって理に適わない。事実、多くの工場が停止状態に陥り、よりエネルギー価格が安価な国に移転が進んでおり、2022年10月以降は特に経済的損失が大きくなっている。エネルギー政策を巡る対立は、閣内不一致の見解に端的に現れており、環境大臣は原子力発電所の閉鎖を歓迎しつつ、経済担当大臣は電気料金の高騰による経済の疲弊に警鐘を鳴らしている始末である。電気料金の激変緩和の措置として、2030年までに固定金額制の導入が検討されているが、総額で250億から300億ユーロの税金が必要になるため、現実的ではないと考えられている。
・アメリカ議会では2018年に原子力エネルギー促進法が可決され、エネルギー省が最先端の中性子炉を建造することを決定した。また原子力エネルギーインフラ更新に関する法案を可決し、原子力規制委員会に最先端言力エネルギー技術の規制緩和を求め、2023年2月には原子力開発連合会も、規制緩和を求めた。4月には超党派で最先端原子力を推進する法案を提出し、更なる規制緩和を求める動きも出ている。
・原子力発電事業者は、申請のために1時間当たり290ドルのコストがかかっており、更に試験炉の審査に18000時間を要することから、特にスタートアップ企業にとって大きな負担となっている。4月の法案では収益が上がるまで申請に要する費用の支払いを猶予するよう求めており、審査にかかる期間の大幅な短縮や既存の規制緩和法案の期限延長などを求めている。
・規制緩和の動きに合わせ、原子力回帰に向けた動きが見られるようになっている。ミシガン州のホイットマー知事は、停止された原子炉を再稼働させる動きを見せ、ウェスティングハウス社は、300メガワット発電可能な小型原子炉の申請に乗り出しており、2027年までに承認を受けることを目指すと発表した。
・原子力はアメリカにおける5番目のエネルギー源であり、1954年の原子力潜水艦ノーチラスの建造以降70年に渡って、安定的にエネルギーを供給してきた。二酸化炭素を排出しないエネルギー源として原子力は有望であり、2050年までに世界のエネルギー消費量が50%増加すると見込まれる中で、太陽光や風力発電だけではこれだけのエネルギーを賄いきれないという現実を見据える必要があるだろう。
2.本記事読後の感想
イタリアは長らく政権が安定せず、EUの問題児的な扱いだったが、ここにきてようやく正気を取り戻してきたようだ。一帯一路から距離を置き、現実的なエネルギー政策を採用するなど、民主主義陣営にとって望ましい方向転換である。
アメリカはこの動きに倣ったというわけではないだろうが、原子力に関してはかろうじて正気を保っているようだ。こういった動きを見据え、日本政府も原子力への回帰や開発をより積極的に進めて欲しいものである。
日本はサミットで原爆博物館に首脳を案内して核兵器を廃絶を訴える、などと言ったのんきなことを言っているようだが、エネルギー政策と兵器の開発は区別して考えるべきである。エネルギーの問題は定量的な問題であり、感情や建前などで論じてはならない。
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