ウクライナ紛争を巡るインドの綱渡り外交(RUSIの記事)
写真出展:ChandraK PradhanによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/chandrak-7553588/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=6290584
2022年3月17日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、ウクライナ紛争を巡ってインドが展開している綱渡り的外交の問題について論じる記事を発表した。内容は、インドが置かれている地政学的状況や安全保障上の環境からロシアとの関係を断つことができないということを指摘し、今後のあるべき方向性を提示するというものである。
インドとロシアが親しい間柄にあることは政治に興味のある方なら周知の事実であろうが、その関係がどれだけ深いのか、今回の紛争を機にどのように変化するのかについては不透明な部分が多い。今回の記事は日本ではなかなか見られない視点からの解説となっていることから、参考として本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(India’s Diplomatic Tightrope on Russia’s Invasion of Ukraine)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/indias-diplomatic-tightrope-russias-invasion-ukraine
2022年3月17日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、ウクライナ紛争を巡ってインドが展開している綱渡り的外交の問題について論じる記事を発表した。内容は、インドが置かれている地政学的状況や安全保障上の環境からロシアとの関係を断つことができないということを指摘し、今後のあるべき方向性を提示するというものである。
インドとロシアが親しい間柄にあることは政治に興味のある方なら周知の事実であろうが、その関係がどれだけ深いのか、今回の紛争を機にどのように変化するのかについては不透明な部分が多い。今回の記事は日本ではなかなか見られない視点からの解説となっていることから、参考として本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(India’s Diplomatic Tightrope on Russia’s Invasion of Ukraine)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/indias-diplomatic-tightrope-russias-invasion-ukraine
1.RUSIの記事について
・ウクライナ紛争を巡り、インドはロシアとの難しい外交関係を迫られている。今回の紛争には反対しているものの、明確にロシアの軍事行動を批判せず、国連安保理、総会においても批判決議を棄権している。西側諸国は中国への対抗として、インド-太平洋地域の安全保障戦略のためインドとの関係を重視してきただけに、ロシアとの関係における立場の違いは大きな失望となった。
・インドがロシアとの関係を重視しなければならない理由は、様々である。ロシアはインドの軍事兵器の主たる供給者であり、全体の60%から85%を占める。インドは中国と紛争を抱えており、有事にはインド単独で戦わなくてはならないと認識しており、兵器の安定的調達は死活問題である。
・インドは調達先の多様化や分散に努めてきたが、その道のりは容易なものではなく、成功していない。ロシアは最先端の軍事技術の共有に積極的であり、安価な地対空ミサイルや原子力潜水艦の技術などに依存しているという現状があることから、インドはロシアとの関係を断つことはできなかった。またロシアはジャンムーやカシミール問題などでもインドを支持しており、こういった信頼関係からウクライナ紛争で明確に反対することができなくなっている。
・インドにとってさらに悩ましいことは、ロシアが中国との関係を深める可能性が高いということである。中国と対峙しつつ、ロシアと中国の関係深化を食い止めることができなければ、軍事衝突時にロシアから十分な支援を受けられない可能性がある。パキスタンもロシアとの関係を深めており、このことも状況を複雑化している。
・ただインドも黙っているわけではない。国連における声明は徐々にロシアに厳しいものとなってきており、国家の主権と領土を尊重することを訴え、「正当な安全保障上の国益」というロシアを暗に擁護するような文言に言及しなくなった。
・今回のウクライナ紛争でインドが信頼できるか否かについて、西側諸国は疑念を抱いている。しかし西側諸国は一方的に友好関係を解釈するのではなく、インド-太平洋戦略や共有された価値観について明確な評価をしなくてはならない。インドにとっての最も大きな安全保障上の脅威は大陸にあり、海洋にはない。短期的には懸念があるものの、アメリカの戦略的重心は、対中安全保障にあり、インドとの関係は重要であり続ける。この紛争中においてもインドは海軍の軍事演習を実施しており、このことを理解しているのである。
・最近まで経済制裁の例外として、インドが中国への対抗のためロシアから兵器を調達することを西側諸国は支持しており、バイデン政権もインドとロシアの防衛関係の複雑性に理解を示してきた。この複雑な問題を解決するには、インドにロシアとの関係を断つよう迫るのではなく、軍事兵器の調達の多様化や国産化の推進を支援することである。
2.本記事についての感想
インドは非常に強かな国家だ。無論、インドが何らの損失も被ることなく立ち回れるということを意味するわけではない。今後の推移を見守る必要があるが、地政学的な位置や経済的潜在力などを考慮すると、欧米各国もインドをある程度尊重せざるを得ず、結果としてはインドの国益に資する形で決着がつくだろう。ウクライナ紛争における、最も有力な戦勝国になると私は見ている。
岸田政権にも同様のしたたかさを発揮してもらいたいが、国際社会では全く通用しそうにない。日本の愚かなメディアが岸田政権を巡る政局や政策的迷走をしたたかさの現れであるかのように仕立て上げているが、実際には無能すぎて動きが読めないというだけで、予測不能なことを戦略的とするのはあまりにも無理がある。
外務大臣がウクライナ紛争の最中にロシアとの経済協力の会合に出席したり、経済制裁で躊躇したり、これらは判断力や決断力のなさの現れであって、リアリズム外交などという言葉で正当化できるものではない。こういった立ち回りは何ら効果を発揮しておらず、非友好国家のリストに加えられていることからも明らかである。
重要なことは、インドのような芸当は、今の日本にはできないということを認識するべきだろう。他国がやっているから同じように、などといった安易な言説に惑わされることなく、自国の実力を十分に考慮して判断していくべきだ。残念ながら日本は欧米諸国に追随するぐらいしかやることはなく、今は我慢の時期である。
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