2023年世界無線通信会議と5G(Atlantic Councilの記事)
Kohji AsakawaによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/deltaworks-37465/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7641871
2024年4月12日にAtlantic Councilは、5Gの現状と今後の通信政策に関する提言についての記事を発表した。内容は、2023年世界無線通信会議の結果を受けて開催したワークショップの概要を紹介し、今後のあるべき通信政策について提言するものである。近い将来導入される6Gを巡る状況を見通す参考として、本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(Digesting the 2023 World Radiocommunication Conference’s outcomes and implications for US-China 5G competition)
https://www.atlanticcouncil.org/content-series/strategic-insights-memos/digesting-the-2023-world-radiocommunication-conferences-outcomes-and-implications-for-us-china-5g-competition/
1.本記事の内容について
・2024年2月、アトランティック・カウンシルは、2023年世界無線通信会議の結果を検証するためのワークショップを開催し、中国の5G覇権への対応について議論した。今回の記事では、このワークショップの概要について取り扱うこととする。
・5Gは、通信速度や接続に関して革命的な通信技術である。この技術は様々な分野にとって重要であり、自動運転、先端ロボット技術、スマート農業などその応用範囲は多岐にわたる。また民間だけでなく軍事にとっても重要であり、インテリジェンス、偵察、諜報活動、司令能力の大幅な改善も期待される。この技術覇権を巡って米中が対立することは必然であり、この分野で覇権を握った国が世界の通信市場を支配するだけでなく、世界標準の基準の策定でも第一人者の地位を得ることになるのである。
・5G通信ネットワークは幅広い周波数帯を利用していることから、その普及にはインフラの整備だけでなく、限りある電波の効果的かつ効率的な割り当てが必要である。1GHz未満の帯域は接続に用いられるが、大容量データの伝送には不向きである。24GHz以上の高周波数帯は短距離での高速通信が可能である。中周波数帯は両者の中間であり、都市部における接続と速度に向いている。
・ファーウェイやZTEは、6GHz帯の電波を利用していることが多く、中国はこの周波数帯は携帯電話の国際通信に割り当てている。一方でアメリカは高周波数帯を割り当てているが、5Gに向いている低中周波数帯域の6GHz帯は衛星や政府の通信に割り当てられており、中国とは異なる帯域を用いている。5Gネットワークを構築するには、世界各国が協調して同じ周波数帯を利用し、相互運用を効果的に行う必要がある。
・2023年11月から12月にかけて開催された国際電気通信連合主催の世界無線通信会議には世界163か国が参加し、国境間の周波数帯利用や通信接続の確保などについて議論がなされた。その中で、6GHz帯の一部について移動通信に割り当てること、今後の研究に向けて7.125GHz帯を確保することが決定された。アメリカは6GHz帯を自由に割り当てられる権利を確保したが、中国は自国の企業が勢力を拡大できるよう電波の割り当てを調整するよう提案した。アメリカは国益確保は成功したかもしれないが、友好国や同志国と更に連携して世界的な権益確保に努めると共に、中国に対抗する体制を構築する必要がある。
・第14次5か年計画によると、5Gの普及を推進するのみならず、6Gに向けた研究開発を推進するとしている。中国は、ファーウェイを5G通信具級の先導者として政治的・財政的に支援してきており、2021年7月から2023年9月にかけて、5Gの基地局を90万基から320万基まで増強させた。また電波についても、5Gに最適な周波数帯を軍民に積極的に割り当てるなどしており、国内での普及を大きく推進してきた。その他、政府も輸出支援の資金援助を積極的に行うだけでなく、通信規格の標準策定においても積極的に働きかけを行っている。
・中国の5G覇権を巡る動きは脅威である。ファーウェイは、5Gインフラ整備で大きなシェア誇っており、黙って手をこまねいていては世界の市場を握られる可能性が高い。アメリカはまず手始めに5G普及のため、インフラ整備支援や電波割り当ての最適化に取り組むとともに、友好国や同志国と協調する体制を構築しなければなrない。特にEUやインドなどは6GHz帯を割り当てる方向に進んでおり、南アメリカやアフリカも電波政策を議論するようになってきていることあら、技術により得られる利益に固執せず、世界のリーダーシップを取るよう早期に動かなければならない。
2.本記事読後の感想
最近すっかり話題にならなくなった5Gであるが、通信を巡る世界の動きは着実に進んでおり、次の6Gの話も見えてきている。5Gの時のような失敗を繰り返さないよう、通信を巡る状況についても動向を把握しておく必要があるだろう。
幸い、5Gの時のように中国が6Gで独走するような状況にはならなそうだが、アフリカなどの途上国地域がほとんど中国のインフラに支配されている現状を考えると、有望な通信市場がすでに抑えられており、西側諸国が巻き返すにはかなりの時間を要することになるだろう。
日本は情報貧困国であることから、目先の科学技術の問題にばかり目を向けがちだが、中長期的な技術の問題についても関心を持たなければ、技術立国として生き抜くことはできない。
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