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ペンタゴンによるイノベーションへの取組(SC MEDIAの記事)

写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/geralt-9301/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7020072

 2022年8月22日にSC MEDIAは、アメリカ国防総省のイノベーションの現状に関する記事を発表した。内容は、国防総省による民間のイノベーションを取り込むため各種組織創設や取り組み、成功事例や問題点などを概観するものである。アメリカは大胆な科学技術や研究開発投資で名をはせているが、その取り組みは各種問題を抱えつつもその困難を克服してきており、一朝一夕に達せされたものではないということが良く分かる内容となっている。今後の日本が採用するべき科学技術政策を見出していくうえでの参考として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Why the Pentagon remains both the best and worst customer for tech innovators)
https://www.scmagazine.com/feature/emerging-technology/why-the-pentagon-remains-both-the-best-and-worst-customer-for-tech-innovators

1.本記事の内容について
 ・ペンタゴンは民間のイノベーションを取り込むため、各種組織を創設しているが、組織全体の調達計画と整合しているとは言えず、予算も少額にとどまっている。CSETの報告書では、中小企業やスタートアップ企業との取り組みは「イノベーションツーリズム」に過ぎないと評価されている。
 ・代表的な組織としてDARPAを思い浮かべるだろうが、他にも様々な組織がある。しかしこれら組織は十分に活用されておらず、国防総省は屋上屋を架すように様々な事業の予算要求をしている。上院歳出委員会によると、国防総省が様々な取り組みを行っているものの、中小企業やスタートアップ企業から新規参入に関する手続きの煩雑さなどについて苦情を受けていると指摘している。
 ・このような状況において、2015年に創設された防衛イノベーション室は一定程度の成功を収めている。シリコンバレーに本拠を置く本組織は、官僚主義的な手続きを迂回し、直接的に民間のイノベーションを取り込むよう尽力している。通常の連邦政府の入札とは異なり、問題解決の提案を企業から提出させる企画競争的な仕組みとなっている。公募期間は2週間程度と短期間で、かつ、提出資料はパワーポイント20ページ以内などの手続きが大幅に簡略化されている。これは手続きに不慣れな非防衛産業やスタートアップ企業を取り込むための意識的な取り組みである。
 ・公募期間終了後、提案書を提出した企業の中からいくつかの企業を招聘し、具体的なモデルの提示やデモを求める。そして、政府の代表チームと最終選考された企業が共同で事業に従事するのである。この手続きにより、2016年6月から2021年9月の契約のうち、33%は初の契約者であった。また86%は非防衛産業で、73%は小企業が参入することとなった。中でもこれら手続きによる契約はサイバー部隊や国家安全保障局が主たる発注者となっており、ポール・ナカソネ局長の戦略目標に沿ったものとなっている。
 ・防衛イノベーション室は成功を収めているものの、防衛研究開発予算1300億ドルのうち、ほんの一部でしかない。国防総省のイノベーションを抜本的に改革するには、このような調達慣行を組織全体に浸透させる必要があるが、苦境は今でも続いている。昨年、空軍ソフトウェア局長のシャリアンが辞任したが、その際に自身の経歴の中で最も困難でストレスのたまる仕事だったと述べている。またIT、サイバーセキュリティ、人工知能の分野で中国に後れを取っており、十分に民間のイノベーションを取り込めていないと発言した。防衛イノベーション室長のブラウンも9月に辞任することを表明したが、国防総省の幹部が理解を示さなかったことに不満を述べている。
 ・うまくいっているスタートアップ企業であっても、政府を専属的な契約相手方とするまでの余力はない。こういった企業をうまく活用していくためには、死の谷を乗り越えられるよう支援していくことが重要であり、民間企業側に利益がもたらされ、将来の展望が見えるような取り組みが必要になる。

2.本記事読後の感想
  アメリカの強さが垣間見える、そういった記事ではないだろうか。古くはアイゼンハワー大統領の時代に多額の防衛研究予算が計上され、大胆な試みがなされることにより、アメリカ初のイノベーションが量産されることとなった。その時代の資産は今でも生きており、アメリカが世界中から人材を収集できるのは、こういった基盤があるためである。最近は政治家の介入や官僚主義的な負の側面が目立つようになっており、予算の削減、クリーンエネルギーの無理強い、マイクロマネジメントなどに苦しめられているという見解もあるが、基本的にアメリカは大胆である。スペースXがロケット打ち上げに失敗しても、そのことを声高に責める人は少なく、むしろ成功への糧であるとみなす人の方が多い。こういった状況が何ともうらやましい。
 日本がうらやんでいるアメリカですらまだ不十分であるという認識であり、このままでは日本は非期はされる一方である。日本がこういった状況に追いつけるのはいつのことになるだろうか。たった一つの失敗が当たっただけで鬼の首を取ったように責める、一握りの天才が官で働いて高給を得ることに対して下らない嫉妬心から痛烈に批判し、無能な人間が夜通し残業している場合には何も言わないなど、日本人の性格の悪さや意地汚さを考えると、残念ながら私が生きている間にこのような日が来ることはないだろう。せめて次の世代のために、こういった取り組みの重要性を伝えていく努力をしていきたい。

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