ウクライナ国境でのロシアの軍備増強(IISSの記事)
写真出展:Mickey EstesによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/thesoarnet-878669/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=2746815
英国国際戦略研究所(IISS)は2021年12月3日に、ウクライナ国境でのロシアの軍備増強に関する記事を発表した。内容は、ウクライナ紛争の経緯やロシアが11月に軍備を増強し始めた理由などを概観するものである。最近あまり話題になっていないが、ヨーロッパの混乱をよそに、ロシアが東欧への足掛かりを固めつつあることがわかる。安全保障をおろそかにした場合における危険性をよく示している記事であることから、その概要を紹介させていただく。
↓リンク先(Why is Russia amassing troops at its border with Ukraine?)
https://www.iiss.org/blogs/analysis/2021/12/why-is-russia-amassing-troops-at-its-border-with-ukraine
1.本記事の内容について
・11月からロシアがウクライナ国境に軍を集結させている。今年3月及び4月にも群を増強したことがあり、ウクライナ侵攻を進める可能性が指摘されているが、その真意は不明である。ストルテンベルクNATO事務総長は、数万の軍隊がロシア戦の準備ができていると述べており、ブリンケン国務長官は、ロシアが侵略を決定したか否かは不明であるが、一度決定すれば短期間で侵略を可能にする体制を整備していると述べている。
・ロシアはウクライナ東部のドンバス地域にテコ入れすることにより、ウクライナに侵略の脅威を与えてきた。2014年2月にクリミアを併合してから8年連続で紛争が発生しており、更に軍備を増強することになれば、ドネツク人民共和国(DPR)や、ルハーンシク人民共和国(LPR)の分離独立派と連携して侵略を進める可能性がある。
・ウクライナ国境の紛争は落ち着いているように見えるが、欧州安全保障協力機構の報告によると、日々停戦協定違反の小競り合いが発生しており、2021年7月から9月にかけて、砲撃や戦車の射撃などによる爆発が303回発生している。
・ドンバス地域の小競り合いはロシアにとって有益であり、ウクライナを不安定化させつつ、現状を維持することができる。ウクライナ側の対応が特に変化したわけではないが、トルコ製の無人航空機の配備を配備しており、このことがロシアの軍備増強の一つの要因になった可能性がある。10月にウクライナのクレバ外務大臣とトルコのチャブショル外務大臣は、ウクライナに無人航空機の生産工場を建設することに合意しており、ナゴルノ・カラバフ紛争で無人航空機が活躍したことを認識しているロシアにとっては脅威になると映ったと考えられる。ウクライナの軍備増強により、DPRやLPRの優位性が崩れることを恐れており、ラブロフ外務大臣もこれら地域を防衛するために、大規模な戦争を仕掛けることも暗示している。
・ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアとの直接対話により戦争を終結させようとしているが、ロシアには戦争を終結させる動機がなく、ウクライナもこの状況を覆すだけの材料を持っていない。プーチン大統領は2014年及び2015年のミンスク合意を支持し続けており、この役に立たない合意を盾にとってあくまでも現状を維持しようとしている。ウクライナのEUやNATOへの傾斜を食い止めるために最も有効な手段は、戦争未満の小競り合いにより侵略を脅迫し続けることなのである。
2.本記事についての感想
最近東ヨーロッパ地区が混乱しており、ナゴルノ・カラバフ紛争やベラルーシからポーランドへの移民大流入など、問題には事欠かない。ソ連崩壊以降、常に不安定な地域であるが、パンデミックによる混乱もそれに拍車をかけている。また、EUの愚かな再生可能エネルギー政策による石油・天然ガス価格高騰などの不安定要素も、問題を悪化させているのだろう。
左翼の環境政策やフェミニズム政策は平和な時代だからこそ議論することができるのであり、世界が不安定化している現状においては、一丁目一番地の政策ではありえない。こういったおかしな左翼は声だけは大きく、さも大きな問題のように見えてしまう場、実際には肝心の問題を議論させない陽動作戦だと考えておいた方がいい。
ウクライナの混乱は、日本にとっても他人事ではない。ロシアのヨーロッパにおけるプレゼンスが増すことになれば、EUがアジア-太平洋地域に注力することができなくなるのであり、日本は中国との対峙により多くの力を割かなければならなくなる。またアジア地域が不安定化すれば、原油価格高騰にも拍車がかかることになり、日本経済に破滅的な打撃を与えることになる。
岸田政権にはこういった状況を適切に把握して対処してもらいたいのだが、外交・安全保障の軸を示すことができておらず、前任者の取り組みを何も考えずにただ踏襲することしかできないだろう。このような無能な政権は早く亡くなって欲しいものだ。まだ気が早いかもしれないが、参議院選挙で自民党を大敗させなければ、日本の運命は非常に厳しいものになると認識しておくべきだろう。
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