半導体産業の人材確保について(protocolの記事)
写真出展:Sumanley xulxによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/sumanley-2265479/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=3057313
2022年6月28日にprotocolは、アメリカの半導体産業の人材確保に関する現状を紹介する記事を発表した。内容は、高校や大学における就職の現状、半導体企業の動きなどについて概観するものである。半導体産業の復活が叫ばれているが、実際の政策については研究開発予算の計上や工場の誘致などしか認識されておらず、人材の確保という観点ではなかなか論じられていない。今回の件は日本にとっても他人事ではなく、産業が持つ構造的問題であることから、今後の状況を見通すうえでの参考として、本記事の概要を紹介させていただく。
↓リンク先(Chip companies are scrambling to hire college students dazzled by software dollars)
https://www.protocol.com/enterprise/intel-tsmc-college-student-hiring
1.本記事の内容について
・アメリカで生産されている半導体は、世界の生産量のうちたった10%である。これは、クアルコム、ヌヴィディア、AMDなどの企業は設計の実を担当し、生産をTSMCやサムスンに外注しているからである。これは国家の安全保障やサプライチェーンの海外依存などの観点から大きな問題であり、議会及び政権は520億ドルもの補助金を半導体企業に提供すると発表した。
・このことを受け、インテルはシャンドラーのオコティロ工場を拡張するという200億ドルの事業を開始した。その他の事業として、フェニックス北部におけるTSMCの120億ドル事業、テキサスのオースティンにおけるサムスンの170億ドル事業などが続く。これら事業に伴い、今後十年において27,000人の新たな人材が必要となると見込まれている。しかしこれだけの人材を短期間で確保するためには、アメリカ出身の人間だけでは到底不可能である。識者の見解によれば、少なくとも3,500人の台湾人や中国人技術者が移民として必要になるとされている。
・2010年からコンピューターサイセンスを専攻する学生が倍増しており、現在は4万人以上に達しているが、半導体関係の学位取得者は1990年以降停滞している。また、アメリカの理工系人材は、グーグルやアップルなどのビッグテックでの就職を望む者が多く、ソフトウェア、機械工学、電子工学、都市工学も人気であり、半導体産業は後塵を拝している。
・ただ、先端半導体の講座がここ数十年で満席になるなど、大学側の状況に変化も見られている。3年前に半導体産業の危機が盛んに宣伝され、大企業が半導体産業を話題にし始めたことから、若年層にも認識され始めたのがきっかけになった可能性がある。これはいい傾向であるが、十分ではない。中学生や高校生が興味を持てるように学校側に働きかけ、半導体産業の重要性をアピールするべきである。
・人材獲得競争は過熱しており、半導体産業もこの競争に乗り出している。例えばHVCCは2020年に労働省の新人育成事業で人材教育を実践しており、マルタの半導体工場で卒業生を採用するという事業を実施している。インテルは半導体産業がない中西部に着目し、現地の大学生を採用しようとしている。オハイオスーパーコンピューターセンタもこの動きを支援しており、現地の人材育成を活発化させている。
同業他社との人材獲得競争も熾烈になっている。アリゾナはインテルの地元であり一定の強みがあるが、TSMCも負けてはおらず、各地の学校と提携し、人材確保に努めている。
2.本記事読後の感想
半導体産業についてはその復活が望まれているが、具体的な政策については意外と認識されていないのではないか。研究開発予算を計上したり、工場を誘致したりすればすぐに最先端の半導体生産が可能になるというわけではなく、多くの段階を踏んだ政策や取り組みが必要になる。
その中でも最も肝要なのは人材の確保である。日本の高校や大学などで半導体の理論についての講座がそれほど多いとは言えず、半導体を巡る状況に十分対応できていないのではないだろうか。最先端の理論を学ぶ機会がなければ即戦力として活用できる人材が確保できないことになり、お雇い外国人などという事態に陥りかねない。
TSMCの熊本工場は初任給もかなり高水準であり、人材を誘致するのに十分な魅力を備えているが、肝心の理工系人材がいなければ工場は十分にその威力を発揮しない。資源のない日本にとっては人材こそが最大の資源であり、日本政府は人への投資をもう一度見直していただきたいものである。
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