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アメリカはAIの将来をビッグテックに賭ける(DEFENS SCOPE記事)

写真出展:Akela999によるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/akela999-5825566/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=2476782

 2024年12月18日にDEFENS SCOPEは、バイデン政権が発表したAIの安全保障に関する大統領覚書とAI政策の方向性についての記事を発表した。内容は、大規模AIモデル開発という方向性への過度な注力に対して警鐘を鳴らし、あるべきAI政策の方向性について提言するものである。AIが今後の安全保障環境を大きく左右する要素になることは間違いないが、AI開発の方向性については不透明であり、各国が手探りで進めていかざるを得ない状況である。今後のAIと安全保障の関係を考える参考として本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(America goes all-in on Big AI)
https://defensescoop.com/2024/12/17/america-goes-all-in-on-big-ai/

1.本記事の内容について
 ・バイデン政権は大統領選挙の2週間前になって、AI政策のレガシーとするためか、AIに関する安全保障大統領覚書を発表した。ただこの覚書には目新しい点はほとんどなく、アメリカの技術覇権を確立し、中国を中心とした敵対国の抑止に関する政策をやや詳細に記載したものとなっている。ただ詳細に見ていくと、アメリカにとっての不都合な状況が見えてくる。
 ・アメリカの国家安全保障のリーダーは、AI政策を巨大IT企業と共に推進していくことを考えており、AIの将来を大先端の大規模な機械学習モデルである「フロンティアモデル」に託そうとしているのである。この1点豪華主義的な方向性は、その意図に反してアメリカのAI産業を毀損し、中国などの競合国からの脅威にさらされる危険性をはらんでいる。
 ・フロンティアモデルへの過度の傾斜が危険な理由は、さまざまである。まず大規模なAIモデルには巨大な計算資源が必要となるが、容易に量産することはできず、他のシステムとの連携も困難である。戦略的な観点からすると、他の小規模なAIモデルの能力を過小評価することになり、安全保障上の間隙ができることになる。
 ・最も大きな問題は、多大なコストを要するこの枠組みから脱却することができず、より効果的かつ効率的なアプローチを採用することができなくなるということである。AIの生態系は大規模化・高速化の方向に向かっているが、この方向性でのAI開発を担える企業はビッグテックのみであり、更に政府や投資家がこれを支えるという構図になっている。OpenAIのようなスタートアップ企業であっても、ビッグテックのクラウドコンピューティングが無ければ開発ができない状態である。ただ巨大IT企業にとってもこの方向性が容易というわけではなく、計算資源だけに数百億もの資金を投じており、エネルギー需要を満たすために原子力発電所に頼らなければならない。一部のAI研究者も、これだけのコストをかけてそれに見合った成果が得られるのかがについて疑問を呈している。
 ・最近はより効率的かつ小規模なモデルによるAI開発も進められており、安全保障への応用が可能なもの登場し始めているが、ビッグテックは小規模モデルの開発に舵を切らず、大規模モデルの開発にばかり資源を投じている。ビッグテックは現在の市場優位性を維持するために大規模モデルの開発を進めている側面がある。大規模な計算資源を整備できるのは資金のある大企業のみであり、大規模なAIモデルには巨大な計算資源が必須であり、クラウドサービスへの需要も確保することができるというわけだ。
 ・今回発表された大統領覚書は、これまでのアメリカの技術覇権を築いてきたイノベーション生態系からの脱却と言えるだろう。これまでは、市場で光が当たらない基礎研究などの分野に政府が資金を投じることで、ボトムアップ型のイノベーションを推進してきたわけだが、現在の市場と同調することを選択している。国内企業を支援することは悪い選択肢ではないものの、国際競争力強化や技術革新に資するとは限らない。AIの専門家は現在の開発手法とは異なるアプローチが必要と考えるようになってきており、ビッグテックの言うことを鵜呑みにしては他の可能性を見逃すことにもなりかねない。より動的で多様性と競争性が確保されたAI生態系を確立することで、アメリカのイノベーション環境が改善され、長期的な技術覇権を握ることができるようになるのである。

2.本記事読後の感想
  アメリカの政策はもはや次期トランプ政権の動きに応じて変化しており、AI開発の推進についても近いうちに新しいアプローチが示されるだろう。ただバイデン政権が提示した方向性は短期的には成果を上げられる点もあると考えられ、すぐに放棄するということにはならず、しばらくはこの方向性が進められるだろう。
  日本はアメリカよりも大規模企業がAIを独占しているという状況ではないことから、バイデン政権が発表した政策とは異なるアプローチをとりやすいかもしれない。ただ十分な技術力のある企業が存在していないことから、まずはテクノロジー企業を何とかして生み出していくしかないのだろう。うまくいけばアメリカの手薄な部分をカバーすることもできる可能性がある。
ただ石破政権には何も期待することはできない。103万円の壁ですらこの体たらくであり、AI政策など考えている暇がないのだろう。最も余計なことをしないのが一番の政策なのかもしれないと言った、皮肉な状況もあるのだろうが。

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