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シリアのロシア系軍事グループによる暗号通貨クラウドファンディング(RUSIの記事)

写真出展:WorldSpectrumによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/worldspectrum-7691421/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=3423264

 2022年8月31日に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は、に関する記事を発表した。内容は、シリアにおける反政府組織やロシア語を話す武装集団による暗号資産のクラウドファンディングの試みを概観するものである。
よく暗号資産がクラウドファンディングや決済に使用され、スウィフトの規制はあまり効果がないと言った意見があるが、一方で成功しないという反論もある。今回の記事はその実態を明らかにしてくれるものであり、今後の暗号資産のクラウドファンディングについて予測するうえで参考になることから、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Cryptocurrency Crowdsourcing by Russian-Speaking Foreign Fighters in Syria)
https://rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/cryptocurrency-crowdsourcing-russian-speaking-foreign-fighters-syria

1.RUSIの記事について
 ・2020年8月、アメリカ司法省は3つのテロ集団による暗号通貨によるクラウドソーシングを阻止したと発表した。そのうちの一つは、タハリール・アル=シャーム(HTS シリアの反政府組織)と関係があるマルハマタクティカル(MT)である。MTはシリアイドリブ県におけるロシア語を話す軍であり、ビットコインを使ってクラウドファンディングしていた。
 ・MTは、2014年にHTSの前身団体と関係を持つようになり、2016年4月にウズベク人を主体として創設された。創設者のバルタバエフはロシアのウェブサイトデザイナーとして活躍しており、シリアではクラウドファンディングを担っていた。主にロシアのCIS諸国で決済サービスを提供する企業であるQIWIの電子決済サービスにより、ロシアから多額の資金を送金しており、トルコ経由でハワラダーが受け取り、そこからシリアで現金化されるという流れになっていた。
 ・しかしFSBはこの動きを察知し、2016年にバルタバエフに送金した2名を逮捕した。この際大々的にカザンにおけるアルカイダによるテロ攻撃との関連も指摘されたことから、HTSはロシアからの攻撃を恐れてMTと距離を置こうとした。事実MTは2017年2月に住居を空爆されており、バルタバエフはインターネットで「アブ・シャルマン・ベラルーシ」と名乗り、ビットコインを使ってクラウドファンディングを開始した。
 ・バルタバエフによると、暗号通貨のクラウドファンディングは、容易に国境を越えることができ、国家からの監視も回避できるという利点があるとしている。またメディアなどから注目を浴びることで、更に資金源のすそ野を広げることもできると考えている。
 ・MTのSNSにて紹介されているビットコインの2つの口座は、アメリカのブラックリストに入っている。ただ2018年7月から2020年の摘発までの間、たったの115.72ドルしか集金できておらず、試みが成功しているとは言えない。むしろメディアなどへの露出が最も大きな効果であったと言え、軍事訓練キャンプを大々的に宣伝することに成功した。今の所資金の増加にはつながっていないが、賛同者のすそ野を広げることにはつながる可能性があるだろう。
 ・イドリブ県のテログループは、ビットコインのクラウドファンディング用インフラの整備に尽力しており、トルコリラから監禁やハワラネットワークからの現金化を回避しようとしている。例えばBitCoinTransferというサイトはMTが利用しており、BitCoinExchangeはテレグラム上で英語、ロシア語、アラビア語のサイトを設けており、24時間の電話受付も行っている。またテザー、Payeer、PayPalなども受け付けており、海外からの傭兵へのデジタル通貨での支援も行っている。
 ・2021年9月の英語メディアにおいて、HTSが全ての暗号通貨の取引を停止したと発表した。これは潜在的にISなどのテログループに資金が利用あれることを恐れての音と見られているが、2022年5月4日現在カスタマーサービスサイトがテレグラム上で開設され続けており、より隠密に活動するようになっていると考えられる。
 ・ビットコインの分析家によると、ビットコインのクラウドファンディングは少額であり、最高でも数十ドル程度に過ぎないとされている。これは資金提供者の安全を確保するためであり、IS系統のサイトは個人的に連絡するよう求めている。またイドリブ県にあるチェチェン部隊は、ビットコインで908.85ドルの集金に成功し、精密測定器や炸裂弾を購入したと発表しており、一定の性向も収めている。今後、ハマスのような大規模な集団も利用するようになる可能性がある。

2.本記事についての感想
 今回は、シリアのロシア語を話す武装集団によるクラウドファンディングの試みが紹介されているが、こういったニュースは日本ではほとんど話題にならない。ビットコインの相場についてはインターネットで話題になったりするが、暗号通貨の負の側面などについては語られない。
 ただ現実は非常に冷徹なもので、使えるものを使うというのが当然である。今はまだ規模が小さいものの、こういった世界の通貨や送金システムを回避した試みは今後も拡大していくものと考えられ、簡単にクラウドファンディングに応じてしまうことの危険性も認識しておく必要がある。
 お金に色は付けられないとはよく言うが、善意で寄付したものがロンダリングでテロリストに行き渡る可能性もあり、インターネットの世界を通じて悪い人々とつながってしまうかもしれない。日本人の金融リテラシーを高めるうえでも、こういった記事を今後もご紹介させていただきたい。

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