見出し画像

コロナウィルスの起源に関する調査報告書について(2)(NICの発表)


本記事は、コロナウィルスの起源に関する調査報告書について(1)(NICの発表)の続編である。前回の記事は、以下の記事を参照。

1.本報告書の内容について
② 研究所流出説の根拠について
 研究所流出説を採用している分析者は、コロナウィルスに関する実験に内在する危険性、武漢ウィルス研究所のバイオセーフティ対策の不備、最初のCOVID-19のクラスター感染が、武漢のみで発生している事実、中国全土で動植物の採取活動を実施している武漢ウィルス研究所の研究者が武漢市内に持ち込んだ可能性などを、その根拠としている。
  研究所流出説には2つの考え方が存在し、1つは実験中などにおける不意の感染拡大、もう1つは実験中のバイオセーフティ対策不備による研究者の感染である。(ICは、前者を自然発生とは評価していない。)学術論文によると、WIVの研究者がコウモリのコロナウィルスの実験を実施していた、もしくは、SARS-CoV-2の近種のウィルスを保有すると知られている種を採取していたとされており、この活動中に不意に感染してしまった可能性があると指摘している。
  中国の研究者には、ウィルスへの暴露の危険性を増加させるようなバイオセーフティの慣習があることが知られており、学術論文においても、少なくとも一部の実験で十分なバイオセーフティ措置を実施せず、感染拡大のリスクを増大させることになったことが示されている。
 
③ 意見が一致している事項について
 ・最初に判明したCOVID-19のクラスター感染は、2019年12月に中国の武漢で発生した。ただ真の意味での最初の感染発生については把握していない。
 ・ウィルスは生物兵器として開発されたものではない。この主張は科学的に正当化されない説を根拠としており、生物兵器説の賛同者は武漢ウィルス研究所と直接のつながりがない、もしくは誤った情報を意図的に流布している疑いがある。
 ・ウィルスは遺伝子操作されたものではない。遺伝的に操作されたと判断するだけの遺伝子の痕跡を発見できておらず、直近の祖となるコロナウィルスを確認できていない。またある科学論文では、遺伝子操作の証拠とされているフーリン切断部位(FCS)は、自然な変異でも獲得されることが確認されている。更に一部の遺伝子操作技術は、自然のウィルスと区別がつかないような仕方でウィルスの遺伝子操作をすることが可能であるともされている。
 ・パンデミック発生前に、中国当局はウィルスに関する情報を把握していなかった。2020年初頭における中国政府及び武漢ウィルス研究所の対応を客観的に評価すると、その危険性を把握していなかったと判断するのが妥当である。

④ 今後必要とされる情報について
 ICの意見が割れているのは、各機関がインテリジェンス報告書、科学的見解、インテリジェンス及び科学との差異をどのように評価するかが異なっているという点が大きい。ICは、より決定的なCOVID-19の起源を説明するには、更なる詳細な情報が必要であると判断している。詳細については、以下の通り。

 ・COVID-19の最初期の感染拡大期における、場所、動物への暴露、市場労働者や研究所の労働条件、臨床サンプルなどの追加的な情報
 ・初期の感染例の調査手法、接触者や追跡調査において、用いられた問診票やツール
・感染拡大の初期における、中国のCOVID-19のクラスターの直接的もしくは間接的な兆候についての把握方法
・COVID-19ウィルスを保有するもしくは媒介する動物に関する知見
・以下に列挙する武漢の市場における野生生物や他の生物についての詳細なデータやサンプル。
 湖南省海産物市場
 起義門生肉市場
 白沙洲街道市場
 堤角站場外ペット市場

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?