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環境保護政策法と資源サプライチェーン確保(CFACTの記事)

写真出展:AngelaによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/hangela-2450118/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1626368

 2024年12月29日にCFACTは、環境保護政策法による過度な規制を批判する記事を発表した。内容は、アメリカの鉱山開発が環境保護政策法やその関連法規により大きく阻害されている現状を概観し、法律の規制緩和やサプライチェーン確保について提言するものである。
環境保護の名の下に無駄な規制が数多く導入されることとなり、鋼材採掘許可を得るのに10年以上も要するなど、官僚支配の行きつく先が良く分かる内容となっており、これは日本にとっても他人事ではない。今後の鉱物資源市場の動向を見通すための参考として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(How NEPA stands in the way of American mineral security)
https://www.cfact.org/2024/12/29/how-nepa-stands-in-the-way-of-american-mineral-security/

1.本記事の内容について
 ・アメリカは鉱物のサプライチェーン確保の危機に瀕している。冷戦後の自由貿易の拡大により、生活インフラや最新技術に必要となる資源の多くは海外からの輸入に依存するようになってしまい、現代の地政学的状況において安全保障上の脅威となっている。
 ・資源確保の脆弱性はすでに顕在化している。2024年8月14日、中国は暗視ゴーグルやセンサーにとって重要なアンチモンの輸出規制を発表し、12月3日にはガリウム、ゲルマニウムを禁輸し、グラファイトは輸出制限するとした。アンチモンは63%、ガリウムとゲルマニウムは50%、グラファイトは30%を中国から輸入していることから、これはアメリカの安全保障上、極めて憂慮すべき事態である。
 ・かつて防衛産業や民間企業は資源のサプライチェーン確保を成し遂げていた。例えば第二次世界大戦期において、アイダホ州の鉱山だけで、アンチモンの国内需要の90%を確保することができていた。ただ2024年8月に発表されたCSISのポッドキャストによると、環境保護法制により1970年代から国内のアンチモン採掘が大幅に減少したとされており、2001年にはアンチモン鉱山が全て閉鎖されるに至っている。
 ・アメリカには多数の鉱山や鉱物資源が存在しているが、1969年に国家環境政策法が施行されるに至り、採掘が大幅に制限されることとなった。本法律によりスティブナイト鉱山は1990年代に閉鎖され、再開のための研究が2010年から開始されたにもかかわらず、2016年に申請した環境審査が完了したのは、2024年9月である。懸念すべきは認可が下りるまで10年以上も要するという点にあり、カナダやオーストラリアの2~3年といった機関と比較しても異常な長さと言える。また州政府も同様の法制度を採用していることから、資源確保を阻害しているこの関連法制を正していく必要がある。
 ・ここ数週間の裁判において、環境法制の行き過ぎた規制に疑問を投げかける判決が相次いでおり、例えばコロンビア特別区巡回控訴裁判所の判決において、環境保護庁の通達は法立上授権されている権限を超過しているとの見解が示されている。また環境法の改正法も不成立に終わっており、第119回議会まで待たなければならない。また要件緩和も重要であり、環境アセスメントや標準的な処理期間の設定、国家安全保障関係の案件についての免除規定など、審査期間を短縮する手段はほかにもある。モンタナ州の審査期間は15か月程度で完了するよう運用されており、州政府の対応だけでも十分な効果があるのである。
 ・スティブナイト鉱山が再開されたとしても、アメリカのアンチモン需要の3分の1程度しか満たすことができないと見られている。今必要なのは規制緩和であり、真に環境保護に資する規制のみを残し、その他不必要な制限はなくしていくことで、資源のサプライチェーン確保も図られるのである。

2.本記事読後の感想
  トランプ大統領は「ドリルベイビードリル」というキャッチフレーズを選挙戦にて発表していたが、このことはあまり取り上げられることはなかったように思われる。これは単に経済復興のネタというだけでなく、資源確保の側面も持ち合わせていると理解するべきであり、メディアには安全保障と経済の関係性をより深堀りした情報を提供して欲しいものなのだが、日本の貧困な言論空間ではこういったことが取り上げられることはなさそうである。
  新年くらいは穏やかな気持ちでいたかったのだが、日本のニュースはほぼ暗いものしかなく、アメリカとの格差に愕然とせざるを得ない。昨年と比較して救いがあるのは、自然災害がなかったというぐらいだろうか。岸田、石破という間違った指導者を2度も選んでしまった日本の遅れを短期的に取り戻すのはほぼ不可能であり、こういった悪い前例を鑑みて、せめて同じ轍を踏まないということを肝に銘じるしかないのだろう。

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