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バイデン政権による最高裁判事の人事干渉(ヘリテージ財団の記事)

写真出展:Mohamed HassanによるPixabayからの画像https://pixabay.com/ja/users/mohamed_hassan-5229782/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=8442199

 2024年8月1日にヘリテージ財団は、バイデン政権や民主党有力議員による最高裁判事の任期変更等に関する動きについての記事を発表した。内容は、バイデン政権や民主党による保守派判事に対する任期制限などをも求める動きについて概観し、その議論の荒唐無稽さを批判するものである。
 アメリカの最高裁判事は終身任期という非常に強い身分保障が認められており、通常の法的係争に留まらず、選挙に関する事件についても一定の権限を発揮できるなど、強い権限が認められている。前回の大統領選挙でも選挙不正についての訴訟が多々提起されたが、もし最高裁が司法積極主義的であれば、選挙の結果が変わった可能性もあり、政治にとっても重要な機関である。今後のアメリカ司法の方向性を見通す参考として、本記事の概要を紹介させていただく。

↓リンク先(Biden’s Attempt To Control the Supreme Court Is Unconstitutional)
https://www.heritage.org/courts/commentary/bidens-attempt-control-the-supreme-court-unconstitutional

1.本記事の内容について
 ・バイデン大統領は、自身の選挙出馬を諦めたにもかかわらず、最高裁判所判事への人事干渉についてはご執心のようである。彼は最高裁判事の任期制限を正当化する議論をワシントンポストにて開陳し、司法の独立を犯そうとしているのである。
・バイデン大統領の議論は、3つの点で欺瞞に満ちている。
 ①    憲法で大統領の任期が制限されているからと言って、最高裁判事の任期がこれに合わせて制限されなければならない理由はない。36年の上院議員生活で一度もこんな提案をしたことがないにも関わらずこのような主張をするのは、あまりにも唐突である。憲法の起草者は、最高裁判事の終身任期を政治力への牽制として定めたが、地裁レベルの判事には任期制限を許容しており、議会の権限を適切な水準で設定していることからも、最高裁判事にまで権限を適用しない憲法の条項は望ましいもと言えるだろう。
 ②    バイデン大統領は、左翼が提唱する「改革」をオウム返しで伝えているに過ぎない。例えば、最高裁判事が知人や親戚が絡む事件の場合に判事を降りるべきであるといった議論を展開しているが、これは連邦法に定める基準とは異なっている。
また強制力のある「倫理規定」を定め、誰もが判事の倫理規定に抵触しうる行動があった際に不服申し立てができるという議論も極端であり、司法に対する官僚主義的な介入である。
 ③    最高裁判事の任期を18年に制限するといった議論は、ここ最近出てきたものである。スティーブンス、ギンズバーグ、ブライヤーなどは18年以上勤めていたが、左翼判事が長期間在籍していても任期制限を口にしたことはなかったが、ここ最近の判決が左翼に都合が悪いものが多くなってきたことを受けて、けん制しようとしているのである。特に中絶に関する判断を州政府に帰属するとした判決は、左翼にとって最も不評であり、トランプ前大統領の免責特権を認めた判決にも不満があるということが、この動きの背景にある。
 ・大衆の無知に付け込む形で司法に政治が介入することは、厳に制限されなければならない。憲法の起草者は司法の独立が自由にとって必要不可欠であると認識していたのであり、この独立を犯そうとするバイデン大統領は、この自由の国を危険にさらそうとしているのである。

2.本記事読後の感想
 最高裁判事の終身任期というあり方が望ましいか否かはさておき、アメリカの憲法に定められている以上、これが建国の精神に則った司法の姿である。国の形を構築するものには法律だけでなく慣習なども含まれるが、この終身任期を変更するということは、国体を変更するに等しく、容易に変えてしまって良いものではないだろう。また三権分立という観点からも望ましくなく、政治的な都合で司法に不当な介入をしてはならないということは中学生でも理解できる程度の話である。
 この動きはトランプ勝利のシナリオに焦った左翼の悪あがきと言った側面があるのだろうが、民主党政権が次の選挙で敗れたとしても左翼が撲滅されるわけではないのであり、これからもこのような動きについては注視していく必要がある。
 日本においてもこれは他人事とは言えない。地裁レベルをはじめとして左翼的な判事が多く、わけのわからない判決が下されることが多いからと言って、政治が人事に介入することがあってはならない。私の立場からは左翼的でない判事であった方が都合が良いわけだが、都合が悪いからと言って政治が人事を思うままにできるというのであれば、政権ごとに判決が変わるという事にもなりかねず、法治国家であることを放棄することとなってしまう。司法の独立は政治家からの独立が主たる内容であり、政治家が安易に干渉することは、絶対にあってはならない。

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