天然ガスを悪者にしてはならない(ヘリテージ財団)
写真出展: Kristina KasputienėによるPixabayからの画像
ヘリテージ財団の2020年10月6日の記事で、天然ガスの有用性についての記事が発表されていた。化石燃料についての固定観念を払しょくに資するという考えから、本記事を紹介させていただく。
↓リンク先(The Misguided Attacks on Natural Gas)
https://www.heritage.org/coal-oil-natural-gas/report/the-misguided-attacks-natural-gas
1.天然ガスの現状
天然ガスの生産量、利用状況等の現状は以下の通り。
・天然ガス生産量は、ここ20年で2倍近く増加した。
シェールブームでアメリカはロシアを抜いて、世界第3位の液化天然 ガス産出国となった。
・天然ガスは、2016年に発電のエネルギー源として、石炭を抜いた。
2019年のアメリカの全発電量の38.4%を占めた。
2.天然ガスの規制に関する動き
バイデン政権になってからの天然ガス及び関連する事項の規制の動きを 中心にまとめると、以下の通り。
・フラッキング(水圧破砕法)の禁止。
・国有地でのエネルギー開発を禁止する、埋設資源の「埋め殺し運動」 がなされている。
・エネルギー開発や輸送インフラへの制限も見込まれている。象徴的な ものは、キーストーンXLパイプライン事業の停止である。
・天然ガスなどの採掘やパイプライン輸送時などにおける、温室効果ガ ス排出も制限しようとしている。
3.天然ガスによる経済的、環境的影響
・シェールブームで電気料金が大幅に削減された。4人家族で電気量へ の支出が年平均26万円減少した。
・土地の鉱物権を有する家庭には、毎月何千ドルもの賃貸料収入がもた らされた。
・天然ガスの使用量増加により、1990年から2018年にかけて、メタン が23.7%減少した。
4.天然ガス規制に伴う影響
・米国商工会議所の資産によると、天然ガスを使用禁止にすると、家庭 のエネルギー支出が4倍になり、2025年までに一人当たり5,661ドルも 生活費が上昇する。
・温室効果ガス排出はむしろ増加する。
・冬季の暖房料の高騰により、天候要因の死亡率の増加が見込まれる。
(2005年から2010年にかけて天然ガス価格が42%下落し、その結果、天 然ガスを暖房に使用している家庭の死亡率は1.6%低下した。また、全体 でも0.9%まで死亡率が低下し、年間11万人の命が救われたことにな る。)
5.本記事における政策提言
・環境規制の権限を、州政府に委ねる。(連邦政府は時代遅れの法令 に従っており、現状に合致した対応ができておらず、処理も遅延しが ちである。)
・住居や商用ビルでの天然ガス使用を禁止しない。(規制しても環境に 良い影響を与えず、電気料金が大幅に高騰し、停電のリスクも増大す る。)
・天然ガスが採掘可能な土地のリース契約の入札を行うべき。現在はエ ネルギー企業しか入札参加資格がなく、更に開発を公約しなくてはな らないが、他の企業であれば、別の土地活用法を見出す可能性もあ る。
6.日本への影響
天然ガスは、石炭よりもクリーンに燃焼するため、温室効果排出ガスは 非常に少ない。このことを無視して、化石燃料全体を悪役に仕立てるのは賢 明ではない。しかし、この流れに抗うような戦略を日本が描けているのかと言うとそうではない。おそらく天然ガス使用量削減目標なども近いうちに設定されるだろう。
また、このことはエネルギー安全保障にも大きく影響すると思われる。例えば、今年1月の北陸地方豪雪、寒波やそれに伴う電気料高騰などはご記憶に新しいことと思う。原因の分析はさまざまであるが、液化天然ガス料金の高騰が一役買ったのは間違いない。
日本は幸いにして、アメリカからのシェールガスは輸入していないよう であるが、いつ何時輸入先の国々で規制やエネルギー不足による制限に見 舞われるかはわからない。このため、エネルギー輸入先の分散やエネルギ ー自体の多様化が必要と考えられる。また、原子力発電所の稼働も見据え なければ、昔のように停電が常態化する可能性もあり、電力事業が立ち行 かなくなる可能性がある。
天然ガスで安泰ということはあり得ない。グリーンニューディールなどの 動きと合わせてエネルギー安全保障の問題を見据えるべきだろう。
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