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ワクチンの特許放棄について(ハドソン研究所の記事)

写真出展:Gerd AltmannによるPixabayからの画像

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 ハドソン研究所の2021年4月13日の記事で、ワクチンの特許放棄についての記事が発表された。内容は、WTOによるワクチン特許の決定がなされたことに対しての反対意見であるが、喜んでいいニュースか否かの判断が非常に困難だと思われたことから、その一部を紹介しつつ、考察をお示しすることとしたい。

↓リンク先(Waiving Vaccine Patents Would Imperil Public Health)https://www.hudson.org/research/16837-waiving-vaccine-patents-would-imperil-public-health

1.ワクチン特許放棄に反対する理由について
  ・製薬会社は普段から多額の投資をしているが、特許による利益を得られなくなれば、これまでの投資が無駄になり、更にせっかく得た知識や技術を他者に無料で受け渡さなければならなくなる。
 ・アメリカ会計検査院の調査によると、ワクチン流通の障害となるのは、生産設備の供給制約、サプライチェーンの限度、技術不足の社員などが大な要因であり、特許は障害とはなっていない。このことから、特許を敵視するのは誤りである。
 ・インドや南アフリカが積極的にワクチン特許放棄運動を行っているが、両国はジェネリック薬品大国であり、特許切れの薬品の恩恵を受けている。必ずしもワクチン流通の促進を動機としているとは言えない。
 ・特許の利益があってこそ、製薬会社は多額の投資が可能となる。2018年の民間製薬会社による新薬への投資は、13兆円にものぼっており、特許の利益が見込まれなければ、これほどの投資はなされない。医療の発展には特許が必要である。

2.ワクチン特許放棄の是非についての意見
  今回の記事の議論は正論であり、それ自体について問題はないが、今回は2つの点において状況が異なっており、戦略的な視点が足りていないように思われる。詳細については、以下の通り。

 ① 多額の税金が投入されている
   トランプ政権の「ワープ・スピード作戦」により、1兆円もの予算が投じられ、ワクチンの開発が後押しされた。このため、特許は終局的にはアメリカ国民に帰属するものと考えるべきである。(もっとも、製薬会社を過小評価すべきではない。)製薬会社の投資も確かにあるが、その成果物は政治家の手に委ねられるべきであり、単なる企業努力により得られた特許と言う考え方をするのは適切ではない。つまり、戦略的に活用するため、企業の視点とは別個に国益を考慮するべきである。

② 中国のワクチン外交
   中国のワクチン外交は脅威である。当初は格安で入れておいて後から回収しようとするシナリオが見えている。先進国側が頑なに特許を守ってぼろ儲けし続けると、いつの間にか安価な中国製に席巻されてしまうかもしれない。
   多くの人々は中国の医療を過小評価している。少なくとも、コロナウィルスの症状に関しては、非常に正確な論文が出されており、ワクチンについても多くの接種実績を積むことにより、それなりのレベルに達する可能性はある。そうなる前につぶしておかなくてはならない。このことから、ワクチンを安価に提供することに意義がある。(このことは、マスク外交の時と類似している。)
 ただ、南アフリカについては注意が必要だろう。南アフリカは今や中国の属国ないしは植民地と呼ぶべき状態となっている。ジェネリック大国の南アフリカが中国に情報を漏洩して、中国はシノバックをこっそりファイザーやモデルナのいいとこ取りをしたものにすり替える…といった陰謀論的シナリオが頭をよぎったが、これは思い過ごしだろうか?
 いずれにせよ、放棄の仕方によるだろう。ある程度の経済規模の国に対してはライセンス料を請求し、その他の国に対して免除と言った部分的な放棄であれば、それほど製薬会社に損害を与えることはないだろう。

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